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再生回数7回のラブストーリー  作者: 市善 彩華
第16章 ブルースター ── 幸福な愛、信じ合う心
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第94話「はじまりの名前」

まだ見ぬ我が子を想像する時間は、どこか夢みたいで、少し くすぐったい。

名前を考える。服を選ぶ。写真を見つめる――。

それだけで、少しずつ“親になる”実感が、心に灯っていく。

休日の午後。

駅前のベビーショップで、涼也と結衣は手をつないで歩いていた。


カラフルなスタイや小さな靴下、ぬいぐるみに囲まれて、二人の足取りもどこか軽やかだった。


「哺乳瓶って、こんなに種類あるんだ……」


涼也が驚いたように棚を見つめ、結衣は笑う。


「そうだよ。素材も形もいろいろあるし、赤ちゃんによって好みも違うんだって」


「すご……すでに難易度高くない?」


「ふふ、全部やっていけば慣れるよ。私たちなら、大丈夫」


店内を見て歩きながら、二人はベビー服やオムツ、ベビーベッドなどを手に取り、名前の候補をぽつりぽつりと出し合った。


「……二文字の名前って呼びやすいよな」


結衣が「女の子だったら、“まい”とか、“はな”とか?」と例を挙げると、

「いいね。今のうちにいっぱい候補あげとこう」

涼也は手にしていた小さな靴下を見ながら、少し笑った。


結衣が笑うと、涼也も「そうだ!」と目を輝かせた。


「“けい”とか“とも”とか、性別問わず いけそうな名前もあるなって」


「確かに。どっちでも似合いそう~」


そんなやりとりをしながら、結衣はバッグから小さな封筒を取り出す。


中から出てきたのは、二人にとって特別な一枚――エコー写真。


「……まだ小さいけど、ちゃんといるの。不思議だよね」


そう言って、結衣は写真をそっと涼也に見せた。


「性別は、まだ分からないけど……」


涼也が横から ふいに口を挟む。


「……大悟さん、めっちゃデレデレしそうじゃない?」


「するする! そういう感じするよね! 知らないところでお小遣いあげたりして。笑」


「絶対やるわ~。“これは内緒な”とか言ってさ」


二人は顔を見合わせて笑い合う。


生まれる前から、こんなふうに想像されて、待ってもらえる存在。


そのあたたかさが、結衣のお腹の奥までじんわりと伝わってくるようだった。

お忙しい中、今日も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!

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