IF話
昼夜逆転。
それは言葉の通り、昼と夜が逆転することである……。
これはとある町において、突如発生した昼夜逆転現象の話。
【20IF年 IF月IF日(虚日)AM11:00】
【ほこやぎ町 某所】
その男は、ラーメン昼独という名の人気ラーメン店の行列に並んでいた。
《ガヤガヤ(今日も行列……やっぱり人気ラーメン店だけあるよなー)ガヤガヤ》
――確かにSNS、TooTuber、テレビや雑誌で何回も紹介される人気店だからな……というよりも何かざわざわしてるな。
かなりの長い行列で、突如として発生したざわつき。
列の後方部にいるその男には当然ではあるが、ざわつく理由が分かるはずもない。
――どうしたんだ? 何かあったのか?
その男はざわつきの行列の中、帰ろうとする人の様子を見ていたが、またも信じられない現象が発生した。
それは行列を諦め帰ろうとする人が、見えないナニカの力で、並んでいた列の位置に強制的に戻されるのだ。
――なんだ?! なにが起きてる!
その男が困惑していると、ようやく前から伝言ゲームが回って来た。
「前の人からやっと情報を聞くことができました」
前の人が森咲杜鷹に話し始めた。
「で、昼独ラーメンでなにが起きたんですか?」
その男の麺の好みはストレート麺だった……いいやその男は、前の人に情報をストレートに聞いてみたのだ。
「えーと、昼独ラーメンの営業時間が突然AM12:00に変わったみたいです、しかも昼独ラーメンだけではなくて、全ての時間が昼夜逆転したみたいなんです! しかも行列に並んでいた人は、あと10時間以上行列を待たないと解放されないとのことです」
――んな、バカな! あり得ないだろそんな話!
「……情報、ありがとうございます」
「いえいえ、お互い頑張りましょう」
摩訶不思議なこの現象。
当然なことではあるが、その男が信じられるはずがなかった。
――ログアウトしたい……喜冬さん! あれ、ログアウトができない?
その男は"なぜか!"ログアウトできなかった。
その男がログアウトできるのは、妄想犯行計画の暴く側サポートプレイヤーであり、探偵ヘルプである雪護喜冬がログアウトコマンドを押した時のみ。
しかも、その男がログアウトという言葉を頭の中で、ハッキリ考えないと、ログアウトコマンドを押せないのだ!
だが、その男の視界に表示されたUIは、いつものUIメッセージでは無かった。
【妄想犯行計画システム設計者:小蒼のオペレーション"ログアウト断固拒否"が発令中の為、探偵はログアウトできません! 残待時間10時間以上】
――妄想犯行計画システム設計者:小蒼によるオペレーション"ログアウト断固拒否"が発令中?
なぜ妄想犯行計画内にあるラーメン屋の行列を10時間以上も待たないといけないんだ!
《『ふっ、頑張ってね。森咲杜鷹さん!』》
「小蒼ちゃん……、が……頑張ってね、じゃないよ! なんてことしてくれるんだ!」
その男の名前は、森咲杜鷹。
彼は今、仮想現実空間ほこやぎ町でラーメンを食べようとしていた。
――クソ! やっぱり小蒼ちゃんの仕業か! 小蒼ちゃん、おい小蒼ちゃん!
《ふっ、ワタシは刻想器だったモノだから、あのくだらしょも短編集に登場する事はできない……残念でした〜、森咲杜鷹さん!》
――はぁ?
頭の中をまた覗いてきて、『ふっ、ワタシはあのくだらしょも短編集に登場できないから残念でした〜』じゃないよ!
"味噌ラーメン"が好きな小蒼ちゃんは、本当にそういうことするのが好きだよな!
《ふっ、ワタシの食べるホコヤギ味噌ラーメンを美味しそうだねって、言った杜鷹が全て悪い!》
「なんだよその理由は! はぁでも……」
――行列客が戻されるぐらいからおかしい、そう考えていたんだ……仕方がない、10時間待つか……。
こうして森咲杜鷹は、10時間以上かけてほこやぎ町のラーメン昼独を醤油豚骨ラーメンを食べることができた。
――お腹が空いた状態で食べた醤油豚骨ラーメン、やっぱり美味しかったな! じゃなくて五感再現された仮想空間……なんでラーメンの味も再現できるんだよ!
終。
[登場人物&用語]
森咲杜鷹→もりさきもりたか
妄想犯行計画の主人公。
現実世界のまほらぎ市に住む20代半ばの普通のサラリーマン。
仮想空間のほこやぎ町に滞在時は、萬屋記録局の局員。
趣味は推理作品とトリック作品の鑑賞と考察。
小蒼ちゃんと刻想契約を結び、昼間はサラリーマン、夜は仮想空間で暴く側プレイヤーの探偵として、二重生活を送っている。
小蒼ちゃん→コソウちゃん。かつて想いを叶える存在であった刻想器。森咲杜鷹と刻想の契り(刻想契約)を結ぶ。
現在は森咲杜鷹の自宅ハイツまほらぎにゲーミングノート"KokuSouS"の中にある3Dデスクトップ空間にいる。
喜冬→雪護喜冬 ゆきもりきふゆ 妄想犯行計画のヒロイン。
森咲杜鷹と同じ趣味を持ち、同僚趣味友以上恋人未満の関係。大学時代は犯人側の思考を議論し合うサークル"トリック研究会"に所属。
現在は、小蒼と刻想契約を結び森咲杜鷹を現実世界とほこやぎ町でサポートしている。
彼女が持つ妄想犯行計画は、探偵ヘルプ版。
妄想犯行計画システム→森咲杜鷹が小蒼と契約した事で、小蒼が森咲杜鷹が好きな推理作品"萬屋赤葉の事件帳"の世界ほこなぎ町を再構築した仮想現実世界:ほこやぎ町に入る為の五感転送システム。
森咲杜鷹は暴く側の探偵となり、暴かれる側のプレイヤーの妄想犯行計画を暴いている。
妄想犯行計画のゲームルール:3の一部分。
妄想犯行計画にログイン中は、現実世界の時刻は進まない――逆の場合も同じ。
[あとがき]
昼間は全てのお店が閉まっていて、真夜中に全てのお店が開店していたら、そこから昼間は睡眠、夜は労働みたいな世界に変わったら、それも昼夜逆転だよな……なんて考えながら書いてみました。
(本編ストーリーとは別のIFのストーリー、妄想犯行計画の世界観です)




