カードのお話ですわ
「なんでヴァイスシ〇ヴァルツじゃないんですの?」
「意味が分からん。ドロー」
いつも通りの昼時。
俺とシュエリアはテーブルを挟んで向かい合い、カードゲームに興じていた。
やっているのはウ〇クロスである。
「ルリグでアタック」
「なんでヴァイスシュ〇ァルツじゃないんですの?」
「ウィク〇スだからだよ」
二度目の意味の分からん質問に仕方ないので答える。でないと一生同じことを言い続けそうだ。
「ふむ。ヴァイスだったらわたくし達も参戦できる可能性があるのになんでウィク〇スなんですの?」
「お前自信過剰甚だしいな。参戦できねぇから」
アニメ化とかされて、ようやく参戦できるか否かという舞台である。俺達には縁遠い話だし、何より何の話だ、これ。
「できますわよ。わたくしとかほら、若草色の髪とか緑のカードになりそうじゃない?」
「はあ」
「トモリは青、アイネは黄色、シオンは赤、ユウキは緑ですわね」
「妄想が膨らんでるなぁ」
「私は?」
「アシェは要らないですわ」
「ひどっ?!」
「ひでぇな」
さらっと出てきたアシェには要らないとか言ってしまうシュエリア。
酷いもんである。同じハーレムの仲間? なのに。
「んもう。じゃあアシェは赤ですわ」
「髪色赤いからなぁ」
「わかりやすくていいわよね!」
シュエリアに色指定されたのが嬉しいのか、安直な色分けにも素直に従うアシェ。
ちなみに彼女は向かいの義姉さんとヴァ〇ガード中だ。
「私はなんで赤なんだろう。シュエちゃん?」
「イメージ浮かばないけど色分けしないといけない気がしたから赤を任せましたわ」
「うわぁ。すごく雑な理由だよ」
シュエリアの語った適当過ぎる理由に苦笑いの義姉さん。
どうやらライド事故したアシェに容赦なくアタックを仕掛けているようだ。
「スタンド&ドロー……俺が緑なのはなんでだ?」
「それはわたくしの伴侶だから、同じ枠組みなだけですわ」
「ルリグの起動効果発動な。って俺はお前のおまけか」
「えぇ、いいですわよ。おまけというか、付録かしら」
「それをおまけというんだろうが」
まあ、かといって自分が何色とか、そんなこと考えたこともないので、特段否定する理由もないのだが。
「っていうかこれで終わりだな。ルリグでアタック」
「むぅ……また負けですわ。ユウキ、たまには彼女を勝たせてあげるといいんじゃないかしら」
「手加減はしない主義だ。ていうかされても嫌だろ?」
「むむぅ……それはまあ……そうですわね」
シュエリアは俺の言葉に渋々納得しつつ、カードをケースに戻し、プレイマットをしまいだした。
「というわけで、今日はカードの話がしたいですわね?」
「どういうわけかはわからんが、いいぞ」
まだヴァイスなら自分は何色かっていう話しかしてないけど、まあ、その流れということなのだろう、多分。
「で、カードの何について話すんだ?」
「そうですわね。運ゲー要素についてかしら」
「大丈夫かそれ」
カードゲームで恐らく、最も触れてはいけないワードではないだろうか。
「勝ったら実力、負けたら運がカードゲームの基本として」
「基本からおかしいな? お前カードゲームなんだと思ってやがる」
「勝ったら実力、負けたら運でしょ?」
「最低か」
カードゲームじゃよく聞く言葉だけど、本質的にカードゲームをそういう風に見ていて楽しいだろうか、どうかな。
「嘘ですわ。本当は勝っても運ゲー負けても運ゲーだと思ってますわ」
「それはもっと酷いのでは」
まあ実際、事実としてカードゲームに運の要素は付き物であり、そこを含めて面白いバランスを取れているかが肝心でもあると思う。
カジュアルならより運の要素を強めに、逆なら運の要素は控えめになるような調整が主流だろうか。
どちらにしても運の要素は必ず入ってくる物なので、そこを運ゲーと一括りにしてしまうのはゲームの本質を否定しかねないと思う。
「まあ事実って口にしちゃいけないこともあるもんねー」
