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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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初詣の話ですわ

「初詣って何するんですの?」

「……なんだろうな」


 三が日。俺とシュエリア達は近所の神社に初詣に来ていた。

 流石に元日ではないし、そもそも人の集まる大きな神社でもないので人はそこそこの多さといったところだ。

 これなら迷子とかもないだろ。


「お祭りではないのよね?」

「ではないな」

「屋台の食べ歩きをするものでも」

「ないな」

「何するんですの?」

「うーん」


 実際初詣って何するもんなんだろうな。

 なんかこう、神社に来て、お参りして、屋台巡りをするイメージしかないけど。

 かといって食べ歩きするイベントかと言われると、違うと言える。


「初詣っていうのは年が明けてから初めて神社や寺院などに参拝する行事のことで、一年の感謝を捧げたり、新年の無事と平安を祈願したりするんだよ?」

「言葉の使い方が何処となくウィキペディアっぽい」

「姉ペディアだね!」

「流石にシオンは無駄に頭いいですわねー」

「えっへん」

「義姉さん、褒められてないから」


 何故この義姉は「無駄に」と言われて誇らしげに胸を張れるのだろう。

 というか。


「今更だけど、シュエリア以外は振袖か」

「超絶遅い反応ですわね」

「それだけゆう君が私たちの衣装に興味ないってことかな」

「い、いや、そういうことではないんだが」


 なんというか、単に切り出すタイミング無かっただけで。

 かといって今がそのタイミングとして適していたかと言われると微妙だが。


「いいな、振袖」

「そうかしら?」

「あぁ。義姉さんが特に似合ってる」

「えっ?!」

「ん? 何」

「ゆう君がお姉ちゃんを……私を褒めた?!」

「おい」


 俺だって褒めるところがあればちゃんと褒めるって……。


「褒めるところの少ない不肖の義姉だけど、今日は振袖と長い黒髪がいい映え方してると思っただけだ」

「うん、なんか前半の部分で凄くいつものゆう君だなって感じした」


 胸をなでおろしながらそう語る義姉さんを押しのけ、俺の目の前にずずいっと出て来る影が三つ。


「私はどうですかっ兄さまっ」

「わた~しも~」

「私にも何か言っていいのよ?」

「あー。うん」


 珍しく義姉さんを褒めたからか、他のメンバーからも褒めて欲しそうなオーラを感じる。


「三人とも凄く似合ってるよ。綺麗だと思う」

「にゃあー」

「ふふふ~」

「そうそう、ふふん」

「ふうん」


 俺の言葉に満足した様子の三人と、それを見て何か面白くなさそうなシュエリア。


「どうした?」

「わたくしも振袖着た方がよかったかしら」

「あぁ…………。なんでお前だけいつものTシャツなんだ?」

「めんどくさかったからですわね」

「納得」


 理由がシュエリアらし過ぎて凄く納得だ。確かにコイツがちょっとしたお出かけ程度の初詣にわざわざ振袖を一生懸命着る姿は想像し辛い。


「わたくしが着たらユウキはどんな反応をしたのかしら」

「…………。さあ、どうかな」

「それはもうさぞ大げさに褒めたたえたでしょうね、わたくしの美しさを」

「無いんじゃないかなぁ」

「そこは嘘でも『そうだね』とでも言っておきなさいよ」

「嘘はよくないだろ」

「じゃあ本当になさいよ」

「その努力要る?」

「女の子を喜ばせる努力は男の甲斐性ですわ」

「さいですか」

「さいですわ」


 うーん、中々難しそうだな、男の甲斐性とやらは。


「……ふむ」

「ん? どうしたシュエリア」

「…………もう既に帰りたいですわ」

「飽きるのはやっ!」


 まだ来てちょっと駄弁っただけじゃん!!


