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悪女の悪あがき。2回目!~今度は親友の破滅フラグをへし折りたい~  作者: 杏仁堂ふーこ
本編後の分岐ifルート

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【ifルート】ユウリ編

本編後のifルート、ユウリとロゼリアです。

 夢を見た。

 昔の夢。生々しい夢。


 あたしは目の前にいる彼の頬を思いっきりぶった。彼は項垂れ、全てを諦めたような顔をしている。

 彼の足元にはお菓子とお茶が散乱していた。

 片付けて置きなさいよと言い捨て、あたしは彼の前を去る。

 彼は震える声で「はい、ロゼリア様」と答え、その場に跪いた。それ以上は何も言わずに静かに散乱したお菓子や食器を片付け始める。

 悲哀に満ちた彼の表情を見てほくそ笑み、あたしは優越感に浸った。


 ――真瀬ユウリ。

 あたしがこの世で一番理解できない人間。

 これ以上この夢を見ていたくなくて、両手で顔を覆い隠す。


 あたしが彼にした仕打ちはどう考えても許されることではない。腹いせのためにずっと彼に酷いことをしてきた。

 自分より賢く優秀な彼が憎らしかったし、彼の泣いた顔が好きだった。

 今思い出してもゾッとする。自分の思考回路と言動に。


 上下左右がわからない暗闇の中、早く夢から醒めたくて藻掻く。けれど、終わりが見えない。覚醒できない。

 ようやく覚醒できそうと思った直後、眼前にユウリの笑った顔が広がる。


「好きです、ロゼリア様」


 優しい声。優しい眼差し。

 息が止まりそうになったところで、ガバっと起き上がった。

 夢から醒めたことにホッとしながら大きな溜息とともに膝を抱える。


 ――いっそ全部あたしへの復讐のためだって分かれば、受け入れられるのに。

 ユウリは嘘が苦手で、ポーカーフェイスも上手くない。声が、態度が、表情が、あの言葉は全て真実なのだと伝わってくる。

 特にあたしを見る目。

 ……きつい。本当にきつい。

 ユウリのためにも振った方がいいとわかっているのに――それができずにいた。



◇ ◇ ◇



 ロゼリアに避けられていると気付いたのはつい最近。

 受験もようやく終わり、大学への入学準備と並行してロゼリアの秘書業務を行っていた。

 だが、本来ユウリに頼むべきことを他の人間に任せることが多くなってきているのだ。その相手は主にジェイルとアリス。


「……ジェイルさん。僕、ロゼリア様に何かしちゃったんでしょうか……」

「いや、わからない。自分に対しては普通だからな。……お前の名前を出すと挙動不審になるだけだ」

「挙動不審……」


 椿邸から本邸までの短い道のり。

 ジェイルがロゼリアに頼まれたという仕事について色々聞きながら歩いている。ジェイルが「本来はお前の仕事だろう」と気を利かせてくれたのだ。

 ユウリはそれらをメモに取りながら、庭に植えられている色とりどりの花へと視線を向けた。


「式見さんには大学と秘書業務を両立させなさいと言われてるのに、この調子だと……まずいです」

「そもそもお嬢様がお前を避けているのが問題だな」


 う。と呻く。ジェイルの目にもそう映っているならロゼリアに避けられているのは確定だろう。

 溜息をつく。今日のところは出直すしかなかったのだ。

 本邸の使用人用玄関に辿り着いたところで、ここまで色々と話を聞いてくれたジェイルに向かって頭を下げた。


「ありがとうございました」

「いや、気にするな。自分の仕事でもあるからな」

「そう、ですね。……何もしてない、はずなんだけどなぁ……」


 ぼやくように言ったところで、ジェイルが目を細めてユウリを見つめる。その視線は何か知っていそうで、思わず彼の顔を凝視してしまった。


「……あの、ジェイルさんには何か心当たりがあるんですか?」

「いや、ない」


 ジェイルはユウリから視線を逸らし、あっさりと首を振る。

 何気ない動作だったけれど本当に”ない”とは思えない反応だった。質問を重ねようとしたものの、ジェイルは部下に呼ばれて「じゃあな」と去っていってしまった。

 もう一度溜息をつく。

 ゆっくり空を見上げると、気持ちの良い青空が広がっている。

 もう春になり、来月には大学に通うと言うのに――ユウリの心は眼前に広がる青空とは真逆で曇り空となっていた。


 翌日。本日も快晴である。

 せめて今日はロゼリアの顔くらいは見なければと思い、やることを終えてから椿邸へと赴いた。

 中に入ると、パタパタと小気味よい足音とともにアリスが洗濯物と紙袋を抱えて走ってくる。色々あって正式にロゼリア付きのメイドとなったアリスは毎日楽しそうに働いていた。


