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妄想犯行計画 未来を掴む推理ゲーム  作者: 魔与音・庵
第5章 森咲杜鷹と雪護喜冬と第2の妄想犯行
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27話 第2の妄想犯行 探索篇 Part.2

第2の妄想犯行 探索篇 Part.2



――まさか白いスマホのアラーム設定で、ほこやぎ町の時間をスキップなんて、意外な盲点だったよ……今更言ってもしょうがない……でも最初から設定できるならそうしてたよ!



【まほらぎ市への五感転送が完了しました!】

【次回帰還期限】

【202X 1月13日 PM20:00】


 ほこやぎ町の萬屋記録局で、喜冬さんがアラーム機能について話してくれた後、ログアウトする為に彼女は自分の拠点へ帰って行った。

 僕たちが、次に妄想犯行計画にログインする時、アラーム機能によってほこやぎ町の時刻は、202X 1月1X AM7:30になるはずだ。



「………………」

『ふっ、お帰り、杜鷹。どうしたの?』

「別に何にもないよ……確かに妄想犯行計画のゲームルールにログアウトは任意と書いてあったなと思ってさ……」

『ふっ、今更なにを言ってるの?』

「アラーム機能さ。なんで教えてくれなかったの?」

『ふっ――杜鷹が聞かなかったから、だから私は教えなかった……たたそれだけだよ』

「まあ確かにそうなんだけどね……」


 

 KokuSouSと言うゲーミングノートの画面内にいる小蒼ちゃんの言う通りで、僕が小蒼ちゃんに疑問点を考え、疑問点を小蒼ちゃんに聞かなかければ、教えてはくれない。

 でも僕も含めた時の中で生きる。命ある者には時間を巻き戻す為のシークバーも時間を速める為の倍速機能もないのだ。

 だからこの今の時点で、あの時に聞いておけば良かったと考えたとしても、最終的にそれは結局、結果論だ。


 

 ――まあ今は精神的にも身体的にも快適だけど、喜冬さんはどうなんだろうか? あんまり喜冬さんからはそんな言葉は聞かないけど……


「まっ、とりあえず寝よう。おやすみ小蒼ちゃん」

『ふっ、おやすみ、杜鷹』

 



【202X 1月13日 AM8:30】

【まほらぎ駅 駅入口】

【残帰還期限 11時間30分】

 


 まほらぎ駅入口で僕は今、喜冬さんを待っている。

 しろなぎ市に住んでいる喜冬さんは電車通勤で、前までは会社で顔を合わせる関係だったが、最近は駅で待ち合わせしてから一緒に出社するようになった。



「ふぅ……寒い、寒い……まだ雪が降ってる」


 駅構内に設置された温度計は、氷点下零度を下回る温度を表示しており、雪が降るのも納得できるぐらいの寒さだった。


 

「あつ! あ、おはよう喜冬さん」

「おはよう、杜鷹君。寒かったでしょ? 待たせたお詫びに……はい、ココアをどうぞ」

「ありがとう、喜冬さん」

「うん。じゃあ杜鷹君、行こうか」


 

 喜冬さんが買ってきてくれた温かいココアを飲みながら僕たち、会社がある方角へ歩きはじめた。


 

「喜冬さん、昨日のあれなんだけど……」

「杜鷹君……あれはすごいね。でもあの子が仕掛けたステージでしょ?」

「そうだよ、あれが妄想犯行計画の世界なんだよ」

「そうね。メガネ型ゴーグルのアニメテイストのフィルターが無かったら、無理だったかも……あと杜鷹君もね……アニメテイストになってるんだよ、知ってた?」

「知ってるよ……自分の姿を見るのはあんまりしないかな……アニメテイストの喜冬さんは、そのままの喜冬さんだからさ」

「ごめん、いきなりそう言われるとかなり恥ずかしいからやめてほしい……かな」

「あっ、つい……ごめん」

「いいよ。でも本当に不思議な気分だね――本当にほこやぎ町があるみたいな感覚になるね」

「そうそう。僕も初めてメガネ型ゴーグルで、あの世界に行った時に同じ事を考えたよ」

「そうなんだ。でも私たちと同じ様に、あの子も妄想犯行計画に五感転送でログインしてるのかな?」

「うーん、小蒼ちゃんに聞いたことあるけど。教えないと言われたからな……でも五感転送はしていないとだけ言われたよ」

「……そうなると、私が考えてるあの子候補も広がる気がする」

「えっ? どうして」

「実はね――」

 


