↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……  作者: 猫缶@睦月
6.楽園での休日
225/285

13.先手を取ったのは……

「ちょっと待ってくださいよ、パトリシアさん。今日は皆さんお休みで来てるんですから、ギルド関連のお仕事もNGです。それに、僕は魔法を使わないという事が出来ない体質なので、無理ですよ」


 そう言って逃げをうちますが、イリスさんが余計な一言を放ちます。


「身体強化系の魔法は、武術をある程度極めた人であれば、それに準じるモノをつかって居るんじゃない? そうでもなければ、コリーヌさんが重量級の武器を扱えるわけないでしょ?

 魔力の流れを見てみたけど、身体強化系は上位4名の皆さんは意識せずに使ってると思うわ。あぁ、イェンさんは気功法とかの奥義はなしね。あれは、規格外なので」


「うっ、そうなのか。気功法の上位技を使えないとなると、この面々では勝ちを拾うのは難しいか……

 仕方ない、私は遠慮しておこう」


 むぅ、イリスさんのおかげでイェンさんは引き下がってくれましたが、パトリシアさんはにこにこ顔を崩しません。

 純粋な体術や剣技では、この面々とは戦いたくありませんし、僕が飛び入りで優勝してしまえばそれはそれでまずい事になります。一応僕は、運営側ってやつですからね。


「……一応僕はこの企画の運営側ですので、参加はできません。ですが、パトリシアさんが勝った場合は、エキシビションとして優勝者には、銃との戦いを経験してもらうという事でどうです?

 今後は賊などが銃で武装している場合も増えますから、ギルドとしても、剣技や体術にたけている方も興味があるのではないでしょうか?」


 僕がそういうと、パトリシアさんはしばらく考えて納得してくれました。あまり飛び入りの方を優遇する訳にはいきませんからね。パトリシアさんは人魚族の槍使い、金髪に青い瞳を持つレナータさんから順に対戦してもらいます。


「ふふふっ、この娘に勝てば私が一位って訳ね。良いじゃない、早速戦いましょう♪」


 このイベントの間に、エリーゼさんから『金髪の小悪魔』なる二つ名をいただいているレナータさんは、はっきり言って鬼畜です。

 レナータさんの使う武器は、三又の槍(トライデント)です。小柄なのに、2メートル近い三又の槍(トライデント)を操り、剣の間合いに入れる事さえありません。ここに残ったヘルガさんやコリーヌさんでさえ、レナータさんの攻撃をさばききれずに破れていますからね。


「あら、優勝候補の方からのお相手なんて、厳しいですわね」


 それに対するパトリシアさんは、不安げなセリフとは違って表情はギルドの受付に居る時と変わらない笑顔です。普通に腕を後ろに回して、変形前の棒状のチャンバラゴッコをくるくる回しています。


「パトリシアさん、ほんとにいいんですか? はっきり言って、人魚族の方は強いですし、食べ物がかかってるので本気ですよ?

 正直、事務方のパトリシアさんでは勝負にならないかと……」


 僕の言葉に、審判のユイや刀を使う人魚族のベアトリスさん、エリーゼさんもうなづいています。しかもこの人(人魚)は性悪(しょうわる)ですからね。心を折りに来ますから質(たち)が悪いです。


「うふふ、まあギルドの受付は事務処理だけじゃないという事を教えてあげますね、もちろん事務処理能力の高さで、職員として働いている者もいますけど」


 ? パトリシアさんの発言には、疑問が出るところはありますが、そこまでいうなら仕方ありませんね。

 パトリシアさんは相変わらず背後に回した手で、棒状のチャンバラごっこをくるくる回していますし、レナートさんは意地の悪い笑顔を浮かべて、槍の柄を長く持った間合いの長い攻撃をくり出す体勢です。二人とも準備ができているようなので、僕はユイをみてうなづきます。


「それでは一戦目、人魚族レナータさんと冒険者ギルド受付嬢パトリシアさんの模擬戦を行います。はじめ!」


 ユイの声と共にレナータさんは前に出て、引いていた三又の槍(トライデント)を突き出します。初手はオーソドックスに長い間合いを活かした理にかなった攻撃ですね。鋭い刺突ですが、パトリシアさんを武人と見ていないので、今までの対戦相手と比べれば手加減していることは判ります。