「そう言われても、なんかないんですの? 初詣、やること」

「え? そ、そうだな……出店でも見て回るか?」

「んーそういう気分じゃないのよねぇ」

「……じゃあ最初にお参り行っとくか?」

「えー。あれ並ぶんですの?」

「…………じゃあおみくじとか」

「あーそんなのもありましたわね」


 うん、コイツ飽きたのとやる気のなさが併発してやがるな。

 でも一応おみくじくらいなら、やってくれそうな感じではあるな。


「とりあえず先におみくじでも引くか」

「ん、そーですわね」

「ってことでいいかな、皆」

「まあ、ユウキとシュエリアが中心なのはいつものことだからいいわよ」

「そだねー基本シュエちゃん基準なのはゆう君のいつものパターンだし」

「今年も兄さまは兄さまですねっ」

「です~ね~」

「……お、おう」


 なんだろう、皆から「コイツ本妻ばっかり構ってやがるな」みたいな雰囲気を感じるのは俺の気のせいだろうか…………。


「さて、それで、おみくじだが……」

「何かしら、買う前に巫女の品定めですの?」

「お前は俺をなんだとお思いで」

「巫女とシスターなら巫女萌えな旦那かしら」

「間違ってはいないな」

「ついでに聖職者相手に背徳感で興奮するタイプの変態でもありますわね」

「…………否定できん」

「否定しときなさいよ」


 俺とシュエリアの会話にアシェがツッコんでくる。

 そして他のメンバーは「またコイツ等二人だけで会話始めたよ」って顔をしている。

 うん……もういっそみんな会話に積極的に絡んできたらいいんじゃないかな、と思うんだけど。どうなんだろう。


「んー」

「なんだシュエリア」

「せっかくだし勝負しませんこと?」

「おみくじでか」

「えぇ」

「…………オーケー」

「最近ゆう君シュエちゃんに甘さが増してない?」

「そんなことはない」


 それはない。ただここで何か言っても結局勝負になるだろうから、了承しただけで、別にシュエリアがやりたいならやらせてあげようとか、そういう甘い考えではないのだ。

 ない、多分、きっと。


「まあいいわよ。でもせっかく勝負するなら何か賭けたいわね」

「賭け事はよくないですっ」

「アイネ、この悪役は無視していいぞ」

「ゆっ君の~所有権~とか~」

「賭けましょうっ」

「アイネー、魔王にたぶらかされるなー?」


 どうしよう、二大悪の所為で家の可愛い妹がギャンブラーになってしまう。


「というか、そんな内容の賭けわたくしが許すはずないでしょう」

「ちぇー、つまんないの」

「はぁ?! わたくしがつまらない?!」

「おいシュエリア。簡単に乗せられるな」

「いいですわよ? 賭けてやろうじゃない!!」

「おーい、本人の意思は無視ですかー」

「そうそう、流石に所有権はやり過ぎだよシュエちゃん」

「まさかの義姉さんが味方だと」

「なんで味方して驚かれてるの私」

「いや、だっていつもなら絶対「お姉ちゃんも所有権欲しい」とかほざくだろ?」

「凄く酷い言われようだけど、お姉ちゃんだって線引きくらいしてますぅー」

「そ、そうか」


 まあ、義姉さんが味方してくれる以上、シュエリアも多少は話を聞いてくれるだろう……。

 …………くれるといいなぁ。


「そういう訳でシュエリア、流石に所有権を賭けるのは止めてくれ」

「んっ…………」

「そもそもゆう君はシュエちゃんの物なんだから、賭けてもなんの得もないよ?」

「確かに…………。そうですわね?」

「チッ」

「おい悪役令嬢、お前今舌打ちしてなかった?」

「…………なんのことかしら。そんなガラ悪いことしないわよ」

「お前がそれ言う?」


 この中で魔王についでガラ悪いイメージなんだけど。


「じゃあ何を賭けるのよ」

「結局賭けるんかい」

「ならゆう君と――」

「いや、まず俺を賭けるのやめろよ……」

「――えー。それじゃあ皆盛り上がらないよー」


 義姉さんの言葉に皆「うんうん」と頷くが、これ、俺が間違ってるのか?


