17.旅の途中➀
FC1を回収して、僕とアレキはマルク領を後にしました。空の上から見ると、マルク領はもう樹木もあまりないのですね。だから、エルフ領への伐採を進めるしかないわけですね。街道上を高度を保って北都へのコースを進みます。街道の両脇は、すでに平原と化しています。
アレキは僕の座席の後ろで、左右を興味深そうに見ていますね。
「変わった奴だと思っていたが、空を飛ぶことになるとはの」
アレキはそういいますが、僕としてはアレキをもらったことはイレギュラーですからね。
街道上から両脇は既に平原となっていて、一見魔獣や魔物はいないように見えます。ただ、森や林も減少したことに伴って、野生動物の姿もあまりないようですね。周辺をサーチしてみると、肉食の動物はほとんど見られませんが、草食動物の鹿などが多く確認できています。
「森林伐採を優先したことで、天敵となる狼や鷹などの肉食動物が減ってしまっていますね。恐らく今後のマルク領は、鹿の食害によって農産物が大きな被害を受けることになるでしょうね」
僕は思わず呟いてしまいます。領主があのような策を弄するのですから、マルク領自体も治安はよくありませんね。猛獣が減ったことで、街道は一見安全になったように思えます。
でも、今度は人の猛獣が現れるだけなんですよね。街道脇に伏せていても、野獣や魔物、魔獣から襲われないとなれば、盗賊にとっては安心して獲物を待ち伏せすることができます。その為、旅や行商をする人は護衛を雇わねばならず、マルク領での物価はほかに比べて高くなってきていると、ヘルガさんが話してくれました。
こうして上空からみていても、数台の馬車の左右を護衛が約10名ほどついているのが分かります。そして僕たちが進む街道の先には、実はもうエリーゼさんたちの乗る馬車が見えていたりします。馬車が1台に、騎兵が四騎ですから、速度もありますので平地でエリーゼさんたちが襲われることはなさそうです。
盗賊に襲われるのは、護衛を雇わず進む見通しの甘い商人や、旅人だけとなります。盗賊自体もあまり大規模な隊商などを襲って、被害を出すわけにもいかないでしょうし、あまり大きな被害が出ては、領主としても領地経営にこまりますので、盗賊の討伐に本腰を入れるでしょう。恐らく、遠からずマルク領は、盗賊との争いで多大な被害をだして、自滅に近い倒れ方をするのでしょうね。領主の行いで、領民が不都合をうけrうのはやむを得ないことかもしれません。僕はため息をつきつつ、FC1を飛ばしました。
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そして夕方を迎えましたが、僕は町には入らずに、郊外の街道を少し外れた安全な草原にFC1を着陸させて、認識阻害や物理防御の対策をした上で、夕ご飯を作り始まます。まあ、僕一人分なので量はそれほどいりませんが、今日からはアレキの分も必要ですしね。
アレキの分は、町で買ったお肉を少々と、少量のミネラル補給をかねた野菜などで作ります。そして、狭いFC1のキャビンの中でじたばた動き回るアレキを見つめます。
「まだ捕まえることができないの? ご飯食べられないよ?」
アレキの目の前を、光が右に左に動き回っていますが、先ほどからアレキは捕まえることができていません。
「ぬぐぅ、実体があればもう何度も捕まえているのじゃ」
アレキはそう言っていますが、キャビン内のカウンターはまだ0行進中ですね。
「嘘を言っても駄目だよ、捕まえた数はちゃんとカウントアップされるように設定してあるからね。はい、今日はここまででおしまいだよ」
僕はそういうと、アレキの前に小皿と水を入れた器を差し出します。あとは、キャビンの片隅に防水加工をした木箱に砂を入れて置いておきます。
「アレキ、あの箱はトイレだからね。有所正しき森猫さんが、その辺で阻喪をしないでよ?」
僕はアレキに釘をさします。アレキの食事の量は、体重からの必要量を計算して、やや少なめにしてあります。光をとらえることができなかった分、おやつはありませんので少し少なめですが、こうでもしないと駄猫になりかねませんからね。
森から遠く離れてしまっていますが、アレキがいうには精霊樹様から頂いた『葉』からも最低限のマナが得られるようです。
「あれ? じゃあ、それって食事の量が多くなるよね?」
僕がそういうと、アレキはしまったと思ったのか、素知らぬ顔をして顔をそらします。僕はジト目でアレキを見つめながら食事を続けます。そういえば、猫用のご飯を作ったのは初めてでしたが、お味はどうなんでしょうね?
「アレキ? 食事の味はどうなの? 僕には猫用の味付けはわからないからさ」
それに、本来の猫は肉食動物ですので、肉を中心に食事を作りましたが、森猫さんだとどうなんでしょうね?
「ふむぅ、味はまぁまぁと言えば良いかの。森の小鳥やネズミなんかよりは余程ましじゃ」
なんか、比較対象がひどくありませんか? まあ、マシというのだから良いでしょう。食事を終えたアレキを持ち上げて、モフモフを堪能する前に全体をブラッシングしないとですね。長毛なので、きちんとブラッシングしてやらないと毛だらけになります。
まあ、毛だらけになったも魔法で掃除してしまうので問題はないのですけど、気分は大事です。その後アレキを撫でまわし、モフリ倒した後で写真を撮ります。そういえば、僕のカメラからだけ、イリス達のカメラに送信できるんでしたっけ。折角だから、アレキの写真を送ってあげましょう。
「アレキ、僕の友達に送る写真を撮るから、シャンとしててよね」
僕の言葉に半ば首をかしげながらも、とりあえずまともな写真が撮れたので、アレキに見せます。
「おぉ? なんだこれは」
アレキも興味深々ですが、今は送信が先ですね。イリスにユイ、ユーリアちゃんの三人にそれぞれ写真と名前をコメントして送りました。送信しかできないので、返信が来ることはありません。ああ、そういえば初めて送ったから、慌ててるかもしれませんね。森猫さんの写真だけだから、問題はないでしょう。
「あぁ、アレキ。夜は機体から離れないでね。一応防御シールドと認識阻害の魔法はかかってるから安全だけど、シールドから出るとどうなるかわからないからね」
今までは、誰とも話さずに夜を迎えていましたが、今はアレキもいますから、当初に比べればだいぶにぎやかになりますね。気分的にもずいぶん違います。秋も徐々に深まってきて、夜にはだいぶ冷えてきましたが、アレキがいれば寒さは何とかなりそうですしね。重くてうなされるかも知れませんが……
そうして僕はその日眠りについたのでした。
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「……どうやら眠ったようじゃな」
吾輩は前足で眠りこけるクロエの頬を、ペシペシ叩いて反応がないことを確認した。耳を澄ませるが、外に獣や魔獣はおろか人の気配もないようじゃの。
まったくこれほど魔力の濃い人族がまだいたのかと思いつつ、精霊樹の『葉』をつついた。
『どうせ聞いとるじゃろうが伝えておくぞ。主らの企み通りかは知らんが、我らの精霊樹も当面無事となったようじゃ。
直接、北領を統治する侯爵とやらの娘と、知己になれたようでの。当分、こちらのエルフも命も誇りも失わずに済むじゃろう。主より、感謝の言葉があったことは伝えておく』
一瞬光を増した『葉』は、何事もなかったかのように元の輝きに戻る。光の色は青。さて、数少ない同胞達を守ってくれた恩人じゃしな、何をしにこんなところまできたかは知らんが、つきやってやるか。
吾輩は丸くなって眠るクロエの薄い胸元で丸くなると、しばし瞳を閉じて周囲の気配に耳を澄ませたのじゃった。