 喜冬さんは大学時代にトリック研究会というサークルに所属していたという。

 僕のクラスメイトだった天城灯凛(あまぎ ともり)ちゃんもトリック研究会のサークルメンバーで、喜冬さんが友人になったのもその時だったらしい。


 

 ――うーん、確かに萬屋赤葉の事件帳はオリジナリティがあるトリックが売りの小説だからな……でも灯凛ちゃんは、僕と繋がりがあるから、確かにあの子の候補にはなるのだけど……証明ができないからな……


 

「トリック研究会と言っても小規模なサークルだったからね。誰があの子は、また考えるとして……杜鷹君、会社が見えてきたよ」


 

 ――喜冬さんと話をしてると時間が早く進んでしまう、トリック研究会か……僕の大学にもあったら良かったのにな……だけど今は――

 


「身体も温まってきたし今日も頑張ろう!」

「杜鷹君! いきなり大声出して、恥ずかしい」


 

 喜冬さんと僕は、今日も会社で仕事を頑張るためにまほらぎビルの入門ゲートを通過した。


 

【202X 1月13日 PM17:10】

【まほらぎビル エントランス】

【残帰還期限 2時間50分】


 

「ふぅ……疲れた……」

「お疲れ様でした、杜鷹君」

「お疲れ様でした……喜冬さん」


 

1日の仕事を終えた喜冬さんと僕は、会社から駅に向かっている。


 

「……あと2時間半かぁ……」

「いきなり何?どうしたの?杜鷹」

「いや……ただ、24時間はあっという間に来ると思ってね。僕たちは今、昼間は会社員、夜は探偵の二重生活になってるでしょ?」

「それがどうかしたの?」

「喜冬さんがいなかったら、僕は会社をサボりにサボって、あの未来とはまた別の未来に辿りついてしまったのかな? ……と思ってさ」

「またその話? ……私たちはあの日、後ろを振り返らないと決めたはずだよ」



 そう、喜冬さんの言う通りだ。

 僕と喜冬さんはあの日、ほこやぎ町の喜冬さんの拠点であるキフユルームで、もう後ろを振り返らないと2人で決めたんだ。

 僕の想いを核として、小蒼ちゃんによって創り出されたほこやぎ町。

 僕と喜冬さんの部屋にある小蒼ちゃんの器、ゲーミングノートKokuSouS、そしてほこやぎ町に行くためのメガネ型ゴーグル。

 第1の妄想犯行である金餅邸の事件は、赤葉さんや明堂さん、八色さんがいたが、僕だけが現実世界の人間で、正直、孤独な気分だった。

 五感再現された仮想現実の住人であっても、現実世界の住人とは、やっぱりどこか違う。

 でもそれは当然の事で、現実世界に理解者がいない事も精神的にもかなり参っていた。

 だからメガネ型ゴーグル……ゴーグル?

 


――そう言えば……なんで山北さんはゴーグルをかけていたんだ?

 


「喜冬さん! なんで山北さんはゴーグルかけてたのかな?」

「いきなり何? 杜鷹君、声が大きい!」


 

 僕の大声に喜冬さんはもちろんの事、周囲の人達も驚きながら僕を見ていた……


 

「ごめん」

「……恥ずかしいから気をつけてね。えーと、ゴーグルをかけていた理由? なるほど言われてみれば確かに不自然ね」

「そう、本当に誤って転落したなら、ゴーグルが転落の衝撃で、外れないとおかしいのに……山北さんがかけていたあのゴーグルの種類は分からないけど、4階から落ちたならゴーグルは外れるよね?』


 

あの転落現場で最初に山北さんを発見した時の疑問点が、もう一つだけある。

それは転落現場へ向かう前に聞いた、あの大きな悲鳴だ。

 あれだけ大きな悲鳴だったのに、なぜか転落現場には人が、誰一人もいないあの環境は……一体、どういう事なんだ?


