↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死獣神~死の書~  作者: 天馬光
11/110

綱手の風フェスタ(1)

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。

 そんなこんなで迎えた当日。待ちに待った綱手の風フェスタが始まった。


 午前10時の開会と同時に、近隣の住民や幼稚園児等がドッと入場し、小中学校の敷地内はフェスタの名に相応しい盛り上がりっぷりを見せる。

 その一角にある中学校の体育館では、午前中の劇や出し物に向けて、中学生らが本番前の準備を整えていた。

 当然、柚や澪、武文もその1人であり、その配役は、柚が負傷した日本兵と共に自爆させられる学徒隊の少女。澪が沖縄戦で生き残った女性の孫娘。武文が自殺を強要する高圧的な日本兵となっている。


「じゃ、みんな。頑張ってね」


「はい。私の迫真の演技、見ててください」


「見てるも何も澪の役、セリフ少ねぇだろうが」


「ははは! 言えてる」

 同じく現代のバンドマンの役として出る宙に痛いところを突かれ、澪は言葉に詰まる。


「それにや、デコデコ。演技力で柚に勝てるとで思っとるんか?」


「うっ、それは……」


「ま、そういうわけだから、あまり背伸びせず、リラックスして自然に演じることね。幸い小学生役っていう違和感の無い役だし」


「もう! 柚さんも美夜さんも宙さんもヒドいです!」

 そう言って澪がむくれるのを見て、出演者達が笑う。おかげで彼らの緊張は解けたようだ。


 と、そこへ、紫乃がそろそろ出番だと知らせに来た。

 それを聞いて、一瞬にして真剣モードになった生徒達は、龍や朋美らの声援を受け、舞台の方へと移動した。


「上手くできるといいね」


「だな。ま、俺からすりゃどーでもいいが」


「そんなこと言うもんじゃ……」

 未来はそう咎めたが、翔馬は聞く耳を持たない。それどころか、これから劇が始まろうかというのに、体育館から去ろうとする始末だった。

 そのことに真っ先に気付いた瞳が呼び止めると、翔馬は夕方からの個人出演のための準備があると伝え、


「んじゃ、あとよっろしく~」

 と言い、皆に手を振りながらその場を後にした。


 一見いつもと変わらない軽薄な口調と態度。だが、どうもいつもと様子が違う。その違和感を察知したのは瞳だけではなく、龍達も同じだった。

 翔馬が沖縄戦を快く思わない理由は、戦争が許せないからではなく、戦後、ひめゆりの塔などを建てて学徒隊らを弔うことで、今を生きている人間を過去に縛りつけている感じがするからです。

 それがよほど気にくわなかったからか、彼は修学旅行中に立ち寄った摩文仁の丘での黙祷も、1人だけ放棄しています。

 そんな彼が見ようともしなかった沖縄戦の劇。間もなく開演です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。