「……はぁ。じゃあ、軽いのなら」

「うんうん。ならゆう君と一日初詣デートとかどうかな」

『賛成!』

「まあ、そのくらいなら」


 っていうか皆で初詣来たのに、まさかこんなところでいきなり1on1のデートに派生するとは……まだお参りもしてないのに。

 などと考えている内に、皆おみくじを買ってきたようだ。

 ……今更だけどこの勝負俺だけメリットなくない?


「さて、わたくしは……あらまあ、大吉ですわよ? ふふふっこういうところで引いてしまうのがメインヒロイン力ですわね!」

「ぐっ……小吉…………。あんたイカサマしてないでしょうね」

「一番しそうなアシェに言われたくないですわ」

「大凶~でした~」

「トモちゃんどんまい! お姉ちゃんは……あちゃー吉かー。大吉出ればお姉ちゃんもデートできると思ったんだけどなぁ」

「えっ、できるんですかっ?!」

「ん? まあ一位は一人とは限らないし、同じ大吉が複数人いればそりゃまあ、そういうことにもなるんじゃないか?」


 そう言うと、シュエリアも「それはそれで面白そうよね」とか言っているが俺としては内心複数人相手は若干面倒だから勘弁して欲しいんだが。まあ、アイネならいいか、可愛いし。


