第29話「一緒に、ずっと。」
バレンタインの日、二人の気持ちが交わる瞬間。
小さな贈り物が、二人の絆をさらに強くする。
これから先も、ずっと一緒に――。
バレンタインの日。
結衣は、涼也に渡すために選んだプレゼントを手に取った。
チョコレートを渡すのも定番すぎる気がして、少し違うものを贈りたいと思った。
バレンタインだからこそ、ちょっと特別なものを——そんな気持ちで選んだ。
「……これ、ネクタイ。涼ちゃんに似合うと思うから、選んでみたんだ」
涼也は、少し驚いた顔をしながらも、嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう。こういうの、もらうの初めてだな」
結衣は照れくさそうに笑って、涼也の顔を見た。
「あえてチョコじゃないものを贈りたくて、これにしたんだ」
「嬉しいよ、結衣ちゃん。実は、俺も結衣ちゃんにプレゼントがあるんだ」
涼也は、結衣にキーケースを渡す。
「えっ、これ、すごく素敵!ありがとう」
「チョコじゃないけど……バレンタインに“逆チョコ”みたいなことするの、俺、初めてなんだ」
「私も……バレンタインに男性からプレゼントもらうの、初めてだよ。しかも、それが涼ちゃんって、幸せすぎる……!」
「結衣ちゃんとお揃いにしたくて、選んだんだ」
結衣はキーケースを大事そうに手に取った。
「これ、すごく大事にするよ。ありがとう」
ふと何かに気づいたように、結衣が目を丸くした。
「……あっ! これって、ホワイトデーのお返しも兼ねてるってこと?」
涼也は少し戸惑ったように笑った。
「え?いや、それは それで、ホワイトデーには ちゃんと渡すつもりだよ?」
すると結衣は、思わずぷくっと頬をふくらませた。
「ダメだよ、それじゃ意味ないもんっ!」
「え、意味ない……?」
「これが“ホワイトデーのお返し”ってことにしないと、今の感動が薄れちゃうの!もう、ほんとに特別だったんだから!」
涼也は苦笑しながらも、そんな結衣の真っ直ぐな想いが嬉しくて、やさしくうなずいた。
「……わかった。じゃあ、これはホワイトデーのお返しってことで」
「うんっ!」
——ほんとは、ホワイトデーとか関係なく、
結衣ちゃんには これからも、たくさんプレゼントしたいって思ってる。
そう思わせてくれるほど、彼女の笑顔は、何よりのご褒美だった。
――そして、日常に戻り二人は、お互いに見つめ合う。
結衣は、涼也と一緒にいることで、もっと深く心が温かくなるのを感じた。
涼也も、結衣の笑顔を見ていると、自分の気持ちがどんどん強くなるのを感じていた。
この先、どんな日々が待っていても、二人なら乗り越えられる。
だって、今、こうして一緒にいられることが、何より幸せだから。
「ねぇ、涼ちゃん。これからも、ずっと一緒だよね?」
「もちろん。ずっと、結衣ちゃんと一緒に」
彼の言葉を聞いて、結衣の心は もっと温かくなる。
未来に向けて、二人の絆は さらに深まっていく。
お忙しい中、読んでいただきありがとうございました!