「アリス」

「えっ。あ、ユウリくん」

「それ重くない? 何か持とうか?」


 そう言って手を差し出すが、アリスは笑って首を振った。


「大丈夫です。見た目ほど重くないので」

「……そう。あの、ところでロゼリア様は……?」


 恐る恐るロゼリアの名前を出すと、アリスはきょとんとした表情を見せる。何故そんな表情をするのかわからず、首を傾げてしまった。


「今日の午前中はガロさまとお出かけですよ。

 なんでユウリくんが知らないんですか……? 秘書なのに」


 ――秘書なのに。

 悪気のない一言がぐさりと刺さる。

 思わず胸を押さえて、その場に蹲ってしまった。

 これは――本格的に避けられている。まさか外出の予定すら共有してもらえないとは思わなかった。

 アリスが可哀想なものを見る目で見下ろしてくる。


「お願い、そんな目で見ないで……」

「そう言われても……だって、外出の予定くらいは知ってると思うじゃないですか」


 何も言えなかった。アリスの言う通りだからだ。

 ”外出の予定すら”、教えてもらえない。その事実にダメージを受けていた。

 この調子だとジェイルだって今日の予定を知っていたのだろう。ひょっとしたら二人に同行していたかも知れない。

 アリスがあわあわと慌てだす。


「あ、で、でも、もう帰ってくると思いますよっ。ガロさまの午後の予定が早まったらしいので……!」

「……ありがとう。ちょっと待たせてもらうよ」

「はい、そうしてください。――じゃあ、わたしはこれを干してくるので……」

「うん、またね」


 互いに軽く会釈をしてすれ違う。横を素通りしていくアリスを振り返り、その背中を見送った。

 揺れる黒髪、スカート、レース、リボン。

 日々を楽しんでいるのが伝わってくるようだ。

 ユウリにとってもこれから先は、楽しいことで溢れているはずだった。これまで制限されていた勉強もできるようになり、大学にも無事に合格した。

 そして――好きな人の傍にいられる。


「……何が駄目なんだろう」


 ぼそりと呟く。ひとまずロゼリアを待つしかできなかった。


 ほどなくして、ロゼリアがガロとともに帰って来る。

 ガロと腕を組み、楽しそうにしている様子を見ると、恐らく買い物に行ってきたのだろう。

 その様子が微笑ましくて、それでいてガロのことが羨ましくて――知らず知らずのうちに二人を見つめてしまっていた。

 ――ユウリは自分がどんな表情でロゼリアを見つめ、どんな視線を向けているのか気付いてない。

 ロゼリアがユウリに気付いた瞬間、ひどく驚いた表情をした。かと思えばすぐに顔を背けてしまった。

 明確な拒絶の意を感じ取り、またもダメージを受ける。

 とは言え、このままにしておくわけにはいかなかった。仕事でもあるからだ。

 ユウリはロゼリアに顔を背けられた事実はなかったことにして、二人に近付いていく。


「ガロ様、ロゼリア様。お帰りなさいませ」

「おう、ユウリ。入学の準備はできてるか?」

「はい、問題なく進んでいます」


 気さくに話しかけ、肩をぽんぽんと叩くガロ。ロゼリアのさっきの表情は目に入ってなかったようだ。

 ユウリは自分の仕事をするためにロゼリアに向き合う。

 しかし、ロゼリアはいつの間にかユウリとガロに背を向けていた。


「ロ、ロゼリア様。どちらに行かれるんですか?」

「……部屋に戻るだけよ」


 ロゼリアはしまったと言わんばかりの表情をして振り返ると、素っ気なく言って腕組みをする。ガロはユウリとロゼリアの顔を見比べて、苦笑しながら顎を撫でた。苦笑しているものの、どこか楽しそうな表情だ。


「……お前ら、喧嘩でもしてんのか?」

「べ、別に……してないわ」

「ユウリ、どうなんだ?」

「え、えっと、してない、です……」


 どこか言い訳をするような言い方になってしまった。ガロとロゼリア、二人の顔色を窺っての答えだ。

 ガロが目を細めて肩を竦め、ロゼリアの背中をそっと撫でた。


「ロゼ」

「何よ」

「お前が嫌ならユウリを外してもいいんだからな」


 ロゼリアが目を見開く。ガロを振り返り、微かに唇を震わせた。だが、その口から何かが発せられることはなかった。

 ユウリは冷水でも浴びさせらたみたいに全身が一瞬で冷える。何も言えず、ただ手を震わせるしかできない。

 硬直するユウリをちらりと見たロゼリアが、ふいっとガロから顔を背けた。


「……嫌だなんて言ってないわ」

「ふうん? 喧嘩するのは結構だが、仕事や意思疎通に支障が出るようなら俺も考えなきゃならねぇんだ」

「そ、そういうんじゃないってば……!」

「今回はそういうことにしといてやる。――ユウリ、ロゼのスケジュールはちゃんと把握しとけよ」

「は、はい!」


 声が少し裏返ってしまった。ガロはおかしそうに笑うと、再度ユウリの肩を叩いて、その場を去っていってしまった。存在感のある風体と靴音が遠ざかり、知らず知らずのうちに感じていた緊張が解ける。