「ということで開けて下さいっ兄さまっ」

「え、俺が?……まあいいけど」


 アイネに渡されたおみくじを開くとそこに書いてあったのは――大吉だった。


「――列、早く進まないかしら」

「うー、お参りって何するんですかっ?」

「あー、そうだなぁ」


 おみくじによる賭けの結果は御覧の通り、シュエリアとアイネが勝ち、今俺を挟むように抱き着いてきている。


「列はそのうち進むさ、一人当たりそんなに長いもんでもないし。そしてお参りっていうのはアレだ、神様に願い事とかするんだよ」

「じゃあこの先に居る連中、皆神に願い事なんてするんですの?」

「まあそうだな、っていうか俺らも並んでいる以上、そうだぞ?」

「願い事……叶いますかっ?」

「ど、どうかな。あんまり期待しない方がいいとは思うけど」

「じゃあなんで並んでまでこんなことするのよ」

「……なんでだろう」


 ぶっちゃけ無宗教だからか、そこまでお参りとか詳しくないし、なぜこんなことをしているのか全く分からない。


「まあいいですわ。わたくしは遊園地デートで待ちゲーを楽しむことの重要性を学んだもの」

「待ちゲーですかっ?」

「えぇ。遊園地って一つのアトラクション遊ぶのに1時間とか待たされるんですわ」

「それ楽しいんですかっ?」

「ふむ…………。楽しくないわね?」

「おい」


 待ちゲーを楽しむ重要性はどこ行った。


「冷静に考えたら時間の無駄よね」

「ですねっ」

「まあ、一理あるのがなんとも言い難いけど」


 実際、俺も待ち時間の長い物に一回乗るより、短い時間で色々回りたい派だしな……。

 まあどうしても体験したいアトラクションがあれば別の話だが。


「って、話している内に――そろそろ俺らの番だぞ」

「あら、何も考えずに来ちゃいましたわね」

「特にお願い事ないですっ」

「それを待ち時間に考えればよかったのでは」


 まあ正直、俺も特に願い事らしい願い事は…………。あ。


「ユウキはどうなんですの? 願い事」

「俺はあるよ。まあ人には言わないってのが習わしだけどな」

「へぇ。そう。こんな美人の彼女が居てまだ願いがあるなんて貪欲ですわねぇ」

「両手に花じゃ足りない兄さまも素敵ですっ」

「なんだろう、全然褒められている気がしない」


 そんなこと言いつつも、しっかり願い事をしているのか、祈っている間はこの二人も普通に静かだった。


「で、願い事はしたのか?」


 列から離れると、俺は二人にそう問いかけた。

 別に願いの内容が知りたいわけでは無いが、この二人にもそういう願望あるのかなぁとかいう、ちょっとした好奇心だ。


「んー、まあ一応しましたわ。期待はしてないけれど」

「私は兄さまとずっと一緒がいいですってお願いしましたっ!」

「そっか、アイネは可愛いなぁ、よしよし」

「あー。わたくしもそんな感じですわ?」

「ふうん」

「なんでわたくしに対してだけ態度が違うんですの?!」

「なんかアイネに乗っかっただけっぽいから」

「んなことねぇですわよ。実際『金輪際わたくしとユウキの邪魔をする者が現れないでほしい』ってお願いしましたわ?」

「なるほど、若干棘のある願いだが、確かにそう言われればアイネのに似てるな」

「でしょう?」

「うん」

「いや、だからなんでわたくしには…………。あぁもうっいいですわ!」

「な、なんだよ」


 なんでコイツ怒ってんだろう…………。まさか。


「撫でて欲しいとか?」

「ぐっ……この男、マジでデリカシー無いわね」

「そうならそうと言ってくれたらいいのに」

「い、言いにくいでしょう……そのっ。いい年して撫でて欲しとか……」

「まあ百超えてるしなぁ」

「……あんたホント殴るわよ?」


 俺が要らん事言った所為か、シュエリアが軽くこぶしを握っている。

 ……軽くでも痛いんだよな。コイツの殴打。

 と、いうか。コイツ普通に抱き着いてきたりはする癖に、なぜそこで恥ずかしがるかな。


「ま。そういわずに、ナデナデ」

「ぬっ…………。うぅ…………。…………も、もういいですわっ」

「ん? そう?」

「にゃー私はもうちょっとお願いしますっ」

「ん、りょーかい」


 まあ、正直撫でるくらいなんてことはないし、いくらでも撫でた居たいくらいなんだが、俺のそんな感情とは無関係に、流石にちょっと目立ち過ぎているかなぁとも思う訳で。


 というのも、この二人、いつもは余り人ごみに出ないから関係ないのだが、人の多い場所だと兎に角目立つのだ。

 ただでさえ人目を惹くルックスをしている美少女の二人が、俺みたいな男に抱き着いて、頭を撫でて欲しいと迫る絵面。

 なのでまあ、こんなん目立たないわけがないわけで。周りからの視線が凄く気になる。特に男女によって違いのある視線に含まれた意志というかそういうものが気になって仕方ない。