 とはいえ、本来一撃で終わらせることもできるのでしょうが、相手が避けられるギリギリの位置を狙った刺突が連続で相手を襲います。

 だてに『金髪の小悪魔』の異名はもらってないですね、ギルドの受付嬢に対しての攻撃ではなく、分不相応な挑戦者に対する返礼と言った厳しい攻撃です。

 パトリシアさんは開始と同時に、背後で回していたチャンバラごっこを変形させたようですが、僕の位置からは武器の形は見えません。棍や長剣、戦斧などの長物の武器ではないようです……というか、パトリシアさんって武器を扱えるんですね。


 細かなステップを踏んだ移動だけで、レナータさんの突き攻撃をかわしているパトリシアさんですが、レナータさんの使う武器は三又の槍(トライデント)です。普通の槍なら突き攻撃は点で相手をとらえる攻撃になりますが、三又の槍(トライデント)は槍の先端(穂)が三又にわかれているため、線上に配置された三点での攻撃です。そして、左右の枝刃は両刃になっていて斬る攻撃も可能です。

 レナータさんの突き・払い・斬りといった連続攻撃を、パトリシアさんはそれほど苦も無く避けているように見えます。ですが、槍の間合いから内側に入る事ができないようですね。とはいえ、強くも見えないパトリシアさんに、容易く攻撃をよけられている事に、表情が険しくなっています。どうやら、苛立ちが隠せなくなっていますね。


「ちょろちょろ逃げ回るのは得意なようだね。でも、この辺で付き合うのは終わりにしちゃうよっ! 《刺突三閃》」


 レナータさんは言葉を発すると同時に、一歩踏み込んで一瞬のうちに三度の突き攻撃を放ちました。その突きの速さは、今までの速さよりはるかに早く、観客の大半は槍の穂先が見えないくらいです。意図的に遅い速度で相手の目をならせてしまいましたね?

 観客からは悲鳴が上がりますが、次の瞬間驚きの声に変わりました。刺突を僅かに身体をひねってレナータさんの技、《刺突三閃》をかわしたパトリシアさんは、やりすごした穂の三又、枝の部分を突き出した方向に合わせて強打したのです。


 金属と金属を打ち合わせる激しい音がした直後、三又の槍(トライデント)が観客席と武舞台を隔てる障壁に突き当り、金属音を奏でながら床に転がりました。


「えっ、何が起きたんでしょう……?」


 ユイからすれば、槍を突き出したレナータさんの手から、槍がすっぽ抜けたようにしか見えなかったかもしれません。そして呆気にとられたレナータさんの喉元には、支刀がついた片刃の短刀が突き付けられています。


 十手……? いえ、違いますね。形状は十手に近いですが、本体も枝状に伸びた支刀にも刃がついています。枝の部分は刃が付いておらず、結構太くて強度がありそうですね。しかも、パトリシアさんは左右の手にそれを持っていて、柄頭は細い金属線で繋がっているようです。

 日本には十手を使う武術で、十手術というものがあったようですが、パトリシアさんはこちらの世界の十手術の使い手の様ですね。


「……受付嬢といっても、無法者が冒険者登録をしにくる時もありますので、一部は武術に秀(ひい)でたものが抜擢(ばってき)されることもあるんですよ。事務方だと思って、油断なさいましたね」


 にこやかにほほ笑むパトリシアさんに、レナータさんは凄惨(せいさん)な笑顔を向けます。美人さんこの笑顔は正直恐ろしいですよ。パトリシアさんは何故平気なんでしょうか? そう思っていた僕の側で、ヘルガさんがつぶやきました。


「……あの武器は、ソードブレイカーか。ヘルメントスが東部エリクシアに統合された際に、使い手も失せて失伝(しつでん)したと聞いていたが……」


 その声を聞いた僕とエリーゼさんは、顔を見合わせます。その後、エリーゼさんがヘルガさんに問いかけました。それに答えて、ヘルガさんが簡単に説明してくれます。


「帝政エリクシアが東部属領を平定したのは、今から四十年以上前になるが、それ以前の東部属領は、人口一万以下の小国が連なっていたときいている。

 ヘルメントスもそう言った国の一国でね。ヘルメントスの王を守る宮廷騎士の一人に、支刀の付いた片刃の直剣を使う者がいたらしい。代々王家に使える騎士の一族で、ヘルメントスの生きた盾と称されていたが……」


「……エリクシアとの戦いで失われたと?」


 エリーゼさんの言葉に、ヘルガさんはゆっくり首を振ります。込み入った事情があるのかもしれませんね。

 そうこう言っているうちに、二戦目が始まろうとしています。油断をしていたレナータさんから一本先取したとはいえ、強力な槍使い相手に、パトリシアさんはどう対応するのでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。