殺し続けた感情(1)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。
出だしこそあぁだったが、翔馬の寒いギャグを吹き飛ばすように、彼らは思いっきりスキーを満喫した。
子供らしくソリ遊びに興じる乙女。
雪の壁に激突し、瞳と武文に笑われる翔馬。
銀世界に華麗なシュプールを描く龍や柚達。
それらの裏で女同士の恋の鞘当てはあれど、皆、思い思いに楽しんだ。
しかし、これでもまだ序の口。午後からはスキースクールに通っていた3人も合流するため、楽しさもいざこざも、さらに増していくことになるだろう。
となれば、栄養補給は必要不可欠。スキー場に併設されたレストランで昼食をとることにした一行は合流し、雲雀と澪と奏と愛花と紫乃が場所取りのために先に店内に入っていった。
混雑する前に自分達も行こう。そう思った龍達残りの面々もレストランに向かおうとしたが、そんな彼らの前に思いもよらない人物が声をかけてきた。
「あ。柚姉ぇだ! こんなとこで会うなんて奇遇だな」
「え……? サク……君? どうしてここに?」
柚が『サク君』と呼ぶこの少年。彼は以前、黒蛇と共に綱手中学校を襲撃し、大牙と死闘を繰り広げた影の一員・藤堂朔馬である。
ちなみにあの時、龍は暴走中だったため、彼らがまともに顔を合わせたのはこれが初めてだ。
「どうしても何も、そりゃあ……」
そう言ってここにいる理由を朔馬が説明しかけたその瞬間、背後から現れた影が彼の後頭部を鷲掴みにした。そう。朔馬がいるということは、当然彼女もいる。
「堂々と出てきてどうすんの? 私達の目的を忘れた? 朔馬」
「げっ、茅……」
冷や汗をかいて顔を引きつらせた朔馬に対し、茅は手に電気を迸らせ、
「人のいうことを聞けないバカには、お仕置きしないとね」
と言い、容赦なく放電した。
二次元なら骨が見えかねないほど強力な電圧。見ていた翔馬や龍達は死んだと思い、合掌するが、茅とてバカではない。障害が残らないようにきっちりと加減している。
やがて放電が終わると、朔馬は膝から崩れ落ち、痺れた体を冷やすようにうつ伏せに倒れ込んだ。
「少しは頭を冷やした? バカ」
「す、すんませ~ん。てか、茅。流石にこれはやりすぎ……」
「自業自得でしょ? 死なない程度にやったから、文句言わない。それより……こうなった以上、隠れ続ける意味は無さそうですよ」
朔馬を立たせた茅が、振り向きながらそう言うと、彼女らの上司であるシュバルツが、建物の陰からバツが悪そうに姿を現した。
「……そのようだね。まったく……朔馬。あれほど気付かれないように隠密に行動しろと言ったのに、自分からバラしに行くなんて、どういう神経をしているんだい?」
「シュバルツさん!? どうしてあなたまで?」
「おおかた、私が本当に幸せに生きてるかどうか確かめに来たってところですね?」
柚がそう聞くと、シュバルツは正直に首を縦に振った。
過保護かつ過干渉なまでの親バカならぬ部下バカっぷり。対象である柚は呆れ返ったが、それぐらい彼らは彼女を大切に思っているのだ。
朔馬といいシュバルツといいバカとしか言いようがありません。




