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死獣神~死の書~  作者: 天馬光
12/110

綱手の風フェスタ(2)

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。

 そんな翔馬の異変をよそに、3年生の劇が幕を開けた。



 物語は宙ら現代のバンドマン役が、オープニングテーマ代わりの演奏をするところから始まる。

 俗に言う今時のJ-POP。英語混じりでアメリカかぶれとも言えるその曲に、バンドのファン役である美夜らは興奮するが、一緒に聞いていた彼の祖母で、沖縄戦の生き残り役の零が、曲の感じと普段からの孫のアメリカ好きな姿勢に難色を示す。


 その訳を孫娘役の澪が不思議に思い尋ねたところで、場面は回想から過去へと転換する。


 舞台は戦場の真っ只中にあるとある壕。その中で負傷兵の治療にあたる恋達ひめゆり学徒隊が、敗色濃厚となったことで、武文演じる日本兵に暴力を振るわれた上、壕からの退去や負傷兵と共に自爆することを強要され散っていく様が描写されている。


 それらを経て、場面が再び現代に変わり、沖縄で生まれ育ったことの尊さを忘れないようおばぁこと零が孫らに言い聞かせ、彼女の平和を願う締めのセリフを最後に物語は幕を閉じた。



 これだけ聞けば歌の有る無しは別として、ごく一般的な中学生レベルの劇と思うだろうが、実際のところそんなチープなものではない。

 その最大の要因となったのは、核心とも言える戦時中のシーンから登場した柚と彼女から演技指導を受けた武文や零、恋達数名の演技。

 彼女らの名演技によって、悲壮感や戦争の理不尽さが見事に表現され、観客を沖縄戦の世界へとグッと引き込んだのだ。


 おかげで3年生の劇は無事大成功。観客の心に平和の大切さを刻みつけることもでき、中にはひめゆり学徒隊の悲惨な末路に涙する者もいた。


 それは柚の本性を知る龍達も同様で、普段からしているナチュラルな演技を知っていても、改めて見せつけられたその演技力は凄まじく、皆、脱帽していた。

 おそらく、以前の柚だったら、ここまで積極的に参加はしていなかったでしょう。なんなら色々理由をつけて参加を断っていた可能性もあります。

 龍の温かい心に触れて、復讐をやめたからこそ本気で取り組んでくれた。

 この劇の立役者は紛れもなく柚ですが、彼女をその気にさせるよう持っていった龍が、もしかしたら影の功労者かもしれません。

 まぁ、捉え方は人それぞれですが。

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