風呂はやっぱり
今日は衛生管理のためと決めた風呂の日。
脱衣所で楽団の話をすると「あ!」って顔をした。よしよし、みんなもおれと同じレベルだ。
「大きい街っすかぁ。歩いていけるんすかね?」
「雇うなら何人単位からいけるんでしょうか、今の作ってる曲せめてドラムとギターがほしいところです」
「んー、おれもまだよく分かってないんだよね。このあとモゴック爺に話を聞きに行こうよ」
「そうだな。なんにせよ、新しい選択肢ができたのはよかった……洗髪いってくる」
「あ、ぼくも行きます。夜尾さん、お小遣いください」
演奏環境があることにホッとしたのか、表情もあかるく風呂場で思い思いに過ごしだす。ふだんから混んでなかったけど、騎士団がいなくなったから余計に広々してみえるな。
ミヤはお気に入りの湯船があるようでそちらへ向かったが、おれは湯加減がとにかく重要。ぬるいとおっぱいが生えちゃうからね。空いてる盥に手先をつけて温度を調査。真剣に選ばざるをえない。
快適な温度の盥をみつけて入る。
「よっこいしょ」
ううむぅー気持ちいいー……
お風呂って体がほぐれる感じがしてたまらない、沸き立つ湯気もいい感じで、まわりに人がいても気にならないし、家にほしい。
首を盥にのせてじっくり辺りを眺めているとだんだん瞼が下がってきた。
(あーやべ、寝そう……)
…………。
気をつけていたのにちょっと油断して目を閉じたら、そのまま溶けるみたいに寝ちゃったようだった。
「夜尾、夜尾……でいいんだよな?」
ペチペチと頬を叩かれて目を覚ます。
目が覚めると盥につけてた後頭部がやや痛い。頭を載せてた負荷がかかりすぎたみたいだ……
後頭部に手を当てようとして気づいた。
「おお灯富サンキュー、おれ寝て……あ?」
かなりぬるくなった湯船。
自分の手に触る長い髪の感触。
気まずそうな顔の灯富。
おそるおそる視線を下へむける。
「………やったわ」
「最初に気づいたのが俺で良かったよ、早くくしゃみを」
「ヤオさーん!アカスリのお代くださいっすー」
能天気なミヤの声に、おれと灯富は一瞬動きがギクッと止まった。
「はっ、早く……!」
「うおお!やばい!」
「ヤオさーん?」
ずんずん近づいてくる気配と声。とっさに灯富が盥の前に立ちはだかりおれを隠してくれる。
(わあ、おっきい背中)
じゃない!はよ、早よ……!!
顔面にお湯をかけて鼻に刺激を与えてみるも不発!
(太陽……!)
前回もおなじシチュエーションのとき太陽を見て難を逃れたんだ。今回もそれでいけないか!?
「ンぅうう……っく」
「夜尾、早くしてくれ…っ」
無理! 灯富がせっついてくるが無理。だって今日曇ってるもん。
「あれ、ヒーさん」
努力むなしくミヤが灯富の前まで来てしまった。灯富の背中に隠れて気配を消すおれ。
ただ立ってるだけの灯富をみて首をかしげるっぽい。
「何してんスか?」
「ふ、ふくらはぎを鍛えているところだよ。立ったまま意識するだけでも効果があるんだ」
「ふくらはぎっすかーまたムキムキになりますね!」
「ああ。まあな」
ヤバい、コミュ力の高いミヤが話を盛り上げかけてる!
「み、宮林は何をしてるんだ?」
「あっそうだ、アカスリしたくてお小遣いもらいに来たんす、ヤオさん見なかったっすか」
「こ、こっちには居なかったな」
「っすか、あざーす、あっち探してみます!」
ナイス!ナイス灯富!
めちゃくちゃぎこちなかったけどミヤは退けられた!
「……っくしゅん!」
いよいよ冷えた湯の中でやっとくしゃみがでてくれた。
誤字脱字報告ありがとうございます(^ν^)!助かります!!




