第68話「それぞれの愛し方」
“どっちが好きか”なんて、ちょっと青くて、ちょっとくだらない。
でも、その言葉の裏にある気持ちは――案外、本気だったりする。
みんな違って、みんな それぞれの愛し方。
週末の午後。
カフェのテラス席で、涼也と結衣は、里奈と大悟と合流していた。
アイスコーヒーを一口飲んだタイミングで、涼也がふと話を切り出す。
「あの、大悟さん。聞いてもいいですか?」
「ん?」
「“どっちが好きか”って話、里奈とやったことあります? ――ほら、恋人同士で“俺の方が好き”とか、“いや私の方が好きだし”って、ああいうやつです」
大悟は一瞬黙ってから、ちょっと苦笑する。
「……してたとしても言うわけないだろ」
「ですよね〜」
結衣が吹き出し、涼也も笑う。
「なんか、そういうの絶対隠すタイプだと思ってた」
「隠すっていうか、言わないだけ」
大悟が続けて、
「……恥ずかしくないのかよ」
里奈がすかさず返す。
「うん、私は やったよ!っていうか、私の方が好きに決まってるし!」
「いやいや、それを言うなって」
「なんで? 事実だし?」
「……まったく、言わなくていいことまで言いやがって」
涼也と結衣は、そのやりとりを微笑ましく見つめた。
「いいなあ、こういうの」
「うん。言葉にしなくても、ちゃんと伝わってる感じ」
ほっと和んだ空気の中で、涼也がふと思い出したように聞く。
「そういえばさ、二人って同棲してるじゃん?
やっぱり結婚とか考えてるの?」
その言葉に、里奈は少しだけ驚いた顔をする。
「…うん、そりゃあ、最初からそのつもりだけど。
でも実はね、親に同棲のこと言ってなくて」
「えっ、そうなの?」と結衣。
「うん。挨拶の前に同棲って、やっぱ ちょっと言いづらくてさ。
“順番が違う”って言われる気がして…」
大悟が笑いながら言った。
「まあな。言いづらいのは分かるけど、もし何かあったら“全部大ちゃんのせいにする”って手もあるぞ?」
結衣が笑顔で即答。
「それいいね!」
里奈が照れながらも少し笑う。
「ありがとう、なんかちょっと勇気出たかも」
結衣もにっこり。
「もし何かあったら、いつでも話聞くからね」
そのやりとりを見て、涼也は ふと目を細めた。
血の繋がりだけじゃなく、こうして支え合える存在がいること。
恋人や友人、そして家族も含めて、そういう“大切な人たち”がいることのありがたさを改めて感じた。
胸の奥がじんわり温かくなって、涼也は ぼそっと漏らした。
「……やっぱり、家族っていいな」
夕暮れの光が差すテラス席に、静かで温かな空気が流れていた。
お忙しい中、今日も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!




