梅雨のだらだらとイチャイチャ……? ですわ
「暇……ですわ…………」
「……おう……」
5月中旬、昼。梅雨に入り、雨が続き、ジメジメとした毎日に気の滅入る日々。
いつも通り暇をしたシュエリアと俺は、いつも以上にだらだらしていた。
お互いにお互いを支えにするように寄りかかっている。だらっと。
「……暇ですわ」
「……だな」
「暇ですわ……」
「うん……」
「暇――」
「いつまでやってるつもりですかっ」
「ですわ」
「わかる」
「止まってくれませんかっ?!」
俺とシュエリアが暇だ暇だとのたまっていると、アイネからストップが掛かった。
なんだろう、何か妙案でもあるのだろうか。
「何かいい暇つぶしでも思いついたんですの?」
「そういうわけではないですが――」
「暇ですわね」
「それな」
「わかりました! お喋りしましょうっ!」
「……いいですわよ」
「了解」
「はぁっ……」
おぉ……アイネが溜息とは珍しい。というか俺らはアイネに溜息吐かせるほど変な事してたんだろうか。
「それで、何を話すんですの?」
「そ、そうですねっ…………。あ。来月はついに兄さまとシュエリアさんのご結婚ですがっ」
「ん、そうだな」
「準備は進んでいるんですかっ?」
「あー、それなぁ」
「どうなんですの?」
「式の方は義姉さんに任せてるから大丈夫じゃないか?」
「そう、わたくしは若干不安だけれど」
「そうか?」
「シオンが変な事しないか不安ですわねぇ」
「うーん、流石に大丈夫だと思うがなあ……」
「他はどうなんですかっ?」
「ん? そうだな……後は…………何だろうな?」
「ドレスならもう出来てますわよ」
「思ったよりちゃんと準備してんのね」
「お、アシェか」
「わた~しも~」
「トモリも来たのね」
これで義姉さん以外はいつメンが揃ったな……。義姉さんに式の事とか聞きたかったんだけど。肝心な時に居ないなぁ。
「結婚って他にやることないんですの?」
「どうなんだろうな。したことないからわからん」
「そう~です~よね~」
「ググればいいんじゃない?」
「おう、なんでもググってみる。現代っ子の鏡だな」
ということで検索、検索。
「うん、わからん」
「そうですわね……なんというか、やることが多くて、めんどくさそうですわね」
「義姉さんに任せて正解だったかもな」
「ですわねぇ」
「あんたら自分たちの結婚式なのにやる気なさすぎでしょ……」
そうは言われても、実際何すりゃいいのかさっぱりだしな。
「まあでも、正直、シュエリアの花嫁衣装みられたら、それでいいかな感はある」
「わたくしも、ユウキに花嫁姿見てもらって、誓いのキスとかできたら、それでいいわね」
「ホントに似たもの夫婦よね、あんたら」
うーん、でもほんとに、それ以外に何があると言うんだろう、結婚式。
後は美味い料理とか……スピーチとか……?
「まあ~シオン~さん~が~います~から~」
「そうですね。義姉さんが何とかするだろ、多分」
「ですわね、きっと」
「そうですねっ恐らくっ」
「こういう時だけシオン頼りなのね、あんたら」
「信用~は~なさそう~です~が~」
まあ信頼できるかは別として。いざというとき、困ったとき。頼りになるドラえ〇んのような義姉だとは思っている。
「っていうかそもそもなんで式の話してたのよ」
「ん? アイネが言い出したから?」
「お二人が暇でカビ生えそうだったのでっ」
「あら~」
「わたくし達そんなだったんですの……?」
暇でカビ生えそうとか初めて言われたわ。実際湿気あるから無いとは言い切れない……のか?