 ほ、と胸を撫で下ろし、ロゼリアへと恐る恐る視線を向けた。どこか悔しそうな表情が目に入る。


「……ユウリ」

「は、はい……」

「執務室に来て頂戴。……一応、スケジュールの確認するから」


 ロゼリアはユウリを見ないまま踵を返し、ゆっくりと歩き出す。

 その背中は普段通りしゃんとしているのに、どこか頼りなく見えてしまった。

 身長が少し高めで、メリハリのある体つきをしている。スタイルの良さを強調するような服装も多い。どこからどう見てもきれいな女性である。当たり前だけど。

 つい一年前までは悪魔のように映っていたのが嘘のようだ。

 そんなことを考えながら、ついついロゼリアの後ろ姿をじーーーっと見つめてしまった。

 執務室の前に辿り着いたロゼリアがドアノブに手をかけながら振り返る。視線が合うと、ロゼリアは最初にユウリに気付いた時のように驚いた顔をして――そして、どこか罰が悪そうに視線をふいっと背けてしまった。

 

「……そういう目で見ないで」

「そ、そういう目……?」


 意味がわからなくて瞬きをする。ロゼリアはそれ以上何も言わなかった。

 執務室に通されたユウリは、ロゼリアとともに今後のスケジュールを確認した。

 大学に合格したユウリはもちろんのこと、ロゼリアもこれまで休学していた大学へ復学することになっている。

 ちなみに、ユウリの通う大学はロゼリアと同じだ。ロゼリアに報告した時は非常に驚かれたが、合格した手前文句も言えなかったらしく、「おめでとう」と困った顔をして伝えられたしちゃんとお祝いをしてくれた。

 学部も学年も違うので一緒に通うことはない。けれど、ユウリは満足していた。


「明日、授業とかで足りないものを買いに行くからあんたもついてきなさい」

「えっ。いい、んですか……?」

「……また伯父様に何か言われそうだもの。ついでにあんたも必要なものがあれば買いなさいよ」

「わかりました。ご一緒させていただきます」


 拗ねたような言い方だった。

 ガロに言われたかというのが理由の大半であるのはわかっていても、誘ってもらえたことが嬉しい。


(僕が外されるのは嫌だと思ってくれてるのかな……。だったら、ちょっと嬉しい)


 自然と表情が緩む。ユウリの緩んだ表情を見たロゼリアが気まずそうな表情をする。


「今更だけど……あんた、どうしてあたしと同じ大学にしたのよ」

「……第九領で一番いい大学ですし、行きたい学部もあったので」

「法学に興味があるなんて知らなかったわ」

「単純な興味だけではなくて、今後に活かせそうだから、という意味合いも強かったです」

「……。……一緒には通わないわよ」


 一瞬だけ、ロゼリアの視線が向けられた。牽制するような視線だった。

 突然の言葉に驚いたが、ユウリは肩の力を抜いて笑う。


「わかってます」


 短く答える。

 彼女が望んだことなのに、何故か表情が曇っていた。


 ――昔。

 ロゼリアより良い成績を取ってしまった。周囲の人間が「下僕よりも成績低いとか(笑)」などと、ロゼリアの陰口を言うことがあったのだ。

 同じことが起こるのが、ロゼリアは嫌なのだろう。

 学部も学年も違えばそんなことはなさそうだが、ロゼリアが気にするのは痛いくらいにわかっていた。ロゼリアのプライドが傷付いたのはユウリだって知っていたからだ。

 ユウリは当時何もできなかったし、何も言えなかった。

 黙ったままロゼリアの責めるような視線に耐え、陰口を言う人間たちの視線から逃げるように俯くことしかしなかったのだ。


(今、同じことが起きたら……僕は違う行動ができるんだろうか。

 ……いや、今はロゼリア様が当時とは同じ行動はしないかな。流石に)


 以前とは何もかもが違うのだ。

 そんなことを考えながら改めてロゼリアを見つめる。

 スケジュール帳とにらめっこしている姿が少し幼く見えて可愛い。復学をしてからも礼儀作法やら会食やらのスケジュールが入っているのを苦々しく思っているのが伝わってくる。思わずぼうっと魅入ってしまった。


