殺し続けた感情(3)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。
昼食後のスキーは、合流した澪と雲雀の龍を賭けた競争や、はしゃぎすぎた朔馬が転倒し、雪だるま状態になって柚や翔馬らに笑われたりと予想通り賑やかなものとなった。
その裏で、奏は柚に背中を押される形で、龍と彼を愛する3人の女子に、自分も異性として龍のことを愛していることを告白。
薄々勘付いていた者もいれば、まったくの予想外で仰天した者もいたりと、反応は様々だったが、皆、彼女の想いに理解を示し、正式に奏も恋のライバルの仲間入りを果たした。
これで龍を巡る女性関係は、三角関係ならぬ五角関係となったことになる。
そんな進展や楽しみがあった時間もあっという間に過ぎていき、気付けば午後5時。宿に帰った一行は、スキーウェアから浴衣に着替え、海の幸をふんだんに使った豪華な夕食と宿のピアノを借りた奏の演奏を堪能した。
曲は、彼女が最も愛し得意とするショパンのノクターン第2番。高い表現力と正確な演奏で奏でられた甘美で切ない旋律が、その場にいた全員の心を魅了する。
さて、素敵な旋律に酔いしれた後に楽しむものといえば、いったい何か。答えはもちろん、宿の醍醐味ともいえる温泉である。おそらくこれは、どの国内旅行でも外せないものだろう。
なのに、龍がどれほど促しても、彼と同じ部屋の女子達は、不在の柚を除き、全員が『後で入る』の一点張りで、何故か行こうとしない。
まだ入りたい気分じゃないのかな? そう思い、無理強いするほどのことでもないと考えた龍は、自分だけ先に風呂に行くことを伝え、大浴場へ向かった。
と、自分を納得させようにも、どうにも腑に落ちない。柚がいなかったのは、久し振りに再会した朔馬らと歓談しているか、どこかで待ち伏せして甘えに来るかのどちらかだと想像がつくが、他の4人に関しては全く見当もつかないからだ。
何かサプライズでも考えているのか? あれこれ思案しながら廊下を歩いていると、翔馬と瞳と千代とバッタリ遭遇した。
「よう、龍」
「あ、翔馬君。それに早乙女さん達も。みんなも温泉に?」
「いや。さっき上がってきたところだ。そう言うお前は今からか?」
「うん。これから大浴場に」
正直に龍がそう答えると、何故か翔馬と瞳がニヤニヤしている。
疑問に思い訳を聞くと、朋美と3人で大浴場とは別にある絶景の露天風呂に入ってきており、そのお得感を知らずに行こうとしているのを翔馬達はせせら笑っているのだと、千代から聞かされた。
「フロントに予約をとらなきゃいけないけど、そっちの方がいいとあたしは思うよ」
「そっか……じゃあそっちに行ってみます」
「おう。そうしな」
そう言うと翔馬は、露天風呂までの行き方を口頭で説明した。
武文ほどではありませんが、何やら裏がありそうな予感がします。




