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死獣神~死の書~  作者: 天馬光
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剛の拳 柔の技(2)

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。

 案の定、紅花は待てど暮らせど帰ってこない。もう6時間経ち、日も暮れかけてるというのにである。


「柔のオッサン。紅花さん、遅くないっすか?」


「だな。ま、おおよその察しはつくが」

 その言葉に大牙が疑問符を浮かべていると、十三の携帯電話が鳴った。


 どうやら彼はそれを待っていたらしく、すぐに画面を開いて確認すると、帝虎に紅花がGPSで双頭鳥がランタオ島の中心にある廃墟にいることを突き止めたと報告した。


「心得た」

 そう言うと帝虎は、スクッと立ち上がり、


「聞け皆の者! たった今、奴らの根城がわかった! よいな? わしらをなめきったあの大バカ者共に今度こそ目に物見せてやれっ!」

 と、発破をかけた。

 ドン直々の言葉に士気が最高潮に高まった構成員達が雄叫びと共に、ランタオ島に殴り込みをかける。


 それを見届け、十三も向かおうとしたが、1人、動かない男がいた。一連のことに納得がいっていない大牙である。


「おい、オッサン。さっき言ってたのって、まさか……」


「あぁ。お嬢さんは自ら囮役を買って出てくれたんだ。奴らはお前以外のことを全て把握している。だから、それを逆手にとったってわけだ」

 それを聞いた大牙は、十三の胸ぐらをグッと掴み、


「なんでそんなに平然としてられるんだよっ!? 紅花さんはあんたらにとって大切な人なんだろ!? そんな大切な人が囮になるなんて危険なマネをすんのを、よく黙って見過ごせんなぁっ!」

 と、怒りをぶつけた。

 そんな彼に対し、十三は一切表情を変えることなく冷静に反論する。


「……やっぱりお前は何もわかっちゃいねぇ」


「あぁ!?」


「平然となんかしてねぇよ。むしろその逆だ。帝虎さんも俺も、当然奴らも、お嬢さんを助けたくて必死になってる。こん中に『お嬢さんが死んでもいい』なんて思ってる奴は、1人もいねぇよ」


「だったら、なんで?」


「こういう時に熱くなりすぎてると、足下を掬われかねねぇからだ。柔道でもそうだろ? いいか? ボウズ。闘志を燃やすのは大いに結構。だが一方で、冷静さを失っちゃならねぇ。それができねぇ内は、まだまだ半人前だ」

 諭されるようにそう言われて、大牙は師匠の教えを思い出した。

 『明鏡止水の中で闘志を両立させろ』当時は子供すぎて理解できなかったが、今ならその意味がわかる。


 理解した大牙は、精神を落ち着かせつつ闘志を燃やすと、闘気で髪を白金色に染め上げた。


「……あぁ。あんたの言うとおりだ。やっぱあんたはすげぇよ。柔のオッサン」


「ふっ。急に変身するお前の方が、よっぽどすげぇよ。じゃあ行くか。大牙」


「オッス! 帝虎さん。いってきまーす!」


「うむ。吉報を待っておるぞ」

 見送る帝虎からそう言われた白虎は、十三と共に屋敷を出て、彼の運転する車でランタオ島へと向かった。

 紅花の決死の行動と十三の教えによって士気が最高潮になった白虎。

 今こそ殴り込みの時です。

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