「……だから。そういう目で見ないで、って言ってるでしょ」

「えっ?! あ、え、えと……すみません」


 スケジュール帳を見つめたままロゼリアが言う。

 ユウリは慌ててぱっと視線を逸らした。

 ”そういう目ってどういう目ですか?”と、聞きたくても聞けなかった。



◇ ◇ ◇



 その夜。

 自室で勝手に寛いでいるメロに、ようやくロゼリアと話せたことを軽い気持ちで報告した。

 案の定、メロは面白くなさそうな顔をしてユウリをジト目で睨んできた。メロの嫉妬癖はいつものことだとスルーして、法律に関する参考書を開いた。


「そう言えば、ロゼリア様に”そういうな目で見ないで”って言われたんだけど、どういう意味なんだろう」


 これも本当に軽い気持ちだった。

 床に寝そべっているメロの手から読みかけの雑誌が滑り落ちる。あんぐりと口を開け、ユウリの顔を穴があかんばかりに凝視した。


「……おまえ自覚ないんだろうけど、お嬢のことすっごい目で見てるからな」

「えっ!? す、すごい目って……なに……?!」


 今度はユウリが参考書を取り落としてしまった。バサッとやけに大きな音がする。


「なんつうか、説明がむずいんだけど……熱視線、ってーの?

 じっとりっていうか、うっとりっていうか……じめじめした視線」

「じ、じめじめ……!?」

「正直きもちわりーよ、あれ。見られてるお嬢が落ち着かないのもわかる気がする」


 じめじめ。気持ち悪い。

 それらはまるで大きな石のようにユウリの頭上にゴンゴンと落ちてきた。

 立っていられずに、ふらふらとその場に膝をついてしまう。

 軽い気持ちで聞いたはずなのに、重い事実を突きつけられてその場に両手をついて項垂れる。


「……。……も、もしかして……そのせいで今までロゼリア様に避けられてたの……?」

「かもなー。おれもすぐには気付かなかったけど、向けられてるお嬢はすぐ気付いただろうし」

「こ、困らせるつもりなんてなかったのに……」

「……なんかストーカーみたいなんだよなー、おまえの目」

「やめて!」


 思わず声を張り上げてしまった。メロが声を殺して笑っているが笑い事ではない。

 ストーカーとまで言われるとは。しかもメロに。


(でも、自分がどんな目でロゼリア様を見てるかなんて意識したことないよ。……見ないわけにもいかないし)


 のろのろと立ち上がり、参考書を手に取る。

 ――意識して窓ガラスや鏡でも見てみようか。そんなことを考えるが、自分の顔を直視したくないのもあって、軽く首を振ってすぐに考えを否定した。

 メロに「何やってんの」と聞かれたが「自分の部屋に戻りなよ」と言うだけにしておいた。



◇ ◇ ◇



 翌日の買い物中のことだ。

 授業や大学用品で足りないものを買いに来て、欲しいものは全て手に入った。ロゼリアが「欲しい」と言えば手に入らないものなどないのだが。

 帰り際に高校時代の知り合いとすれ違った。

 奇しくも「下僕よりも成績低いとか(笑)」とロゼリアの陰口を立ていていた少女とその友人だった。

 二人はロゼリアとユウリを見て、少し離れるなりクスクスと笑った。

 顔を寄せ合い、口元に手をかざし、声を潜める。


「……あの女、まだ下僕と一緒にいるんだ」

「ほんとだ、ウケる。あんなに虐めてたくせにね」


(しっかり聞こえてるんだけどな……)


 彼女らの会話は内緒話と言うにはあまりに大きかった。

 けれど、横にいるロゼリアは聞こえてないふりをして、気にした様子を見せない。

 どうしてもロゼリアは立場上やっかみが多いし、過去の言動からよく思わない人間だってまだまだいる。本人がそれをわかっていて”敢えて”無視をしているのも理解しているが――面白くなかった。


(こんなの一々相手をしていたらキリがないのはわかってるけど……)


 ユウリは意を決して手を持ち上げ、ロゼリアの肩を抱いて引き寄せた。

 突然のことにロゼリアは当然驚く。何か言おうとしたのが目に入ったが、ユウリはロゼリアではなく、さっきの二人をキッと睨みつけた。

 二人はまさかユウリに睨まれるとは思わなかったのか、ビクッと大げさなまでに体を揺らす。慌てて「い、行こ!」と逃げるように走っていってしまった。

 彼女らが完全にいなくなったのを見て、はーっと息を吐き出す。


(今ので昔とは違うってわかってくれればいいんだけど……)


