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規格化された均一性を愛する私にとって、このような不揃いな物理構造は本来、予測不可能性を孕んだエラーに分類されるべきものだった。
だが、スプーンを口に運ぶと、濃厚なミルクの甘みと、じっくりと煮込まれた根菜の不揃いな食感が、驚くほど滑らかに私の消化器官へと滑り込んでいった。
ジャガイモのざらついたデンプンの粒子が舌の上でほどけ、その非対称な味わいが、冷えて強張っていた私の胃の腑を、じわりと物理的に緩めていく。
「美味しい、でしょう?」
千紗は私の戸惑うような表情を見て、嬉しそうに目を細めた。
「……不合理だわ。形状の対称性が失われているにもかかわらず、機能的な満足度が著しく高い」
「それが人間っていう、不均一でファジーなシステムなんだよ、英里菜」
千紗はグラスの水を一口飲み、ドレッサーの上の鏡に映る、私の強張った顔を見つめた。
「笑顔もね、筋肉の計算や収縮率のパズルじゃないんだよ。相手を安心させたいな、とか、この空間を心地よくしたいなっていう、気持ちのバッファから滲み出てくるものなの。だから、ミリ単位で口角を合わせようとすればするほど、相手の受信ポートには『嘘のパケット』として不気味に届いちゃうんだよ」
気持ちの、バッファ。
そのファジーな比喩は、私の冷徹な論理領域に、ゆっくりと溶け込むように浸透していった。
私が鏡の前で行っていたのは、表面上のインターフェースの偽装に過ぎなかった。だが、相手に届けるべきなのは、お互いの通信を滑らかにするための「セーフティネット」としての情緒出力なのだ。
「……プロトコルの解釈としては、理解できるわ」
「うん、その調子。それじゃあ、シチューが冷めないうちに全部食べちゃって。それから、もう一回練習ね」
千紗は私の頭を優しく撫で、空になったスプーンをトレイに戻した。
私は再び、ドレッサーの鏡に向き直る。
大頬骨筋をミリ単位で動かす練習を繰り返す私を、千紗は呆れたように、けれどどこか愛おしそうに静かに見守っていた。
その不器用な対称性のなかに、私を外界へと接続するための、新しいアルゴリズムが少しずつ書き込まれていく。
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