 

「確かにね……杜鷹君? ねえ、杜鷹君」

「喜冬さん? どうしたの?」

「ゴーグルの件はさ、ログインした時に確認しない? 今は会社員、森咲杜鷹と雪護喜冬だよ」

「ははは、確かに喜冬さんの言う通りだな。なんかさ、喜冬さんと話してるとあっという間に、時間が過ぎる気がするよ」

「そう? 私は長く感じるよ……やっと駅が見えてきたね」

「じゃあ、杜鷹君! またあとでね」

「うん、喜冬さん! またあとで」

 

 

まほらぎ駅の改札前まで喜冬さんを送り届けた僕に対して、喜冬さんは手を振りながら改札を通過して行った……


 

 「さぁ、今から晩御飯を買って、家に帰ろう!」


 

 【202X 1月13日 PM18:00】

 【Mマート まほらぎ町店】

 【残帰還期限 2時間】


 

 今、僕はコンビニにいる。

 Mマートでは今日から萬屋赤葉の事件帳のコラボキャンペーンが開催されていて、僕はコラボキャンペーンの景品が欲しくて、立ち寄ったのだが……

 


 ――無い! 赤葉の景品が無い! 全部無くなってるよ……


 ダメ元で僕は、店員さんに景品があるかを聞いてみたのだが、キャンペーン開始時刻後、すぐに無くなってしまったらしい。


 

 ――こういうときに会社員は不利なんだよ……フリマで高額な値段で買う気も起きないし……


 

 無くなってしまったのならしょうがないという残念な気持ちで、僕は晩御飯を選んでいた。



――うーむ、悩むな……あっ! 赤葉のメロンパン! しかもあと1つだ! 貰ったぁ! ……ってあれ?

 


最後の赤葉コラボメロンパンを僕が取ろうとした時、近くにいた女性に先を越されてしまった……



「あっ……最後の……メロンパンが……」

「あ、すみませんって、あれ? 探偵君?」

「あ……灯凛ちゃん、去年の年末の病院以来だね」

「うんうん。その後の体調の調子はどうです?」

「おかげさまで順調だよ、あの時はありがとう」

「いえいえ、私は何もしてないよー、探偵君」

「あはは……そう言えば灯凛ちゃんさ、喜冬さんと大学時代、同じサークルだったんだね……確か――」

「探偵君! それって……もしかしてトリック研究会のこと?」

「そうそう! トリック研究会の事だよ!」

「あー、トリック研究会の名前を久しぶりに聞いたなぁ、懐かしい……」

「えっ? 懐かしい?」

「えーとね……トリック研究会はね、推理やミステリー作品の犯人の視点に立って、どうやったら探偵に暴かれないのか? をテーマに持論を持ち合ったり、考察したり、時には探偵側の子の持論を見破ったり、時にはオリジナルトリックを作って遊ぶサークルだったよ」

「それはまた興味深いサークルだね。僕も同じ大学だったら真っ先に入っていたかも……」

「ふふふ、やっぱり探偵君だ!」

「探偵君はやめてくれよ……恥ずかしいから」

「探偵君は探偵君だからね」

「灯凛ちゃん……あっ、そうだ! 萬屋赤葉の小説もトリック研究会で、議論の素材として使われてた?」

「萬屋赤葉? 勿論だよ。オリジナルトリックは確かにあったかも」



――赤葉のオリジナルトリックか……どんなトリックなのか気になるな……



「でもね、探偵君。萬屋赤葉の事件帳自体が元々、計算されたオリジナルトリックなんだよ。だからオリジナルトリックの数は少ないかな」

「なるほどね、トリックの数は少ない……か」

「もしかして……探偵君、気になる? 赤葉のオリジナルトリックの内容」

「勿論、僕は赤葉が好きだから、どんなトリックなのか? 気になるよ……というよりも、もちろん喜冬さんはオリジナルトリックの内容を知ってるんだよね?」

「知ってるはずだよ。キフちゃんは、赤葉のオリジナルトリックが議論として出る時、いつもメモを取ってたよ」

「メモか……ありがとう、灯凛ちゃん。メモをまだ持っているか、また喜冬さんに聞いてみるよ」

「でもキフちゃんが、あのメモを持っているかは分からないけどね……あっ、お母さんから電話だ! またね、探偵君」

「またね、灯凛ちゃん」

『もしもしーごめんごめん、いまから……』


 