「……ユウリ。いつまで手を置いてるのよ」

「え。あっ!? す、すみませ――……!!」


 牽制のためとは言え、肩を抱いたままだった。慌てて手を離すとロゼリアが呆れた顔をしていた。


「あんなのほっときなさいよ。相手にしたって良いことないわ」

「……。……わかってます」

「わかったって顔にはなってないけど?」


 呆れ顔のまま溜息をつくロゼリア。ユウリは知らず知らずのうちに不満を表情に出していた。


「ロゼリア様が悪く言われるのが……嫌なんです」

「は? 悪くも何も事実なんだからしょうがないでしょ。……昔のことだからって言い訳にはならないわ」

「でも、昔とはもう違うじゃないですか……」

「あの子たちはあたしのことなんか知らないのよ。高校時代のイメージのままなの。

 わざわざ昔とは違うなんて言って回る義理だってないしね」


 む。と、ユウリは口を尖らせる。

 ロゼリアはやけに他人事なのに、自分ばっかり腹を立てていて――子供のようだと感じてしまった。

 納得ができず、しばし無言になる。


「……最近、随分と感情が顔に出るようになったわね」

「えっ?! そ、そう、ですか? す、すみません……もっと緊張感を、」

「良いのよ。あたしがずっとそうさせてたんだし……いい傾向だと思っただけだから」


 そう言ってロゼリアはどこか遠い目をする。

 昔のことを語る度にロゼリアの表情は陰ってしまう。こういう表情を見る度に、ロゼリアがどこか遠くに行ってしまうような気がしていた。実際はガロの宣言もあって、ロゼリアが遠くに行くことは叶わなくなってしまったけれど……いずれそうしたい、と考えているのが伝わってくる。

 落ち着かない気持ちのまま、ロゼリアの横顔を見つめた。


「……でも、感情を出せるようになったのもロゼリア様のおかげです」


 強い口調で言うと、驚いたようにロゼリアがユウリを見た。

 身長はほとんど変わらないので視線が近い。

 だが、ロゼリアは何も言わずにふいっと視線を背けた。


(――あ。僕、また……)


 ”そういう目”をしていたのだ、と気付いた時には遅かった。

 ショーウィンドウに映った自分の表情を見た瞬間、思わず足が止まる。


(……”すっごい目”、か。確かにそうかも)


 メロの言葉を思い出しながら、小走りになってロゼリアの横に並んだ。

 自分では説明ができない”目”だった。ただ、感情が表に出るようになった弊害だとも思う。

 無言で歩きながら、ロゼリアの様子を窺う。

 気まずそうなロゼリアの横顔を見つめたまま、静かに口を開いた。


「……ロゼリア様。帰ったら少しでいいので……お時間をいただけないでしょうか」

「……わかったわ」


 ロゼリアはユウリのことを見ずに短く答えた。

 ホッとする気持ちとは裏腹に、暗闇の中に手を伸ばすような緊張感が存在していたのだった。


 帰宅をし、買ったものを片付けた後。

 ユウリはロゼリアの私室にいた。

 座って話せば良いものを、何故か二人とも立ったまま見つめ合っている。

 妙な緊張感が支配する中、ユウリはガバっと頭を下げた。


「あの、申し訳ございませんでした……」

「な、何よ。急に」

「僕、自分がどんな目でロゼリア様のことを見ていたのか全然自覚がなくて……でも、今日、ようやくわかったんです」


 言いながらゆっくりと顔を上げる。目の前には動揺したロゼリアがいた。急に謝られればこんな反応にもなるだろう。


「ロゼリア様に、どうしても見惚れちゃうんです……。

 僕のことを見て欲しくて、……す、好きになって欲しくて……。

 自分の感情に全然セーブがきかなくって……だから、多分あんな目に、なってた、んだと……」


 話しているうちに恥ずかしさでしどろもどろになっていった。


(……よく考えるとメロやジェイルさんは感情がだだ漏れになることはなかった……。

 メロはそういうオーラ出してるけど、なんかパフォーマンスみたいなところもあるから……僕だけだよ、誰から見てもこんなに分かり易いの……!)


