第46話「一歩、休む勇気」
穏やかな日常の中に、そっと寄り添う言葉があります。
心に届くやりとりが、少しずつ心を軽くしていきます。
結衣はリビングでパソコンに向かい、仕事に追われていた。集中しようとしても、思考がうまく働かない。
カチカチとタイピングしていた指が止まり、深いため息が漏れた。
「もう…限界かな、頭が働かない」
そのとき、スマホが震えた。画面には“涼ちゃん”の名前が表示されている。
涼也からのメッセージが届いていた。
「結衣ちゃん、今日は どんな感じ? 少しでも無理してるんじゃないかと思って、心配してるよ」
ふっと力が抜ける。
その優しい言葉に、胸の奥が じんわりとあたたかくなった。
「大丈夫だよ。ちょっと疲れてるだけ。でも、頑張らなきゃって思ってる」
すぐに返ってきたメッセージ。
「無理しないでね。結衣ちゃんが元気じゃないと、俺も心配だよ。体調の方がずっと大事だから」
画面を見つめたまま、結衣は指を止める。
言葉が胸に響いて、何かが ほどけていく気がした。
「でも…休んでいいのかな。私ばっかり頼って、涼ちゃんに迷惑かけてる気がして」
「結衣ちゃん、迷惑なんて思ったことないよ。結衣ちゃんが疲れているなら、今度は俺が支える番だと思うんだ」
「逃げじゃないよ。俺がそうしたいんだから。時間ができたら学ぶこともできるし、好きなことだけやってもいい。俺は結衣ちゃんの笑顔さえ見られれば、それで十分なんだよ」
結衣の目に、じわりと涙がにじんだ。
誰かにそう言ってもらえることが、こんなにも心を軽くするなんて——。
「涼ちゃん…ありがとう。私、少しだけ休んでみるね」
「それでいいんだよ。休むことに後ろめたさなんて感じなくていいよ。結衣ちゃんが笑顔でいてくれることが、一番大切だから」
「もしお金の心配が出てきたら、俺が支えるから! 遠慮しないで何でも言ってね」
その言葉に、結衣は自然と笑みをこぼす。
少しずつ、涼也に寄りかかってもいいのかもしれない。
そう思えたとき、張りつめていた心がふわっとほどけていった。
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