褒められて伸びる? ですわ
「第一回、お互いの良いところ褒めよう会~!」
「なんだそれ」
いつもどおりシュエリアの部屋を訪れると。すでに俺以外のメンバーは集まっており、そして謎の会が開かれようとしていた。
お互いを褒める会? なんだそれは。
「たまにはお互いの良いところでも褒めあってみようという会ですわ」
「ふむ」
なるほど、どういうものかは分かったが、なぜ今。とか、タイミング的に俺を待ってたのかとか、色々気になるが……。
「まあいいか」
「何がですの?」
「色々」
「そう」
気にしたらキリがない気がしたので、やめた。
「じゃあ、始めますわよ」
そういってシュエリアはくじのようなものを取り出した。
「これを引いて、順番を決めますわ」
「なぜ」
「褒められたから褒めるって形になると、微妙に不公平だと思ったからですわ。あくまでも、順番だから仕方ないという形にしたいわけですわね」
「なるほど」
まあ、言わんとしてることはわからなくはないが、別にどっちでもいい。
最初から思ったことしか言わないつもりだ。褒めてもらったから捻出するなんて、そんなことはない。
「それじゃあくじ、引いていいですわよ」
「おう」
俺は返事こそしたもののくじを引くのは一番最後にした。レディーファーストもそうだし、残り物には福があるかもしれない。
という体で、面倒だから最後に引いた。
「一番か……」
「ユウキが一番最初ってめずらしいですわよねえ」
「そうかもな」
こうやって集まると、大体俺がまとめとかオチとか締めを担当している節がある。
なので、こういうのは珍しいかもしれない。
「で、誰から褒めればいい?」
「そこは自由でいいですわよ」
「そうか。じゃあシュエリア」
「ん」
俺はとりあえず、嫁から褒める事にした。
特に大きな理由はないが、なんとなく、俺の語彙力的にいい言葉が残ってそうな内に、言っておこうってのが理由だ。
「顔がいい、歌がうまい、一緒にいて楽しい」
「箇条書きですの?」
「そういうつもりではないんだが……」
俺がいいところを並べてみたら、箇条書きっぽいと言われてしまった。
かといってストーリー仕立てにもできない、困ったな。
「とりあえずよしとはなりませんかね」
「別にいいですわよ。わたくしは」
「そうか」
ならよかった。他がいいとは限らないが。
「次アイネ。可愛い、凄く可愛い、超かわいい」
「えっへんっ!」
「なんで今ので嬉しそうにできるのか疑問ですわ」
俺のマイナーチェンジした可愛いを三つ並べただけの誉め言葉に、胸を張って喜んでくれるアイネ。可愛いなあ。
「次、アシェは……」
「私は?」
「…………エロい」
「それ褒めてる?」
ヤバい、此奴の良いところ全然出てこなくてびっくりした。
そしてギリギリで出てきた言葉も、結構ひどいものだった。褒めてるかと言われると、わからないのが本心だ。
「一応……いい意味で?」
「そう。まあ、エロいのはいいことよね」
「そうだろ?」
「えぇ、でも、それって意味違くない?」
「……うん」
俺が言ったエロいは、アシェに性的な興奮を感じるという意味ではない。では何かと言われたら言動が下、という意味である。
「すまん、あとは顔がいいくらいしかない」
「それでいいわよ……一応ね」
何とか許しをもらったけど、あれ、褒めるのって難しくね。
「次は……トモリさん」
「は~い~」
「トモリさんは、一緒にいて落ち着く、美しい、スタイルいい、実は一番常識人」
「あら~」
トモリさんはこれで一番まともな人なので、凄く褒めやすかった。
「ユウキ、スタイルいいはセクハラじゃない?」
「トモリさんも嫁だからいいんだよ」
「そう……?」
そうだということにして欲しい。うん。
「で、最後に義姉さんは……美人、金持ち、頭いい」
「ゆう君に褒められると嬉しいね?」
「その割にはなんか微妙そうだけど」
「そんなことないよ? ただまあ、良く言われるなあって」
「あぁ……」
まあ義姉さんの場合は言われ慣れているだろうな。うん。
「さて、それで、今度は俺以外が褒める番だよな?」
「ですわね?」
ということで、次は、誰だ?