 自分で自分のことがちゃんと理解できてなかった。

 ぎゅっと両手を握りしめる。段々と視線が下がっていき、ロゼリアの顔をまともに見ることができなくなっていた。


「……ロゼリア様を好きな気持ちが……どうしても隠しておけないんです……」


 口をついて出たのは懺悔の言葉にも似ていた。

 それまで静かにユウリの言葉を聞いていたロゼリアが苦虫を噛み潰したような顔をする。こんなことまで言うべきではなかったと後悔しても後の祭り。

 ユウリは俯いたまま、叱られるのを待つ子どものようにじっとしていた。

 昔から耐えるのは得意だったが、今ばかりは居た堪れない。

 やがて、ロゼリアが小さく溜息をついた。


「どうしてあたしのことを好きだなんて言うのよ……おかしいでしょ」

「おかしいって言われても……す、好きなものはしょうがないです……」


 ロゼリアは腕組みをして訝しげな表情を見せる。その表情を見ても感情は揺らがない。

 最近思い出すのは去年の夏以降、ユウリを気にかけるロゼリアの言動や、優しい言葉の数々だ。過去のことがそれらでどんどん薄まっている。

 どうすれば伝わるのか――。ユウリが近づこうとするのを押し留めるようにロゼリアの視線が刺さった。


「……あんた、アレじゃない?」

「アレ……?」

「ストックホルム症候群」


 ロゼリアはユウリをまっすぐ見つめ、真剣な顔で言った。

 ――ストックホルム症候群。

 誘拐などで人質が犯人に対して好意的な感情を抱く心理状態。

 ユウリの頭は一瞬真っ白になってしまい、ロゼリアの顔を呆然と見つめてしまった。


「それぐらい、あたしのことが好きって言うのが……違和感あるのよ。

 ……あたしはあんたにとって加害者でしかなのに」


 ”加害者”。

 ズキンと胸が痛んだ。思わず、胸を押さえてしまう。

 確かにそうだ。

 ロゼリアによって虐げられてきた過去が消えるわけじゃない。以前は目の前の女性が怖くて怖くて仕方なかったのだ。彼女が少し手を上げるだけで、身が竦むほどに――。

 間違いではない。けれど、それだけでもない。

 静かな時間。そろそろ夜になろうとしている時間帯。

 この世界には今二人きりしかいないのではないかと思わせるくらいに何も聞こえなかった。

 自分の心臓の鼓動がうるさい。手が、声が、震える。

 ふいっとロゼリアから顔を背けた。


「……あくまで、僕は被害者で、ロゼリア様は加害者だと仰るんですね」

「事実でしょ」

「なら――」


 ぎゅっと手を握りしめ、小さく深呼吸をする。行き場の見つからないモヤモヤが心の内側で渦巻いていた。


「償ってください、ってお願いしたら……償って頂けるんですか?」


 ロゼリアが息を呑む。まさかこんなことを言うなんて思っても見なかったのだろう。

 彼女にとっての自分は、”聞き分けの良い善良な人間”であるからだ。

 実際、ユウリだってこれまではそうあろうと心掛けてきた。

 けれど、そのせいで彼女が自分のことを異性として見れないと知れば――虚しく感じる。

 ゆっくりと視線を戻し、ロゼリアを見つめる。

 ロゼリアはどこか罰の悪そうな表情を見せ、視線を伏せた。


「……いいわよ。何が望みなの?」

「じゃあ、僕のことを恋人にしてください」

「はっ?!」


 予想外の言葉だったのか、ロゼリアが目を大きく見開いてユウリを凝視する。

 拒絶される前に手を伸ばしてロゼリアの腕を掴む。力任せに引き寄せ、驚く顔を至近距離で見つめた。


「ちょ、あんた……ほ、本気?!」

「本気です。いいって言ったんですから、当然叶えてくれますよね。ロゼリア様」


 ロゼリアがひどく動揺している。顔を近づけるユウリに抵抗できないらしく、ひたすら混乱していた。

 あと数センチ――というところで、頬を水が伝っていった。

 視界がぼやける。

 瞬きをした瞬間、それが目から溢れてしまった。


「あ、あれ……?」


 泣いている。ということに、遅れて気付く。

 こんなタイミングで涙が出たことが恥ずかしくて、慌ててロゼリアから離れて目を擦った。強気なことを言ったくせに、自分の気持ちとは裏腹に流れる涙。一度溢れたら止まらなかった。

