表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再生回数7回のラブストーリー  作者: 市善 彩華
第2章 コスモス ── ふと、重なる気持ち
11/108

第11話「“彼女”という響き」

「結衣さんみたいに素敵な方が彼女で、納得です」

否定されたはずのその一言が、なぜか結衣の胸にあたたかく残っていた。

名前の呼び方、メッセージの言葉──少しずつ、距離が近づいていく。

帰り道、足元に差し込む夕暮れの光が、やけにあたたかく感じた。


さっきの翔平さんの言葉が、頭の中で何度もリピートされている。


「結衣さんみたいに素敵な方が彼女で、納得です」


――“彼女”。


その一言が胸の奥でふわっと響いて、今もほんのり頬が熱い。


涼也さんは、すごく驚いた顔をして、すぐに否定してた。


「違うって……」


たしかに、そう言った。でも、その声は どこか柔らかくて、完全に拒むような感じではなくて。


ちょっと照れたような顔も、見逃さなかった。


翔平さんが話していた“涼兄”のこと。

「昔から真面目で不器用で。でも、俺の学費まで全部稼いでくれて……」


あのとき、ふと横を見たら、涼也さんが少し恥ずかしそうに目を伏せてた。


そんなふうに、自分のしたことを口にする人じゃない。

きっとこれからも、そんな言葉を本人の口から聞くことはないんだろうな。


でも、そんな涼也さんの優しさを、翔平さんの言葉で少しだけ知れた気がした。


誰かのために、静かに頑張れる人。

照れくさくて不器用で、それでもちゃんと想ってくれる人。


“彼女”って言葉が、頭から離れないのは、

多分その響きに、どこかで少しだけ期待してしまってる自分がいるからだ。


まだ、何も始まってない。

でも、今日の出来事は確かに、小さな灯みたいに心の中で揺れていた。


───


電車に揺られていると、スマホが小さく震えた。


涼也さんから、LINEだった。



【涼也】

今日は楽しかった、ありがとう。

少しでもゆっくりできて良かった。



ふわっと心があたたかくなって、思わず返信を打ちかけて、

いったん考え直してから、こう返した。



【結衣】

結衣です。

今日は、楽しかったです!

ありがとうございました。

ゆっくり休んで下さい。

(返信不要です。)



(……え、返信不要って何?)

送ってすぐ、自分のメッセージに心の中でつっこみを入れた。


けれど、すぐに返ってきた返信に、思わずくすっと笑ってしまう。



【涼也】

返信不要って書いてたけど、返信したいので返します。

こちらこそ、ありがとう!

結衣さんといると居心地よくて、あっという間に時間が過ぎちゃった。

またね!

(返信は気にしないでね)


[おやすみ]のスタンプ



その画面を見つめたまま、胸の奥がじんわりと温かくなった。


名前が少しだけ特別な響きに聞こえたのは——きっと気のせいじゃない。


もうすぐ駅。

夕暮れの空は、さっきより少しだけ暗くなっていたけど、

私たちの歩幅は、あのときよりも、ほんの少し近づいていた。

お忙しい中、読んでいただきありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