「次はアイネですわ」
「はいっ」
アイネか。うまく褒める事ができるのだろうか?
「まず兄さまですがっ」
「お」
最初から俺か。あとがつらくならないといいんだが。
「兄さまはっ――」
「アイネ、一つだけですわ」
「うっ?」
アイネが俺のことを褒めようとしたとき、シュエリアから妙な提案があった。
「なんででしょうっ」
「永遠に続きそうだからですわ」
「にゃっ」
あぁ、なるほど……。
アイネは俺になついてるし、永遠は言い過ぎにしても長くなりそうではある。
それでこの提案というわけだ。
「じゃ、じゃあっ――い、イケメンですっ!」
「だいぶ一言にまとめましたわね」
イケメン、イケてるメンズ。なるほど。その言葉に誉め言葉のすべてを託したわけだ。
「アイネは可愛いなぁ」
「はいはい、妹バカ乙ですわ」
さて、でもこれなら、後を褒めるのも楽だろう。
何せ俺に対してイケメンとしか言ってない。これなら後が漠然としてても俺にもそうだったと言い訳がたつ。
「シュエリアさんは美人、アシェさんは天才、トモリさんはお胸がおっきいですっ、姉さまは愛に満ちてますっ」
「うん、頑張ったな」
「はいっ」
「頑張られるのも嫌ですわよ?」
頑張らないと褒めるところが出てこないってのも、まあまあ失礼な話だ。
でもまあ、いいだろ。可愛い可愛い。
「じゃ、次、ですわね」
「わた~し~ですね~」
今度はトモリさんの番か。どんな言葉が出てくるのか。
「こほ~ん~……ゆっ君は常識人、シュエリアさんは奇人。アシェさんは天才でシオンさんは文武両道。アイにゃんは親友です」
「ずっともですねっ」
「です~」
なるほど、アイネには特別親しい感情があるようだ。
で、俺は常識人ね、普通なら褒め言葉にならないが、このメンツだと褒められてる感がある。
シュエリアはどんまいだが、アイネに続いて、トモリさんもアシェを天才とみるか。
どうなってんだ?
「次はシオンですわね?」
「うん。お姉ちゃん的にはね、シュエちゃんは面白い子で、アイちゃんは可愛くて、トモちゃんはスタイル良くて、ゆう君はイケメンで、アーちゃんは天才かな」
「え、また?」
なんで義姉さんまでアシェを天才だと?
ま、まあ、頭の回転早いヤツではあるが、シュエリアほど才能の塊という感じはしない。
なんでだ?
「次はわたくしですわね?」
「お、おう」
「わたくしとしては、ユウキは面白い男。アイネは面白い猫。シオンは面白い変態で、トモリは面白い魔王ですわね。アシェは……頭いいですわよね」
「お前もか」
シュエリアもシュエリアで天才とまではいわなかったが、アシェの頭脳を認めているようだ。なんでだ?
「最後、アシェですわ」
「私ね。シュエリアは胸の形がよくて、アイネは感度良くて、トモリはスタイル抜群で、シオンは巧くて、ユウキはデカイわ」
「おい、この阿保だれかつまみ出せ」
「何よ、褒めたでしょ?」
「何を褒めてんだよ……」
阿保にもほどがある。なんで全員そっち系を褒めてんだよ。
「「「「やっぱり頭いい」」」」
「なんでそうなる?」
四人そろってアシェの頭脳を称える。なぜだ……。
「そこまで丁寧に下のことだけで褒められるって一種才能ですわ」
「ですっ」
「頭の回転はやはや~」
「だねぇ」
「えぇ……?」
それでいいのか?
まあ、でも、いいか……めんどくさいし。
「ということで、第一回褒め会は終了ですわ!」
「次回はまともなメンツでやりたい」
「あら、次回希望するんですのね」
「やるなら、な」
と、言うわけで。
俺たちのお互いの良いところを褒める会は、ホント何の意味もなく、終わった。
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