命を賭して(5)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。
12歳という若さでの早すぎる死。受け入れがたい事実に直面した茅は、恋人の亡骸に縋って号泣し、柚は自分と彼女のためにも朔馬にリヴァイヴをかけるよう強く求めた。
が、翔馬はペガサスと入れ替わりすらしなかった。
前にペガサスが龍と未来に説明していたが、リヴァイヴはあくまで蘇生魔法であって、万能魔法ではない。寿命という運命づけられた死だけは、どんなに唱えても効果が無いのだ。
そして今、彼の寿命は終わりを迎えてしまっている。翔馬の中で調べたペガサスからの報告があったことで、彼は朔馬を生き返らそうとしないのだ。
そのことを突きつけられ、朔馬復活の望みを絶たれた柚は、絶望し涙を流す。
このまま感情に任せて泣き続けてもよかった。おそらく、誰も責めはしないだろう。
だが、目の前にいる茅が自分以上に泣いている。いつもは冷静沈着で、感情をあまり表に出さないあの茅が、人目も憚らずに泣き崩れているのだ。
それを目の当たりにして、柚の覚悟は決まった。
平静を取り戻して泣き止むと、涙に濡れる少女に元司令代理として、酷な命令を下した。
それは、今すぐブラック・ナイトの本部に戻り、スパイとして黒龍の動向を探って来ること。その際、彼らに疑われたら、『朔馬に無理矢理連れて行かれた』と嘘をつくようにとも。
柚自身、非情なことを言ってることは、重々承知している。しかし、ここで黒龍を止めなければ、黒蛇や朔馬らの死が報われない。そのためにも、茅には涙を呑んで潜入任務に就いてもらうしかないのだ。
その考えは、ちゃんと彼女の胸に届いていた。茅は涙を拭うと、1人の戦士の顔になって柚の方を向き直し、
「……了解。六道茅。これより任務を開始します……朔馬のこと、よろしくお願いします」
と言って、間者としてブラック・ナイト本部に帰っていった。全ては柚の期待と朔馬らの心に報いるために……
これで一安心。茅への期待感からそう思い、安堵の表情を浮かべる柚。
そんな彼女に雲雀は、念の為確認をとった。
「今の命令、覚悟を決めたととってえぇねんな?」
雲雀の問いに、柚は小さく頷く。
本音を言えば、今も黒龍に憧れてるし、逆らった後のことを考えると、怖くて震えが止まらない。
それでも、彼との戦いが避けられないのなら、せめて自分の手で彼を討たなければならない。それが、黒龍を慕い続けた自分にできる唯一のことであり、ケジメだから。
その決断に雲雀は強く共感した。自分も、1年近く前に同じ思いをしたから。
「せやな。柚……おっしゃ! ほなら、うちらがすべきことは決まったな。武文!」
「うん。そのためにも、まずは準備しないとね。蘇った亡霊を祓うための準備を。みんな。彼女から連絡があり次第、彼らと決着をつけるよ。いいね?」
武文からの号令に、全員が声を上げ、一致団結した。
龍は、黒龍という過去との因縁を絶つため。
柚は、散っていった仲間達の死に報い、憧れの人と永遠の決別を果たすため。
翔馬や武文達はそんな2人を支え、自らに降りかかる火の粉を払うため。
それぞれが想いを胸に士気を高めた彼らは、翔馬と大牙が作った不格好な墓に朔馬を埋葬し、必ず黒龍を討つことを彼の墓前で誓った。
全てが終わったら、ちゃんとした墓に黒蛇らの遺体と共に手厚く葬ることも約束して…………
涙の数だけ強くなれると言いますが、今の彼女達がまさしくそれだと思います。
あと、女は強しということも。