「ヴァンガとかガチ運ゲーだものね」
「義姉さんの言葉の後に今の発言をできるあたり流石としか言いようがないわ」
義姉さんの後に続くアシェの恐ろしい爆弾発言に魂が震える思いだ。
この作品の読者にヴァン〇ード愛好家が居ないことを祈りたくなる。
「そこを含めたカジュアルさとカードのイラストのカッコよさがヴァンガードの楽しみだと思うけどな」
「そもそも子供向けのわかりやすいルールと単純かつ戦略性もあるバトルが面白いところよね。まあわたくしヴァンガしないけど」
「見てる分には運の要素がどう傾くかハラハラするいいゲームだよな」
「アニメとかにするにはいいルールよね。トリガーチェックとか、それでゲームの流れを一気に変えられるから話作りによさそうですわ」
ヴァンガ〇ドのアニメみたことないから「よさそう」という表現なのだろうが、まあ実際敗因として手札事故することもあればそれこそトリガーで勝敗決まることもあるしな……。
「アニメと言えばカードゲームなら遊〇王だよなぁ」
「いいですわよね、遊戯〇。アニメオリジナルのカード効果とかすっごく多いけど」
「まあそうだな。実際のカードと比べると効果違いすぎたりするのも面白いけど」
「バーサーカーソウルとかよね! 知ってるわ!」
「ですわね」
あれも結構アニメは長いがあまり手札事故とかが描かれていないのが特徴的だと思う。
なんだかんだ巧いことカードが回ってお互いにいい勝負をするのだ。
実際に遊〇王をやるとあぁ上手くはいかないもんである。
「あと、カードゲームと言えばマジック:ザ・ギャ〇リングとデュエルマ〇ターズですわね」
「確かにTCGといえばギャザのイメージだな。そしてデュエマは元々ギャザが題材の漫画だったよな」
「そうなんですの?」
「あぁ……作品の題材がデュエマになったのは途中からだな」
「ゆう君相変わらずそういう無駄知識はあるよねぇ」
「無駄とか言わないでくれる?」
「でも実際無駄よね。ひけらかしているようにすら見えるわ!」
「ひでぇ言われようだな」
別に無駄じゃない……と思う。いや、無駄か。
でもその無駄知識をひけらかしているつもりはないんだけどな。口の悪いアシェの言う事だと思って気にしないでおこう……。
「カードゲーム……というよりTCGっていうべきかしら。TCGって基本的にインフレを起こしながらカードが増えていくじゃない?」
「ん? まあ、そうだな。基本的にそうしないと環境も動かないし、売れないだろうしなぁ」
「そうだねぇ。でもそこでゲームバランスを壊し過ぎると大変なことになるんだけどね」
「大変な事って何?」
「ガンダ〇ウォーだな」
「ガ〇ダムですの?」
「あぁ。あれは最後の方に出た新ルールで色々説明付かないことが増えた上に最終的にゲーム終了したからな」
「まあ直接の原因ではないとは思うけど、ユーザーから快く思われない出来事ではあったよねぇ」
「へぇ……そういうのもあるんですのね」
「ルールが複雑なゲームだったしな。色々矛盾するところとか、公式が説明できないことが増えてきてたのも事実としてあったから、終わりは見えてたけどな」
「いいゲームだったんだけどねー」
俺と義姉さんはあのゲーム好んでやってたな。
主に俺がガン〇ム好きで初めて、義姉さんがそれに合わせて始めたんだけど、思ったより義姉さんが気に入って一緒に楽しんでたっけ。
と、懐かしんでいるとシュエリアが話を切り返す。
「ガンダ〇ウォーもわからないけれど、結構知らないTCGってありますわよね」
「そうね! 私もユウキがやってるの見るまでTCG事態知らなかったし」
「まあ俺も全部網羅してるわけではないしな。新しいゲームも増えてるとは思うけど、そういうの、知る機会がないと中々踏み出せないんだよな」
「カードゲームの専門誌とかあるから、そういうので情報仕入れてたらまた違うのかもね?」
「そうかもな」