 必死で涙を拭っていると、ロゼリアの手が頬に触れる。ビクッと体が震えてしまった。


「……悪いことするのに本当に向いてないのよ。馬鹿ね」


 ロゼリアの指が涙を拭っていく。

 それが無性に恥ずかしい。ユウリは顔を赤くして、俯いてしまった。


「だ、だって……好きって言っても信じてもらえないし、間違ってるって言われるし……どうしたらいいかわからなくて……。

 僕が、ふ、ふられるのは……しょうがない、ですけど……まともに取り合ってすら、もらえないのは、悲しいんです……」


 涙は止まっても、ロゼリアの手は頬に触れたままだ。

 自分から離れられもせず、思わずその手に頬を寄せてしまった。

 直後、ロゼリアが大きく溜息をついたので、反射的に硬直する。


「……あんたの泣き顔、久々に見たわ」

「う……」

「あたしはあんたを泣かすのが趣味だったんだけど……忘れたわけじゃないわよね?」

「忘れてない、です……」

「なのに、あたしが好きなの?」


 ロゼリアの真っ直ぐな視線が突き刺さる。まるで尋問のようだ。

 耳が痛いくらいに静かで、呼吸も心臓の音すらも聞こえてしまいそうだった。


「はい、好きです」


 緊張もあったけれど――それ以上に安堵の方が大きい。

 ようやくユウリの言葉はロゼリアに届く気がしたからだ。そんな気持ちが表情に出ていたのか、ユウリは少し笑っていた。

 ユウリの言葉と表情を向けられたロゼリアの頬がじんわりと赤くなる。

 ロゼリアはユウリの顔から視線を背け、それまで触れていた手を離してしまった。


「あんたのは顔は好きなのよね……」

「し、知ってます……」


 しみじみとした言葉だった。ユウリの顔がロゼリアの好みだというのはとうの昔から知っている。だからこそ泣かされてきたのだ。


「よくもまぁこんな女を好きになるわね、あんたは」

「でも、強くて正直で……最近は優しいところもありますよ。我儘なところだって嫌いじゃないです」


 幼い頃に出会った当初は可愛いとすら思っていた。――歳を重ねるうちに度を越していったけど。

 それは今は黙っておこうと思い、口を閉ざす。

 ロゼリアが覚悟を決めたような顔をしてユウリへと視線を向けた。


「ユウリ」

「はい」

「……あんたに対する罪悪感は消えないと思うわ。だから、なんていうか――」


 話すうちにしどろもどろになっていくロゼリア。その様子がおかしくて、思わず笑いそうになった。

 一歩、ロゼリアに近付いて距離を詰める。


「そこに付け込んでもいいってことですよね?」

「い、いや、そうじゃなくて……」

「でも、僕をこんな風にしたのはロゼリア様ですよ」


 言うが早いか、再度ロゼリアを捕まえる。

 手を掴んで、腰を抱けば――目に見えてロゼリアが動揺した。これまでユウリがこんな行動をしたことがなかったので、困惑しているように見える。

 自分がロゼリアのこんな反応を引き出せるとは思ってなかったので、ほんの少し気分が良かった。


「……恋人にしてくれるってことでいいですか?」

「え。その話まだ続いてたの……!?」

「終わらせたつもりはなかったです。

 ……結局、ロゼリア様は僕のことをどう思ってるんですか?

 なんだか、そういう話は全部はぐらかされてるような気がするんですけど……」

「……。……ちょ、ちょっと落ち着きなさいよ」


 ぐい、とロゼリアがユウリの体を押しやる。のけぞるような格好になってしまったが、それでもロゼリアのことを離さなかった。

 互いにムキになってしまい、引き寄せたいユウリと距離を取りたいロゼリアで無言の攻防が続く。

 ユウリは周囲に比べれば非力ではあるが、それでも女性であるロゼリアに負けてしまうほど非力ではなかった。

 ロゼリアが一歩下がる。ユウリはその分距離を詰めた。

 そんなことを繰り返しているうちに、ロゼリアをとうとう壁際に追い詰めてしまった。

 二人は無言で見つめ合う。


「好きか嫌いか、簡単な二択だと思うんですけど」


 静かに問いかけるとロゼリアが悔しそうに口元を歪めた。


「……嫌い、じゃないわ」

「じゃあ――」

「言ったでしょ、罪悪感があるって……。自分でもわからないのよ」


 ユウリはロゼリアの顔を見つめて考える。

 つまり――嫌いじゃないという気持ちが罪悪感から来るものなのか、ユウリと同じ恋愛感情なのかがわからないということ。何だかんだで根は真面目というか、ユウリのことを心配しているのだろう。

 ただ、今はもう流されて欲しい。

 自分でもこんな小賢しいことを考えるなんて思わなかった。

 ロゼリアの困り顔を眺めながら、ゆっくりと赤毛を一房掬う。そして、ちゅ、とキスをした。


「……ドキドキしますか?」

「な、何よ。急に……」

「じゃあ、こっちは?」

「ちょ――……っ」


 そう言って今度は顔を寄せて耳たぶにキスをした。次に首筋、それから――と鎖骨に顔を寄せたところで、ロゼリアの手によって顔を押し返されてしまう。


「あんたねぇっ……!」

「……ロゼリア様が教えてくださらないからです。

 僕のことが好きなのか嫌いなのか。こうしていてドキドキするのか教えて欲しいだけです」


 ロゼリアが悔しそうな顔をする。顔が赤いのは本人が言うように罪悪感のせいだと言うのだろうか。

 本気で嫌なら、相手を殴ることも厭わないような人間だ。

 ここまで好き勝手されて、それでもユウリのことを気遣っているのだとしたら――それはそれで辛いものがある。


「……ロゼリア様が素直じゃないのは知っていますけど、はっきり言われない方が辛いです」


 う。と、ロゼリアが言葉に詰まる。

 ロゼリアの手を取り、手のひらに唇を押し付ける。

 ――何かの本で、『手のひらへのキスは懇願のキス』と読んだが、ロゼリアに伝わるとは思ってない。ただ、自分の気持ちを伝えているだけだ。

 上目遣いにロゼリアを見ると、顔を赤くして挙動不審になっているのがわかった。

 あたふたと視線が忙しなくあちこちに動いている。

 キスに効果があったのか、上目遣いが効いたのかがわからない。


「ロゼリア様……」


 甘えるように名を呼ぶ。びく、とロゼリアの肩が震えた。

 ロゼリアは身を固くして、ユウリの視線から逃げるように俯いてしまう。


「……信じられないのよ」

「え?」

「今はあんたがあたしのこと好きだって言っても、あとになって”やっぱり勘違いでした”って言われるのが嫌なのよ!