「にしても早いもんね、結婚の話してからもう半年なんて」
「そうだなぁ。シュエリアと出会ってからで考えても、一年と半年だしな……早いもんだ」
「この調子で万年一緒に過ごしたいわね」
「そうだなぁ」
「さらっと~イチャつき~ます~ね~」
「そ、そうですか?」
「はい~」
「万年一緒に居たいとかサラっと言っちゃう辺りが特にですっ」
「そうね、普通に考えて万年一緒に居たいとか考えにくいわよ」
「……そう言われると変かもしれないですわね?」
「確かに」
「認めちゃい~ました~?」
いや、でも実際おかしな話だ、万年なんて。
「不老不死なんですものね――」
「あぁ、この世の終わりまで一緒に居られるな?」
「それどころか別の世界に移ればいくらでも一緒にいられますわよ?」
「天才か」
「天才ですわ」
「これでもかというくらいイチャ付きやがるわね」
「むぅっ」
「……いら~」
なんでだろう、三人から敵意を感じるんですが。なぜに。
「容赦~なく~いちゃつ~きますね~」
「ホントホント、あんたハーレムの主の自覚ある?」
「ないな」
「即答しましたっ?!」
「まあ実際のところ、自覚足りてないですわよねぇ」
「シュエリアからみてもそうなのか」
「結婚なんてした日には毎日砂糖吐くほどイチャイチャしそうね」
「です~ね~」
「そんなことないですわよ」
「せいぜいガムシロップくらいじゃないか?」
「ですわね」
「液状になっただけじゃないですかっ」
「水で薄まってますわよ?」
「その~ぶん~ねっとり~して~そうですが~」
「否定はしませんわ」
「しないのか」
「ねっとりイチャイチャしたくないんですの?」
「したい」
「ですわよねぇ」
「あんたらホント懲りないわね」
おっと、またこれはイチャイチャを咎められる感じだろうか。
うーん……あ。
「アイネ、おいでおいで」
「にゃ?」
俺はだらっとした姿勢を正すと膝を叩いてアイネを呼んだ。
「ほれ、おいで」
「にゃんですかっ?」
「いや、シュエリアばっかり仲良くしてるとアレかなぁと思って、アイネを愛でようかなぁと」
「賄賂ですねっ」
「人聞き悪っ…………。…………。でも座んのか」
「ナデナデもしてくださいっ」
「はいはい。…………。なでなで」
「じ~~~」
「あ、あー、トモリさんも、右隣、どうですか?」
「はい~」
俺の誘いに乗ったトモリさんが俺の右隣にすとん、と座って頭を差し出して来たのでアイネから手を放しトモリさんに伸ばす。
「わく~わく~」
「あ、はい……なでなで」
「ふふ~」
「浮気者」
「おいまてシュエリア。ハーレム言い出したのお前だからな?!」
「じゃあその空いてる左手使いなさいよ」
「……はあ。なでなで」
「ん、いいですわね」
「…………ジトっ」
「……あー…………」
……マズイ。マズいぞこれは。
「ねえユウキ」
「なんでしょう、アシェさん」
「私には、何をしてくれるのかしら?」
「…………うん」
どうしようか、これ。左手はシュエリア、膝にはアイネ、右手にはトモリさんと、空きスペースがない。この状況でアシェまで構うのは無理があるような……気が……。
「あ、脚?」
「を?」
「……使って挟む?」
「阿保なの?」
「ふ、踏む?」
「むしろ踏むわよ?」
「……万策尽きたな」
「万策尽くしてないけどね」
いやでも、実際これ以上俺にできることあるか?
「いや……うーん……」
「……あ、いいこと思いついたわ」
「お、おお? 本当か、アシェ」
「えぇ」
「それは一体?」
「ん。アイネ、ちょっと顔退けてもらえる?」
「にゃ?」
アシェに退くようお願いされ、ちょっと顔を動かすアイネ、これに何の意味が。
「じゃ、はい。ちゅ」
「っ?!」
「盛ってますわねぇ」
「ひや、おまっ……なんれへいひそうなんら」
「喋るときくらい口離したらいいと思いますわ?」
「っ…………ふはっ! いや! アシェが離してくれなっ…………んぐ……」
「さかって~ます~ね~」
「ふへへ」
「むぅっ……」
なんかアシェは嬉しそうだが、アイネはむすっとしてるし、シュエリアは思ったより平然としているし、トモリさんはよくわからなくて怖い。
「……ふはあ。はー。満足したわ」
「さよで……」
「でもこれってアレですわね、シオンも居たら本当に手が足りないですわねえ」
「……確かに」
「そんなこともないよ?」
「……さらっと出てくんな」
またかこの不法侵入者もとい義姉さん。
「お姉ちゃんは踏まれるのでいいから、全然いいから!」
「……で、なんで足元で仰向けで寝てんの」
「わくわく」
「踏まねぇよ?」
「えっ?!」
「なんで驚いてんだよ……」
「足蹴にされたかったのに!!」
「だから嫌なんだよ!」
変態な義姉を喜ばせる趣味なんて俺には無い。
「じゃあせめて脚で挟んでよー」
「……えー」
「まあ、ユウキ、シオンも一応はメンバーなのだから」
「そうよ、脚でいいって言ってるんだし」
「です~ね~」
「姉さまも仲間に入れてあげてくださいっ」
「……はぁ。仕方ないか」
「わくわく」
「…………どっちがいい」
「! 踏んで欲しい!!」
「……はいはい」
どうせやるならどっちも同じようなもんだ、多分。だから選択権を与えてみたんだが、やっぱり踏まれたい辺り俺の義姉は変態だなぁと思う。
まあ、踏むほうも大概だが。だが。
「これ、どんな絵面だよ……」
「両手と膝、脚に口と、体全体を使ってハーレムを幸せにする度量を見せましたわね」
「これ幸せなのか……? というかこれで見られる度量とは」
「わたくしは結構好きよ?」
「私も兄さま好きですっ」
「それ違くない? まあ、私も好きだけどね」
「好き~です~よ~?」
「うんーお姉ちゃんもこれ好きー」
「さいですか」
「さいですわ」
まあ、皆がいいなら……いいのか?
うーん、よくわからんけど、いいか。
というわけでこの日から、時たまこうして皆を相手にすることが増えたのだった。
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次回更新は火曜日です。




