↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/22

第22話 復讐の男、TM

しまさは、腹の出たスーツをだらしなく着た男へ向かって、静かに身構えた。

次の瞬間――。


「ドッ!」


10メートル先の距離を、しまさはたったの2歩で詰め、飛び込み突きを叩き込んだ。


「は、速い…」


アイリは、その異常な俊敏さに目を見張った。


「ドオーンッ!」


拳が男の腹に到達した瞬間、フロア全体に轟音が響き渡る。

しかし、その衝撃にも男は眉一つ動かさなかった。


次の瞬間、男の太い腕が振り上がった。


「ツカーン!!!」


しまさの身体は10メートル吹き飛び、床に転がった。

顔こそ無傷だったが…ほんの少しだけ、うんこを漏らしていた。


それは、プーラ王女から授かった禁術――

「全ダメージ腹集約法」 の副作用だった。肉体が受けるべきダメージを全て腹に集中させることができるのだ。

しかし、強すぎる衝撃を受けすぎると、一生うんこが漏れ続ける身体になるという恐るべき技である。


しまさはその男を睨みつける。

男は重々しく名乗った。


「俺の名前はTM。以前、お前の会社で働いていた男だ。」


「ま、まさか……お前、●田か!?」


「しまさ、知り合いなの?」

アイリは驚きに目を丸くする。


TMは、低く絞り出すように言った。


「――あいつは、俺のすべてを奪った男だ」


◆ ◆ ◆


――10年前。


「●田ぁ! お前のせいで一億円の仕事が飛ぶところだったんだぞ!」


「で、でも…社長がそうしろって…」


「俺がそんなこと言った覚えはない。」


理不尽な叱責は、日常になっていた。

しまさ社長の言葉は、朝令暮改なため信用できなかった。


だが●田には、守るものがあった。

大学へ行かせたい息子。

返済中の住宅ローン。

高い給料のためなら、どんな理不尽にも耐えられた。


そう、自分は思っていた。


「今から錦に迎えに来い」


「い、今からですか? 朝の5時ですけど!」


「来い。絶対だぞ。」


どんな無茶な命令にも逆らわなかった。

それが、しまさへの“信頼”だと信じていた。


――しかし、終わりは突然訪れた。


「●田。お前、使えないから今月で解雇な」


「代わりは○方だ」


「…え?。自分が役員になる話は?」


「役員の話? あれはナシだ。

 退職金は給料3ヶ月分に色つけてやる。ハングリーに生きろよ。」


60歳で突然の解雇。

同じ水準の収入の仕事など見つからず、

気づけば、建築現場で旗を振る日雇いの老人になっていた。


積み重なる疲労は限界を超え、●田は倒れた。

医者は告げた。


「あなたは…二度とラーメンを食べられない身体です。」


昔はスポーツマンでモテた自分が、

いまは腹の出た、冴えない老人。


すべては、しまさのせいだ。


復讐。その二文字だけを胸に、●田はTMに名前を変えて修行に身を投じた。

そんな様子を見かねた家族は俺の元を去った。


そして今。


「しまさ……お前を殺すために、俺は鍛え抜いてきた。」


アイリは凍りつき、しまさは拳を握り直した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。