↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……  作者: 猫缶@睦月
7.女王の奏でるラプソディ
269/285

37.過ぎていく日々

「……特に動きはありませんね」


 艦橋から双眼鏡で埠頭の周囲を確認していたユイがつぶやきました。ユージン中佐とミリアム少尉の二人は、昨日からこちらの埠頭に近寄る気配はありませんし、子供たちも泊地内の木造家屋や石造りの館や浜辺で掃除などの作業をしているのを見かけただけです。

 とはいえ、全くなにも無かったわけではなく……


「それにしても、夜間にあの高度を飛んでいた偵察用ドローンを両断しますか……」


 艦橋内のテーブル上には、ミリアム少尉によって真っ二つにされたドローンの残骸が転がっています。

 実は昨夜、石造りの居館に小型のドローンを飛ばしたのですが、開け放たれた二階の窓から投擲(とうてき)された直径十五センチほどの円輪に、あっさり両断されてしまったんですよね。


「ミリアム少尉は腰に円輪をぶら提げていたのですが、まさかチャクラムとはね……」


 チャクラムとは、日本で言えば『円月輪』とか『戦輪』とよばれた、忍者が使ったとされる輪ですね。円輪の外部に小型の刃がついていたり、外周がそのまま刃だったりするものですが、一般的には投擲武器として使用されます。

 本来の武器としては、補助武器のようなものだと思うのですが、さすがと言って良いのかこれ? どうやら僕のガンブレードなどと同じく、アレキサンドリア製の魔道具ですね。

 本来のチャクラムは投げナイフのように投げると、フリスビーのように手元には戻ってこないので、自分で戦闘後回収する必要がありますが、ミリアム少尉のチャクラムは魔道具化されたことによって手元に戻ってくるようです。

 残念ながら投てき方法などは映像からは分かりませんでしたが、ドローンを下方から弧を描くように高回転で回転しながら飛来して、軽金属性の偵察ドローンを呆気なく両断した後に、開け放たれた窓の中へ弧を描くように戻っていったのです。

 えっ、なぜドローンが両断されたのにわかったのかって? それは、僕が平行して更に二機の『スピナー』と名付けた直径五センチメートル程のドローンを飛ばしたいたからです。安全策というより、新型の試験飛行のつもりでしたがそれが役にたった形です。

 とはいえ、それ以上接近させると『スピナー』も両断される可能性があったので、二機の『スピナー』で両断されたドローンの残骸に転移魔法陣を貼ることで回収したので、ミリアム少尉にも気付かれてはいないはずです。


「各科の現状を報告いたします。現在、飛空隊は地上と飛行甲板上で新人の飛行訓練を実施中です。

 衛生科預かりのアルバートさんは、冒険者のデーゲンハルトさんを伴い、泊地周辺の植生調査に行っています。

 航海科、機関科は当直の者を除いて休養中です。両科からの艦体及び機関の異常報告はありません。

 また、今回乗艦されているお客様方(ゲスト)の皆さまは、衛生科班長及び衛生科医療第二班ドーラ、ヴィクトリアと共に護衛を伴い、動力艇による街への買い出しに行ってもらっています。女性ばかりのメンバーですが、皆さん武器も携帯していますので、問題はないでしょう」


 ユイはそう言ってにっこり微笑みますが、美女ばかりの攻撃隊員で編成された部隊は、街の男性商人たちにとっては過剰戦力ではないでしょうかね。昨日の話を聞いて以来、すこし心配になってしまいます。


「まあ、艦外活動をしている人たちの心配は別として、こちらはこちらで考えなければなりませんね。

 ミリアム少尉のこの行為は、明らかに威嚇というか挑発ですよね。初対面時からチャクラムを腰に下げていた点も含めて……」


 決定的な対立ではありませんが、こちらは報告をする事は伝えましたからね。アレキサンドリアに帰港している船の乗組員からも事情が報告されているかは未知数です。普通であれば、僕たちがここの任務を終了して、アレキサンドリアに帰港するまでの五カ月の間は、この状況を軍に知られる事はありません。

 帰港した船からの情報によって、軍から査察が来るとしても他の船を使い泊地を訪れるとしても、普通であれば最短で一カ月はかかりますからね。


「リアンさんも、ハリーさんも大丈夫でしょうか……」


 そう、航海科と機関科の当直者以外は、浜に用意されている宿泊施設に移っています。理由は地に足をつけた生活は必要だからという理由でしたが、一部にはこの泊地の内情を確認することもあるでしょう。陸上の施設を使えば、中佐や少尉だけでなく、子供たちとも接触することになりますからね。

