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一番近くにある日常  作者: 友城にい
六月編
7/19

第五・五話 夜夏の知らない風景(三人称)

 このストーリーは僕が学校に行っているあいだに起こった。ヒメサイドの話しである。


 だが時折、僕もヒメに悟られない程度にツッコミをいれておこうと思う。釣りかな?


 でははじまり。


 五月のある日、今日も平均の八時頃に目が覚め、ベッドから下りて事前に用意されていた服に着替えるところから始まる。


「さて、今日はなにをしましょうか」


 大きく背伸びをし、なにも予定もなければすることもない平日をどう過ごすか考える。


「ま、考えても仕方ありませんわね、まずは朝食を済ませますわ」


 一階に下りて、ダイニングテーブルに事前に用意されている、おかずをレンジで数分加熱をして、それからご飯をつぎ、朝食にありつく。

 もちろん服も朝食も昼食も夜夏ことヨルが用意したもの。

 とはいえご飯はカンタンなもので味噌汁と鮭の塩焼きと卵焼きであり、手の込んだ料理ではない。


「では、いただきます」


 合掌し、食べ始める。

 広いリビングと繋がっているダイニングテーブルに一人ぽつんと座る。

 いま……いや、ヨルが帰ってくるまで今日は一人なのだ。お婆さまも朝から出掛け、明日の夜まで帰ってこない。まあいても、いなくても一緒ではある。


 中学を卒業し、本当ならそのまま私立のお嬢様高校に進学するはずだった。だがそれを振り切り、我が道を行くと両親に告げるとそのまま二年間、屋敷に籠もっている生活になったのが、今の現状である。

 本人いわく悔いもなく、将来を見据えての行為であるらしい。知らないが。


「ではごちそうさまでした」


 礼儀正しく食材に感謝し、食器を流し台に置き、これからすることを考える。


「そういえばアニメの録画が溜まってますわね、それを観ましょう」


 軽い足取りでリビングのテレビの前に移動して視聴を開始する。


「あら六本もありますわね、これはいい時間潰しに」


 にたーと顔を緩め、中二系から学園モノからアクション系まではとくに変化もなく視聴する。


「ふふふ…………これ、これですわね、ではぽちっと」


 再生番組の古い順から観ていき、今から六番目を観始める直前に更に顔を緩め、はたから見ればキモいおっさんにしか思えない。


「グヘヘヘヘヘヘ…………」


 奇妙かつ不気味な声がリビングに響く。


「幼女サイコー!!!!!」


 巨大テレビから映し出される魔法少女のアニメに歓喜の声をあげる。


「うぇっへっへっへー……マジでイ○ヤたんぺろぺろしてーべー!!」


 豪華な屋敷の中で十八歳の少女? が危ない発言をする光景がここにあった。


「はだかシーンキター――――(゜∀゜)――――!!」


 映し出されるシーン毎に歓喜し、誰にもさらけ出さない一面。もちろんこんなコトをしていることは、ヨルは想定はしている。


「はーはー……フッ……今回は豊作ですわ……ではさっさくBDも予約しますわ」


 にやけ顔を直す。

 ひと息置いてから、テレビの電源をおとして、自分の部屋に行き、パソコンを扱う。


「まずはネットのページにいきましてっと、うん?」


 ページの上に表示される広告に目がいく。


「なにかしら」


 普段は気にもしない広告だが、そこに書かれていた内容におもわずクリックする。


「なになに『世界最高峰の遊び』ですか」


 スクロールしていくと、世界の贅沢な遊びから一般人でもできるちょっとしたプチ贅沢な遊びが、様々あり写真と一緒に紹介していた。


「私もいろいろしましたけど、今日やってみましょうかしら」


 机に肘をついて遊びを考える。


「あっ! 忘れるところでした」


 思い出したかのようにとりあえず予約だけを済ます。


「う~ん、なにをしましょう」


 悩みながらに一階に向かい、再びテレビをつけて、昼間やっているグルメ旅や再放送のバラエティーを観る。

 と、そこに。


「こ、これですわ……」


 テレビでやっていたのは、いわゆる『ギネス』の番組でそこで思いついたのはナント。


「ブランコを造りましょう」


 そう、これはあの時の話しであった。


「ならばさっそく業者に電話して造ってもらいましょう」


 廊下にある電話に駆けつけ、常連になっている建設会社にかける。


「もしもし、中野です。いきなりで悪いんですけど巨大ブランコを庭に造ってほしいんですの」

『い、いまからですか!?』

「えー今すぐです。はい、二時間でお願いしますわ、ではよろしく」


 一方的に要件だけ伝えると、受話器を置いた。

 ただ聞いただけでは理不尽で横暴だと思うが、これには相手も慣れている節があるのかはわからないが、毎度のことながらヨルが詫びはしている。


「ふー、さて完成まで私はなにしましょうか」


 ただ長いだけの二階の廊下を歩き、どの保管庫に入るか物色する。

 適当に目のついたところを選び、そこに入る。


「暇ですしこれを読みますか」


 吟味せずに未読の漫画を十冊程度を手に取り、自分の部屋に持ち込み、ベッドの上で寝っ転がる。


「勢いで買った、そ○のおと○もの……では拝見」


 ………………


「ぷっ! 笑えますわね」


 説明はあえて排除する。

 夢中になりつつも、ふと顔を上げて、時計を見る。


「あっ、もう十二時ですわね」


 ついでに窓から外を見下ろすと作業服を着た人がわんさか溢れ、丁寧に迅速に工程を進めていた。

 それを見つめたヒメは。


「大丈夫そうですわね」

 