 男性からは妬ましい物を見るような視線を送られている気がするし、女性からは女の敵を見るような目で見られている。

 まあ……両手に花だしな……それでいて撫でてるしな……人前でこんなんしてたら見られますよね、うん。


「で、ユウキ」

「ん?」

「いつまでアイネ撫でてんですの」

「良いって言うまで?」

「ふうん」

「……シュエリアももうちょい撫でていい?」

「…………まあ、どうしてもと言いうなら」

「じゃあどうしてもで。なでなで」

「ん…………ふぅ…………」

「にゃー」


 ……うん、これ止めらんない奴な気がしてきた。

 このまま行くと周りから見世物だと思われかねない勢いで見られているので、流石にそろそろやめておくか。


「アイネ、そろそろいいか?」

「にゃ。そ、そうですね、このままだと一日終わっちゃいますっ」

「そんなに撫でてもらう気でいたのか」

「流石にわたくしもそこまで撫でられたら嫌ですわよ?」

「えっ、でも私は兄さまになら一年中撫でて欲しいですっ」

「…………。アイネホント可愛いなぁ」

「出た出た猫バカ」


 溜息を吐きながらそういうシュエリアだが、怒っていたりとかではないようだ。呆れたようではあるが。


「そんなことよりほら、出店回りますわよ」

「お、おう」

「ごはんですっ?」

「まあ、ご飯も、かな」


 実際飯になるものからおやつのようなものまで、様々なものがあるし、中には食じゃない物もあるからなぁ……まあこの二人だと大半が食になりそうだが。


「たこ焼きいいですわね」

「綿あめがいいですっ」

「はいはい、両方買いますよ」


 シュエリアとアイネは早速食べたいものが決まっていたようなので、二人の注文通りの物を買ってくる。


「はいどうぞ」

「ありがとうございます兄さまっ」

「…………」

「どうしたシュエリア」

「あ、いえ。なんていうか、出店って同じ物売っている店があったりするわよね」

「ん? あー、まあ。たこ焼きとか焼きそばとか、綿あめも、同じ種類で別の店出てたりするよな」

「なんか違いあるんですの?」

「……さあ? 稀に値段が違ったりするけど、大抵は同じだしなぁ」

「そう、そうよね。不思議ですわねぇ」

「もふもふ」


 確かになんで同じ店が並んでるんだろうな、まさか出店で食べ比べとかもしないだろうし……。


「まあ、正直どうでもいいんだけど」

「いいのかよ」

「ちょっとした好奇心ですわね」

「わからなくもないが」

「もぐもぐ」


 俺とシュエリアの話にあんまり興味ないのか、さっきからずっと綿あめに夢中のアイネが凄く可愛い。


「あんた何ニヤけてんのよ、キモイですわ?」

「いや、アイネ可愛いなぁって」

「よくわたくしの前でアイネにだけデレデレできますわね」

「アイネにだけと言われても……そもそもシュエリアとアイネは可愛さのタイプが別だからなぁ」

「へえ。どう違うんですの?」

「んー。アイネは見た目と挙動が常時可愛いタイプ」

「わたくしは?」

「発言や行動がふとした時に可愛くて萌えるタイプ?」

「なんでわたくしだけ疑問形なのよ」

「俺も未だにシュエリアの可愛さに関しては理解しきれていない部分がある」

「それってどうなんですの……」

「どうなんだろう……」


 実際、シュエリアは結婚したいくらい可愛いのだ。

 こう、何とは言い難いが、一緒に居て凄く楽しいし、ふとした瞬間爆発的に可愛い気がするし。

 でも説明付かないんだよなぁ。具体的にどう可愛いかと言われると……。


「まあいいですわ。アイネみたいにペットを愛でる風にされても、それはそれでわたくしの求めているモノとは違う気がするし」

「いや、ペットを愛でると言うより、妹をって感じなんだが」

「どっちも似たようなもんですわ」

「そうか?」

「そうですわ」

「にゃ?」


 なんか違う気もするんだが……、あながち間違ってもいないような気もするので、何とも言い難い。


「ま、いいですわ。ユウキが猫バカでアイネ大好きなのはいつものことだし」

「猫バカではなく愛猫家と言ってくれ」

「それ何か変わるんですの?」

「いや、何も」

「じーっ」


 ん? なんかすごくアイネに見れられている気がする?


「どうしたアイネ」

「兄さまってすぐにシュエリアさんとイチャイチャしますよねっ」

「してないが」

「してないわね?」

「いつもいつも仲良しじゃないですかっ、皆居ても二人でお喋り始めちゃうしっ!」

「……気づくとそうなってるんだよなぁ」

「不思議ですわよねぇ?」

「その感じですっ!」


 その感じって、どの感じだろう。


「息の合った夫婦感が凄いのですっ」

「うーん、そんなことないと思うが……」

「どっちかというと相方みたいな感じですわね」

「あー、わかる」


 言われてみると凄くそんな感じがする。相方っていうと凄くしっくりくる。


「つまり夫婦漫才かしら」

「なるほど、そんな感じか?」

「あながち間違ってもないですっ」


 なるほど、こういう感じなのか。

 俺とシュエリアは周りからそう見られていると。


「夫婦仲がいいのはとってもいいことなんですけどっ。もうちょっと周りも気にしてくださいっ」

「まあ、そこはハーレムの主たるユウキの手腕ですわね」

「と、言われてもなぁ……」


 気づくとシュエリアとばかり話しているのは事実だが、これって俺の所為なのか?

