表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

08

 私は吠えた。長く遠く、主に聞こえはしまいかと、吠えた。


 もう二度と、届かないことを知っていて、吠えた。


『あしなが』達は、私を遠巻きにして近寄ってくることはなくなった。



 そこには、主の匂いが濃厚に満ちていて、目を刺す黒い煙がただただ痛く、苦しく、喉を灼いていったが、それでも私は立ち尽くしていた。


 そこに立って、ただ主が燃えるのを見ていた。冷たくなった物言わぬ主が、もう二度と私に命令することがないと、知りながら『待って』いた。


 やがて火は尽きて、骨となった主がチラチラと燃える埋み火の中から粛々と取り出されるのを、私はただ見ていた。



 白く、まろい、そのされこうべは、主のものではあったが、もはや主ではなかった。



 それでも、主は『待て』と言ったではないか。



 どうして私を置いていった。悲しい悲しいと笑いながら、どうしていつものように私を傍に置かなかった。どうして。どうして。



 悲しい。悲しい。



 喉奥から、堪えきれない遠吠えが、脳天を突き、焼けた喉奥からほとばしる。



 まだ『あの音』の意味も、最後に主が言い聞かせていった命令の意味も、教えてもらっていない。何を想って、私にその言葉を残して言った。主よ。




『さよなら』とは何だ。




『あいしている』とは、何だ!!





 まだ、その命令の意味を、私は知らない。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 何とも不思議な風合いのお話でした。 主人公が犬なのだとか『あしなが』が恐らく人間であろうことは想像できます。 でも、この物語の語られない背景についていろいろと考えさせられる作品でした。
2021/02/04 20:30 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