 特に気配りをする素振りを見せず、キッチンに向かい、いつもの限定カップラーメンで腹を満たすと。


「これは当たりですわね」


 率直を述べ、再び部屋で読書を始めた。

 お気づきだろうが、ヒメはリビングと自室を行き来することで運動不足を補っています。

 十四時を回ったころ、ひとつの伝達がきた。


「終わりましたか。ではまたよろしくお願いしますわね」


 ヒメは横暴だが、礼儀はわきまえている。

 いわゆる暴君じゃない。

 だからこそ、建設会社の社長などにも嫌われているってことはないことをここで伝えておく。

 すぐさま庭に足を運び、中央に建てられた巨大ブランコに驚く。


「ムダにデカく造りましたわね、まあいいですわ」


 眺めているのも勿体ないのでブランコの元に行く。

 ブランコのイスに腰をかけ、足を浮かし、ゆっくりと漕ぐ。


「あら快適ですわね」


 近所の目も気にせず、振り子のように揺れるブランコに満足する。


「わっふー!」


 出す声はク○リャフカの口癖。

 気分はまるでハ○ジのように楽しく揺られていた。


「しかし、暇ですわね」


 一度ブランコを止め、ブランコにちなんだ遊びをしようと試してみる。


「…………クツとばしでもしましょう」


 履いているのはサンダルなので、手軽に用意できる。

 もう一度高く、大きく立ち漕ぎをし、手をギュッと握り、右足を蹴り上げる。


「うおりゃ!!!」


 タイミング良く、足から放たれたサンダルは勢いもよく数メーター先まで飛んでいった。

 だがここで気づく。


「…………取りにいくのメンドーですわね」


 通常のブランコよりもデカい分、もちろん止めるにも時間がかかるため非常に一回の労力がハンパないことにいま気づいたようだ。


「あとにしましょうか」


 諦めてそのままの状態を楽しんだ。


「そういえば、昔はよくヨルと近所の公園で二人乗りしたこともありましたわね。あの時も今と変わらず楽しかったですわ」


 その公園は三年前に取り壊され、小さな事務所が建てられている。

 しんみりとした表情に慕っていた。


「ヨルをイヤイヤ誘って無理やりに連れまわして、いろいろしましたわね……でも、それでもヨルは付き合いを拒否すること一度たりともしませんですわね………」


 そう、ヨルはいつも嫌な顔をするくせに本気で心から嫌うことや突き放すようなことはしなかった。


「私……はなにも成長してませんわね……でも……みんなを楽しませることが今の私の楽しみで……喜びで……生きがいで幸せ……ですのよ」


 私を信じてなんて言わない、心が苦しいだけだから。私について来なさいなんても言わない、息が苦しくなるだけだから。

 一人で青空に向かって想いを綴った気持ちと本音と目標を投げ飛ばす。


「なにも後悔しませんわ……だって自分で決めた道ですから」


 二年前。父上に言った「自分の道を歩きたいんです」と母上には「見守ってほしい」とお願いをした。

 父上は呆れた顔で「好きにしなさい」と言葉で怒りを表し、母上はいつものように「がんばりなさい」と伝わってきた。

 ヨルは「ヒメらしいな」と笑ってくれた。


「私をここまで豊かにしてくれたのは、他の誰でもないヨルなのよ、本人はまったく気づいてないでしょうけど」


 時の流れには誰一人として逆らったり抗うことはできない。

 だから一歩一歩を後悔する前に決心して、立ち止まっていいから前を向くことにした。

 絶対にしてはいけないことは後ろを振り返ったり、身体を預けることだから、一度後ろを見ると吸い込まれ感染して、冒され、顔を上げることができなくなりそうだから。

 だからヒメは目線をまっすぐに、暗闇でもいいから光が照らすところまで足を止めずに歩く。


「さて……そろそろサンダルでも取りに行きましょうか」


 ぴょんと飛び降り、両足で着地する。


「イッター! 右足履いてないの忘れてましたわっ!」


 運悪く右足のところに小さな石があったようでそれが足裏にヒットした。

 気にせず遠くに飛ばされたサンダルを取ってきてから、


「ではまた乗りますか」


 案外ブランコに揺られているのは、飽きないものだな、とヒメは思っていた。


「その前にいい考えが思いつきましたわ」


 そう、装置の取り付けである。

 屋敷の片隅にある倉庫にあったのを持ち込み、はしごを使ってカンタンに設置した。


「手頃ですわね」


 試運転を済まし、安全を確認したところで自分が乗る。

 もちろん自分で試すわけではない。


「帰ってくるまで暇ですわね~」


 ヨルが帰宅するまでおよそあと三十分ぐらい。


「仕方がありませんわ、お茶にしましょ」


 屋敷に戻り、自前のティーセットをいつものパラソルの下で持ってきて、自分で淹れて自分で匂いを味わい、自作自演で楽しんだ。


 そんなことをしていると、例のヒメの弟が庭の奥から走ってきた。

 ブランコについて聞かれる覚悟はできている。

 どんな質問がくるか楽しみでヒメは心の中で笑う。

 でも、おかまいなしにお茶をすする。


「ふふ、やっぱり楽しいですわね」

ヒメの視点で書いていたつもりが、いつの間にか三人称になっていました(笑)。


書きなおそうか悩んだ末、これでいっか、という次第です。


感想まってます。

友城にい

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