 今のはただの一時的な感情で、ある日あんたが急に冷めるかもしれないのが――……!」


 ――怖い。

 言葉にならない言葉が伝わってくる。

 ユウリは一瞬何を言われたのかわからなかった。

 ロゼリアが、”怖い”? ユウリに冷められてしまうのが?

 現実を理解しきれずにユウリはぽかんと口を半開きにして、ロゼリアを見つめてしまった。


「……僕のこと、そんなに好きなんですか……?」


 混乱のあまりひどく間の抜けた質問をしてしまった。当然、ロゼリアからの答えはない。


「あの、泣かないでください」

「泣いて、ないわよ……!」


 そう言ってロゼリアが怒った顔をする。確かに泣いてないが――その寸前のような表情だった。

 そのことは指摘せず、そっと顔を近づける。

 恐らくこれ以上問答をしていても埒が明かない。

 戸惑うロゼリアをよそにそのまま唇を押し付けた。ロゼリアがユウリの体を押し返そうと手に力を込める。が、その手はユウリを突き放すことはなく、ただ触れるだけになった。

 一度、唇を離して壁際に追い詰めたロゼリアの顔を見つめる。


「随分大胆な真似するじゃない……ユウリのくせに」

「だって、こうでもしないと受け入れてくれなさそうなので……僕、自惚れてもいいんですよね……?」


 ロゼリアが押し黙る。しばし、無言の時間が続いた。


「……嫌なら、抵抗してくださいね」


 そう断ってから、唇を啄む。ロゼリアは抵抗らしい抵抗もせず、黙ってユウリのキスを受け入れていた。

 抵抗されないことで気分が盛り上がってきてしまい、ロゼリアの体を抱きしめてしまった。それまで触れるだけだった彼女の手が、ゆっくりとユウリの体をなぞっていき、やがて首に回る。

 ぐっと距離が近付いたことで離れるに離れられなくなり、ロゼリアの体を壁に押し付けてしまった。ずるずると体が下がっていき、遂には押し倒すような格好になった。


「ロゼリアさ、……ん゛っ!?」


 これ以上はまずいと一度離れようしたところで――逆にロゼリアに引き寄せられる。

 歯がぶつかるくらいの勢いでキスをされ、ユウリは目を白黒させた。

 吐息と舌が絡む。まるでさっきまでのキスの駄目出しでもするかのように、ロゼリアは噛みつくようなキスをしてきた。


(?!?!?!?!)


 良いように翻弄され、解放される頃にはユウリの顔は真っ赤になっている。

 押し倒しているはずのロゼリアは真っ赤になったユウリの顔を見て満足気に笑い、目を細めた。


「あたしのことを好きだって言うなら、これくらい激しくしてくれないと困るわ」

「……う。あ、あの……今、これ以上するのはちょっと……」

「ばっ、そこまでしろとは言ってないわよ!」


 てっきり先に進んで欲しいという意味かと思ったら違ったらしい。

 怒ったロゼリアに首を揺さぶられてしまった。その衝撃でつい一瞬前までの余韻が吹き飛ぶ。

 「全くもう」と言いながら、ロゼリアが手を離そうとした。咄嗟にその手を捕まえて引き寄せる。


「ロゼリア様」

「何よ」

「キスだけでもリベンジさせてください」


 そう言うとロゼリアは一瞬キョトンとした顔を見せ――それから、余裕そうに微笑んだ。

 ロゼリアらしいその表情に思わず見惚れてしまう。


「いいわよ。……二人きりの時は、そういう目で見ても許してあげる」

「僕がこんな目で見るのはロゼリア様だけですよ」


 ふっと笑い、何か言われる前に唇を重ねた。ロゼリアの手が背中に回る。

 キスを終えた後にロゼリアがまるでご褒美のように「……好き」と耳元で囁き、ユウリの理性を奪い去っていった。



◇ ◇ ◇



 ――僕のこと、そんなに好きなんですか……?


 この一言で自覚させられてしまった。

 ずっとモヤモヤしてたのも、罪悪感が酷かったのも、結局”そういうこと”だったのよね。

 結局、そのせいでユウリを突き放すことができなかった。

 まぁ、あたしがユウリを手放せなかっただけなんだけど……。


 ユウリに対する複雑な気持ちも、これまでの行いも一切消えない。

 多分、一生残り続ける。

 けどもうしょうがない。

 ユウリがそんなの気にしなくなるくらいに惚れさせてしまえば良い。あたしにそんなテクニックないけど!


 それに……ユウリのあの目を見ていると、そんなの気にしてるのが馬鹿馬鹿しくもなる。

 あんたこそ、あたしのことがそんなに好きなの?

 って、聞きたくなるんだもの。

 お互い、自惚れるしかないわね。もう。

 ほんと、どうしようもないわ。

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