 どちらかと言うと積極的に仕掛けて来る阿保エルフの所為だと思うんだが。


「まあ、極力気を付けてみるか」

「でも結局わたくしとばかり話してしまいそうだけれどね?」

「……ふむ…………」

「? どうしたんですか兄さまっ」

「いや、敢えてシュエリアを無視すればなんとか会話の頻度を減らせそうだなぁと」

「意図的に本妻無視するって発言しやがったわねこの駄亭主」


 どうやらこの案はお気に召さないらしい。

 しかし一々コイツの相手してたら確実にコイツとばかり話すことになりそうだ。


「ま、まあ……そこまでしなくてもいいんですがっ」

「んー、難しいな」

「もういっそ他のメンバーもやたらユウキにちょっかい出せばいいのよ」

「ふむ」

「そして兄さまが処理しきれなくなるわけですねっ」

「目に浮かぶようだな」

「ですわねぇ」


 ハーレムで皆とバランスよく仲良くするのってもしかしなくても凄く難しいのでは。


「自分で言い出してなんですが、無理な気がしてきましたっ」

「そ、そうだな」

「まあ、無理に考える必要もないわよ。なんだかんだ皆仲良くやってますわ?」

「確かに」

「ですねっ」


 うん、なんかいい感じに纏まった(?)気がするし、この話はここでやめておこう。

 考えれば考えるほどよくわからんことになる気がしてきた。


「さて、そんなことよりですわ」

「ん?」

「次は何食べようかしら」

「んーそうだな」


 俺としては出店があるならベビーカステラを必ず食べておきたいところだが、逆にそれ以外に食いたいものってあんまりないんだよな。


「アイネは何かあるか?」

「ないですっ」

「綿あめだけでいいのか」

「はいっ」

「で、シュエリアは?」

「片っ端から食べようかしら」

「自腹でな」

「……デートなんだから奢りなさいよ」

「片っ端から食おうという奴に奢る気にはなれん」


 アイネは遠慮しているのか、はたまた満足したのかはよくわからないが、綿あめだけでいいと言うが、なんかそれはそれでちょっと勿体ない気がする。せっかくだからもっと甘えてくれていいんだが……。

 まあ、シュエリアの阿保は甘え過ぎだが。


「本当に奢る気はないんですの?」

「片っ端からでなければ奢るが」

「じゃあ一つ飛ばしで――」

「そういう問題じゃねぇ」


 どんだけ食い意地張ってんだこの阿保は。


「てか、そんなに食えないだろ、お前」

「残ったら持ち帰って食べますわよ?」

「ここぞとばかりに集ろうとしているだけだなお前」

「仕方ないですわね、じゃあ半分は分けて上げますわ」

「あれ、全然譲歩されている感じがしない」


 自分で買った物を半分貰ってもあんまり嬉しくないのは俺だけ?


「はー、ユウキからかうのって楽しいですわね」

「からかわれてたんですか俺」

「ですわね?」

「よく臆面もなく言う」


 この阿保マジで一回しばいてやろうかな。


「さて、ユウキ」

「ん?」

「飽きましたわ」

「おぅ……」


 飽きたって……コイツまだたこ焼き食って駄弁っただけじゃん。


「兄さまっ」

「どした、アイネ」

「飽きましたっ!」

「こっちもか!」


 どうやら二人とも、食べたいものを食べたら飽きてしまったようだ。

 まあ、初詣って特段やることないしなぁ……いや、人によるのかもしれんが。


「うーん……帰る?」

「ですわね」

「はっ……お家でイチャイチャしたいですっ」

「ん。じゃあそうするかぁ」


 こうして、俺達の初詣デートは小一時間ちょっとで終わってしまったのであった。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は金曜日です。

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