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13話 第1の妄想犯行 その7(推理篇①)

 

 第1の妄想犯行 解決篇 その7(推理篇①)



【202X年1月X日 AM10:00】

【金餅邸 客間】

【残解決時間141時間】



「あなたが金餅さんを殺めた犯人だ!」

「いきなり何を言ってるの! 証拠はあるの?」


 犯人の言葉に反応した小蒼ちゃんが、僕の視界にUIメッセージを重ねてきた。


『モリタカは、この人が犯人だという推理と証拠を持ってるの?』

『もちろんさ、小蒼ちゃん!』

『それじゃあ、推理は終わりね。モリタカが考えた、暴きを聞かせてよ』



 推理終了を告げるメッセージと共に、僕の視界に映るハテナマークに帽子を被ったアイコンが、帽子を被る吹き出しのマークへと変更された。



「もちろん、あなたが犯人ではないという考えが、僕にはあるのです。今からそれをお話しします」

「警察でもないあんたがそこまで言ってきたなら、違った時の覚悟は、当然あるでしょうね!」

「もちろんですよ。覚悟があるからあなたの前にいるのです」

「言ったわね! じゃあ聞かせてもらおうじゃない!」



 |仮想の五感探偵として、金餅さんを殺めた犯人と赤葉さんたちに話す推理の始まりは、昨日の夜……………



【202X 1月X日 PM20:00 】

【ほこやぎ町 萬屋記録局 】

【残解決時間 155時間】



 夜間の安全面を考慮し、立ち入り禁止となった金餅邸から僕達は、今回の事件についての情報共有のため、萬屋記録局に戻ってきた。



「モリタカくんは、金餅邸に勤務する家政婦さんの北宮さん、君と赤葉がすれ違った、2人の家政婦の東絵さんか西坂さん。3人の中に金餅さんを殺めた犯人がいると?」


「はい、そうです、八色さん」



「はぁ、モリタカくん。我々、警察は確たる証拠がなければ、その人物を逮捕することはできない…………キミは、この言葉の意味と覚悟を理解した上で、私たちに話をするという認識で、いいのかしら?」



 これは決してゲームなんかじゃない。

 現実世界ではサラリーマンの僕と、想いを叶える存在、刻想器の小蒼ちゃんは、ハッピーエンドの未来を掴むため、想いの契約を結んだ。その結果、具現化されたもう一つの現実が、萬屋 赤葉の事件帳の舞台であるほこなぎ町。

 五感も再現されたほぼ現実世界の仮想空間で僕は、ほこやぎ町の住人、森咲 杜鷹として、五感を再現された別の今を生きている。



 犯人を間違えることは、一般人の僕が推理する以上、絶対に許されない。推理を間違えれば、警察組織の信用問題に繋がる。だから八色さんは僕に覚悟の問いをしている。



「どんな理由があっても、人が人を殺めることは、あってはいけない。今回の犯行も、金餅さんを殺めた犯人も、僕は許せない!金餅さんを殺めた犯人は、僕が暴きます!」



 人を殺めることは、仮想現実の住人であっても、あってはならない。殺めるという選択をした時点で、犯人自身が僕に暴かれる未来を選んだのだ。これが、森咲杜鷹である僕の覚悟だ。



「なるほどね、キミの覚悟は分かったわ。私もキミと同じ考えを持つ警察官として、君の推理を聞く。いいわね、モリタカ君?」

「はい、分かりました。ではまず――」



 僕の視界に映る現在時刻の下のアイコンが、帽子と虫眼鏡を持ったアイコンから帽子を被るハテナマークへと変わった。



『探索は終わり、推理をどうぞ』

『分かりやすくて助かるよ、小蒼ちゃん』



 八色さんたちへ、僕の考えた推理を説明する方法は、推理モノでよく見る、刑事からの質問に対して、探偵が回答していくスタイルだ。萬屋 赤葉の事件帳でも、明堂さんか八色さんが、赤葉さんへ疑問点を質問し、赤葉さんが推理を答えるスタイルと同じで、この世界の赤葉さんの役割が僕になっている。だからこそ、間違いは絶対に許されない。セーブもロードもリセットもないこの状況に、僕の緊張感は高まっている。



「私とモリタカが今日の朝に、家政婦の北宮さんと一緒に邸内へ入った時に、匂いがナントカって、モリタカは言ってたよね?」



 まずは、赤葉さんの質問から始まった。

 邸内に入った時に感じた匂いについて質問された。



「あの時、嗅いだのは少し生臭い魚の匂いでした。でも、すぐに消えたので残り香だと思いました」



「残り香か。そんな大事なことを黙ってたの?」



 ――『嗅覚がないかと思いました!』なんて言えるわけがないよ……



「話そうとしたら、もう北宮さんと先に進んでいました」

「悪かったわね。でも、次からは情報は必ず共有することね」

「はい、分かりました、赤葉さん」



 次に僕へ質問してきたのは明堂警部だ。



「ガイシャの命の灯火が消えたのは今日の朝9時過ぎ。強烈な身体的拒絶反応によるものだ。でも、1時間前の午前8時にホシが出勤して、他の家政婦さんもいたから、ホシが犯行を行なう時間はない。匂いの特異体質を持つガイシャを、ホシはどうやって殺めたんだ?」

「金餅さんを殺めた人物の特異体質とK.S換気システムの設定を利用して、時間差トリックで密室の書斎にいた金餅さんを殺めたのです」

「時間差トリックだと?」

「はい、詳しくは……」



 今回の事件のトリックは時間差トリック。K.S換気システム制御室で、管理者ログイン後に換気設定ログを開き、仮想空間内のコントローラーである白いスマホのカメラで撮影していた。追加管理者となったK.Nさんが、事件前日の夜20時30分に変更した換気設定のログの写真を確認した結果、金餅さんの命の灯火が消えた推定時刻の換気設定は、キッチンは吸気、書斎室は排出、それ以外の部屋と廊下は換気停止、外部は排出設定だった。更に推定時刻から1時間後、書斎室のみ自動的に排出から換気へ変更される追加設定もされていた。匂いの特異体質を持つ金餅さんが吸気設定を設定するのは不自然だと僕は考えた。

 赤葉さんと僕が邸内に入った時、書斎室の換気モードが切り替わった。

 僕が嗅いだあの残り香は、K.S換気システムの設定で外に排出された匂いだと考えるのが自然だろう……



「モリタカ君、さすがね。換気設定ログからそこまで考えるとは。でも、それだけではダメなのは分かるわよね?」

「はい、八色さん。確たる証拠ですね」



 物的な証拠がないと、トリックは暴けない。



 プルル! プルル! プルル!



「こちら明堂、なんだってぇ! ……そうか分かった、また何か分かったら連絡をくれ」



電話を切った明堂さんが、眉間にシワを寄せながら僕の方へ視線を向けてきた。



「……はあ、モリサキ、おまえの読み、当たってるかもだぞ、あんな臭い干物、家政婦が焼くなよ……」



 このトリックに必要なアレの正体は、臭い魚の干物なのだ!



 13話 第1の妄想犯行 その7(推理篇①)完。

 14話 第1の妄想犯行 その8へつづく!

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