 ――喜冬さんのトリックメモの件、またタイミングが合った時に聞いてみるか。



結局、僕が買おうとした最後の赤葉のメロンパンは、灯凛ちゃんに買われてしまったが、とりあえず今日の晩御飯をカゴに入れて、レジへと向かった。


「いらっしゃいませー! あっ、先程のお客様! キャンペーンの景品の在庫確認をしたら、まだ残ってました!」

「本当ですか? ありがとうございます!」


 

 店員さんが、赤葉のキャンペーンの景品を補充してくれたおかげで、無事にキャンペーン景品を手に入れる事ができた!

 


 ――しかし最近のコンビニの景品付きコラボキャンペーン企画……対象商品を3つ同時購入しないと貰えないキャンペーンが増えたよな……

 

「あっ、すみません。MahoPayでお願いします」


ピッ!



 『ありがとうございました! またお越しくださいませ!』


 

 赤葉のキャンペーン景品も無事に入手できた僕は、ウキウキな気分を抑えながら自宅へ向かった。


 

 【202X 1月13日 PM 18:50】

 【まほらぎ市 ハイツまほらぎ 杜鷹の自宅】

 【残帰還期限 1時間10分】


 

 僕は晩御飯を食べながら、赤葉の事件帳を見ている。赤葉の暗刺のトリックの暴きパートシーンを見る事で、何かヒントが得られるかも……と考えたからだ。

 


 『東蔵(あずまくら)さん! あなたがこの事件の犯人です!』

 『いきなり何を言い出すかと思えば……私とあの人は、体格差があるのよ? 体格差があるあの人をどうやって殺めれると言うのよ!』

『東蔵さん、あなたが暗闇通路で使ったものはこれだよね?』

『……そ、それは私が探していたロッカーの鍵……なんであんたが持ってるのよ!』



 ――赤葉が持っていたのは、東蔵さんのロッカーを開けれる鈴付きの鍵……ロッカーの鍵……音が鳴るもの。


 

 ほこなぎ寺の事務員である東蔵さんは、物をなくす癖がある人物という設定だ。

 だから物を無くさない様に、鈴を色々な物に付けて対策する習慣があった。



『事件当時。この暗闇通路に被害者を誘い出す事に成功したあなたは、暗闇通路内の死角になる場所にいた。

その場所で暗視型赤外線ゴーグルを装着していたあなたは、被害者が来るのをずっと待っていたの』



 ほこなぎ寺の暗闇通路に誘い出した被害者を確実に殺める為、暗視型赤外線ゴーグルを掛けていた東蔵さんは、被害者の前にロッカーの鍵を投げた。

鍵についた鈴の音に反応した被害者が、鈴付きの鍵を気を取られた瞬間にできる一瞬の隙を狙って、被害者の背後を突き刺して殺めた。



「そうなんだよな……暴くヒントは音が鳴る物。でもな……」



 僕たちはまだ、山北さんが誤って転落する原因となった空き会議室を調査をしていない。

だから妄想犯行計画にログインした後、直接空き会議室をこの目で見て、得られた結果から考えた方がいいな。



 ――音を鳴らせる物……音を鳴らせる物。


 

「ご馳走様でした! さぁて!」


 

 戸締りをした後、部屋着に着替えた僕は、テレビを点けた後、ほこやぎ町に行くため、ベッドの中でメガネ型ゴーグルをかけた!

 

『ふっ、いってらっしゃい。杜鷹』

「行ってくるよ! 小蒼ちゃん!」


約23時間ぶりに僕は、メガネ型ゴーグルをかけた!



 【おかえりなさい! 森咲杜鷹!】

 【妄想犯行計画にログイン開始……】

 【探偵ヘルプのログイン確認中……ログイン確認、完了!】

 【探偵のバイタル状態……異常無】

 【ほこやぎ町への五感転送を完了しました!】




27話 第2の妄想犯行 探索篇 Part.2 完。

28話へつづく!

最後までお読みいただきありがとうございました!

*2026年3月17日(火) 内容を一部改訂しました。

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