確かにカードゲ〇マーとか読んでたらまた違ってくるのかもしれない。
「そういえば、ユウキってTCGは誰と遊んでたんですの?」
「ん? 誰って?」
「だってユウキ、ボッチだし。わたくしと出会うまでそういう相手、いなかったでしょう?」
「勝手に決めつけないでくれる?」
「いたんですの? プレイする特定の相手」
「……いないけど」
「でしょう?」
確かに特定の誰かとプレイしていたのはガンダ〇ウォーやってたころに義姉さんとしてたくらいで、他のゲームは別に特別誰とやっていたというわけではなく、半分くらいはコレクションだったな……。
「まあでも、店舗でフリープレイとかやったり、店舗大会とかは出てたぞ?」
「へぇ。店舗大会ですの?」
「あぁ。結構面白いもんだぞ。特にヴァイスなんかは皆作品愛を表現しているかのような環境だしな。アニメとかの話で盛り上がることもあるくらい空気がいい」
中にはそういうのが始まりで友達出来たりとかする人もいそうなくらいには環境がいいんだよなぁ……しろくろフェスとかいい思い出が多い。
「ふぅん。その言い方だと他のゲームは空気悪いんですの?」
「え。あぁ……まあ、物によってはガチ勢が多くてそういう意味で笑えない空気が漂ってたりはするな。皆真剣だからカリカリしてたり」
「遊びですわよね?」
「真剣にやるから面白いんだろ。遊びは」
「……ですわね?」
俺の言葉に同意の意思を示すシュエリアと何の話かついていけてないアシェと彼女に説明をする義姉さん。
アシェは特に『ガチ勢』がわからなかったようで、そこを説明しているようだ。
「なるほど……遊びに本気になるのはシュエリアっぽいわね!」
「わたくしはエンジョイ勢だと思うけど……」
「まあ確かにシュエリアはガチで楽しむこと優先だよな」
行動の理由に面白いか否かが関わってくるあたりが特にそうだ。
「まあいいことだよな、楽しむの」
「そうですわ? 何事も楽しんだもの勝ちですわ。カードゲームだって運ゲーと言っても、楽しめるか楽しめないかは人それぞれ。なら楽しめる方がお得ですわ」
「かもな」
実際カードゲームはやっていて楽しいし、自分の能力だけでどうにもならない展開があるからこそ楽しい部分がある。
それがカードゲームの魅力だと言えるだろう。
まあ、それを楽しめるかはやっぱり人それぞれだろうが、そうでなくても他の魅力を感じている人だっているかもしれないし……。
「うん、いいな。カードゲーム」
「あら、話をまとめに入ってますわよコイツ」
「まて、その言われ方は酷く遺憾だ」
別に話をまとめようとしたとか、終わらせようとしたわけでは無い……。
ないのだが……話すよりカードやりたい気分だし、今日の所はそろそろ話題がなさそうなのも事実だと思う。
まさかカード一枚一枚の詳細な話はできないしな……色んな意味で。
「まあ、いいけれど。わたくしもそろそろ話し飽きてカードゲームに戻りたい気分だし」
「シュエリアもか」
「えぇ。話しているとやりたくなるわよね?」
「そうね!」
「そうかもね~」
そう話ながらも皆、対戦相手を変えるため席を移動する。
こういうところはカードゲームでも対面して遊ぶTCGあるあるな気がする。すごく地味だが。
そういう意味ではこういった観点で見たTCGのよくある話とか、しても面白いかもな。
「今度してみよう」
「あら、何か新しい戦術でも思いついたのかしら」
「いや、こっちの話だから」
「そう?」
そう言ってシュエリアはアシェの対面に座る。カードゲームはヴァイスのようだ。
ちなみに義姉さんは俺の対面。カードゲームはヴァン〇ードだ。
「それじゃ、ゲームスタートですわ!」
シュエリアのその掛け声で俺と義姉さんもヴァ〇ガードを始める。
こうして、俺達のカードバトルはアイネとトモリさんがスタバから帰り、夕食になるまで続いた。
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