 一部の科員は外泊許可をとっていて、情報収集という瞑目で、女性陣が戻り次第街へとくり出すようですが、ほどほどに抑えてくれれば文句はありませんね。


「……本来戻ってこないはずのチャクラムを使う武術かぁ~、結構めんどくさそうだなぁ」


 目深にかぶった帽子のひさしには、撮影されたチャクラムの軌道計算と予測される性能値が表示されていますが、まだまだデータが足りない状況ですね。

 アレキサンドリア大図書館の蔵書にも、チャクラムを使用した武術に関する資料はわずかながら存在しましたが、当然そこに記録されている武術は、投てきしたチャクラムが戻ってこない事が前提です。

 そのために普通はとんがり帽子を被って、そこに多数のチャクラムの穴に帽子を通すことで数を用意していたようですが、戻ってくるのであれば数は不要となります。

 そして、投げる動作があれば、戻ってくるチャクラムを回収する動作も有る訳で、現存している武技としてのチャクラムの使い方とは異なると考えて良いでしょうね。


「軍の個人情報(パーソナルデータ)の閲覧は許されないでしょうし、閲覧する時間は……奥の手を使えば可能なんでしょうけど」


 ユイが言うように、彼らはアレキサンドリア本国とリアルタイムで会話ができて、人が制限されますが、直接この艦に来る事ができる事は知りません。

 それが強みと言えますが、こちらも弱い点があります。それは、海軍の重鎮であるジャスティン長官などが直接は来れない事です。建造時点では、僕と海軍の重鎮であるジャスティン長官との接点はありませんでしたからね。

 可能であれば、リアルタイムで通話できる事自体隠しておきたいところですし、いろいろ微妙な問題がありますね。


 個人情報(パーソナルデータ)の閲覧といっても、実はデータ化されている情報はあまりありません。というのも、元々の個人データというのが『名前・生年月日・軍歴・最終卒業校・出身町村』程度なんですよね。容姿や顔の画像登録などは、本国に存在する軍人のデータとリンクするようにされ始めていますが、エメラルド島のような海外駐在の人は、帰国のチャンス待ちとなります。

 軍歴も所属部隊に論功行賞、賞罰などの事実部分しか記載がありません。こういった部分も、僕としては物足りなくて改善できないかなぁと思ってはいるんですけど、さすがにコンピュータの様な物は、魔法では出来ていないのが現状です。

 魔道具でコンピュータを実現しようとすると、膨大な条件式を組み込んだ可変記述式と呼ばれている、部分書き込みが可能な魔法陣を多用する必要があります。実際のコンピュータもアプリケーションプログラムが無ければ何もできませんが、プログラム=魔法陣ですので、様々な情報を表示するというのは難しいのですよね。


 そんな事を考えながら、艦の内外の情報をパネル表示して確認していると、ユイが僕を突きました。見てみると、埠頭の端に人影が見えますね。情報パネルに拡大表示をしてみると、ミリアム少尉の様ですね。


「なにか用でもあるのでしょうか?」


 ユイの言葉に僕はついつい吹き出してしまいました。


「いや、船務長。ここは泊地ですし、未だ僕たちは帰港してから挨拶らしい挨拶をしていないのですから、用事が無いってこともないでしょう。

 というより、物資の調達依頼などがあるので、むしろこちらが用事が有るのではないですか?」


 笑ってしまいましたが昨日の対応で、ユイの中ではミリアム少尉たちは敵扱いになってしまったのかもしれません。

 ユイは少し顔を赤らめていますが、確かに仕方ない事かもしれません。昨夜アレクシアさんに連絡をした時も、『注意するのよ』と言ってましたしね。


 その後、エマとジェシーにミリアム少尉のお出迎えに行ってもらい、埠頭に新設した会議場で要件を確認しましたが、予想通りにこちらの必要な物資の確認と、夕食のご招待でした。


「申し訳ありませんが、こちらの準備も有りますので、クロエ艦長お一人で……」


 との申し出には、ユイとアーシャが反対を表明したので、ミリアム少尉側が妥協して、僕ともう一人の計二人とユージン中佐の三人での食事会が決まりました。


「では、本日18時にお迎えに参ります」


 ミリアム少尉がそう言いましたが、同じ泊地の敷地内ですし、人手不足は承知していますからね。こちらから出向くことにすると、昨日とは打って変って丁寧な対応をしていただけたのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。