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駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……  作者: 猫缶@睦月
1.どこかで聞いた都市国家
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18.実習と言う名の(1日目 カルセドニーの村)

 初日は、馬車で2時間の西岸地区北の、カルセドニーと言う村を僕らは目指した。とはいっても、僕らは馬車に乗っているだけなんだけどね。

 西岸地区には1町3村あり、町名はウエストゲート 村は北からカルセドニー、クリソブレーズ、グロッシュラーという。基本的に村は農業が主体だけど、三圃式農業を魔術学院の指導の下採用している。

 今回依頼のあったカルセドニー村は北端にあるせいか、一部でゴブリンやオークが山を越えて侵入してくる場合があるらしい。


 村に着いた僕とイリスは、普通の村のイメージとかなり異なっているのに驚いていた。ウエストゲートの町からの街道は石畳で舗装されていたし、村自体も環濠(堀)と石積みの防壁で囲まれている。城塞都市と言う程ではないけど、集落の大半はこの防壁の内側に存在しているようだ。

 人口は約500人程度で、人間族が主だ。家は木造が多いとはいえ、大半が二階建てで、北欧なんかにありそうな、おしゃれな建物が多い。

 村の中心部は100m四方の面積に公共施設があり、それを囲む街路も石畳で舗装され、靴が汚れる事もない。商店はこの街路に面して店を出しているせいもあり、簡単な飲食店なども存在する為か、活況を呈していた。


 そんななか、僕達の乗った馬車は村の中心部に程近い、唯一と言われていた宿屋前に着いた。ゲームなどに良くある、酒場と併設されている訳でもなく、宿屋単独での営業らしい。1階にある食事のスペースも、宿泊者専用であり、お風呂も小さいながらも湯舟を、男女別で備えているとのことです。

 正面の入り口から入った僕達は、10代後半のお姉さんに案内され、僕とイリスが3階、リアンとワイアットが2階のそれぞれ通りに面した部屋に案内された。宿屋だけで生計が成り立つのか疑問だったけど、アレキサンドリアから農業などの指導に訪れる人達が、定期的に利用するらしく、問題ないんだって。

 あと、(まれ)に東岸地区からエルフ族や獣人族、北部の山岳地帯からはドワーフ族が訪れるらしい。カルセドニーは河近くに、家畜として猪や野鶏を飼育しており、その肉や加工食品も特産で、それを買いに来る事もあるらしい。

 お昼時だったので、近くに僕達だけで食事が摂れるお店があるかを、お姉さんに聞いてみたら、軽食でよければ用意できますよと言ってくれたので、是非とお願いした。街路を見下ろすウッドデッキのテラスに、紅茶とサンドイッチの様なものを用意してくれたので、ようやくイリスとのんびり街を見下ろす。


 「村ってイメージとはだいぶ違うね」


 僕がそういうと、イリスも村というイメージだけで騒いだのが申し訳なかったと思ったみたいだね。普通村って言うと、家々がパラパラ散らばっているのが主だし。そうなると、上下水道や街道の整備などのインフラ周りの整備費用が、割高になっちゃうからね。この村の堀の内側の区画は、四隅が公園のようになっていて、その地下にはし尿・汚水処理の施設になっている。つまり、この村の区画の内側は、トイレなども水洗だったりするのだ。これは、僕以上にイリスが喜んでいる。アレキサンドリアの村って何処も一緒なのかな? 後から知ってる人に聞いてみようかな。


 和やかな気分で過ごした僕らは、時間を待ってロビーに下りた。これからギルドの出張所に出向いて、討伐対象の居る位置や地形、銃を使う事に対する注意点など、確認すべきことは多い。

 暫く待つと外からリアンとワイアットが帰ってくる。後は連中の後をついていくだけで基本的にはいいはず。今のところ僕から特に確認することはないしね。カウンターのお姉さんに、イリスと一緒に手を振り、ワイアット達の後ろを着いて行くだけの簡単なお仕事を開始する。


 到着したギルドでは、職員の応対も普通だった。子供ばかりだからといって、あしらう事もせずに出張所長さんの部屋へと通される。対応はリーダーを拝命したワイアットに任せて、僕は聞かされる内容を吟味する。


 今回の目標はゴブリンやオークだ。内容は普通の討伐依頼。普通であれば、村の自警団に依頼する内容だったが、銃による外傷などの調査をしたかったリリーさんの情報網にかかったらしい。僅かでも自警団の収入が減る事になる為、村側は最初は渋ったらしいが、討伐された対象の運搬と、非常時の護衛もかねてそれなりのお金が自警団に下りることと、1週間の滞在を村内の宿屋で行う事が判ると、歓迎一色になったらしい。まあ、討伐しに来るのが子供ばかりとは思っていなかったらしいけどね。

 明日の朝8時位に出発し、目的地まで2時間というところ。順調に行けば初日でノルマはこなせるかも知れないが、依頼は群れの殲滅であるので、ノルマ以上の狩りとなる。

 村で把握しているゴブリンは20体程度の小さな群れで、討伐自体は問題ないと思われるが、数日前にオークの咆哮を聞いたとの村人の証言もあるらしい。一応、周辺の調査も行って、オークが居る場合はオークも討伐して欲しいとのことだ。

 群れを見かけた場所は、森の中ということで視界はあまり宜しくない。森林部と言うことを考えると、リリーさんの宿題を片付けるなら、14時位までとなるだろう。遅くなると、帰りを狙われる可能性もでてくるしね。ノルマをこなした後なら、普通に討伐するだけだから、あまり問題はない。銃声によって、住処(すみか)を移動されちゃ面倒だから、できれば初日で殲滅できれば理想かな?


 僕の知識では、ゴブリンもオークも群れるはずだし、オークは厄介な習性があったはず。どちらも共闘するような知性は無いはずだけど、その辺も再確認しておきたいな。


 リアンやワイアットは、必要事項の確認が終わり早々に引き上げようとする所を、僕とイリスは他に確認したい事があるからと、出張所で別れた。


 「ねぇ、イリスさん。イリスさんはゴブリンやオークとの戦闘経験はあるの?」


 僕は疑問に思っていることを、イリスに確認する。イリスは僕のほうをみて当然のように話した。


 「田舎に行くってだけで騒いでいた、私が知ってると思うんですの?」


 ですよね~。習性の知識はあるかを聞くと、群れで襲う魔物でしょとのこと。つまり知識はあまり無いって事だよね。ギルドの職員さんに、この辺の生息魔獣について確認してみると、だいぶ昔にこのあたりの魔物は討伐され、絶滅したはずだとの事。今回の魔獣は、最近山越えに成功して西から流れてきた集団らしい。

 ということは、ここの職員さんでもあまり知識はないのかな? 聞いてみると、稀に単独か小集団で現われる事は有ったらしい。基本的にはゲームに出てきたものと同じで、単独では雑魚。集団で現われ、打撃系や剣を用いる程度なので、数にだけ注意とのことで変わらないね。

 問題は、オークのほうで、過去十数年は出現歴がなく、今回もそれらしい咆哮が聞こえたというだけの存在。そして、厄介な性質というか習性もそのまま。つまり、女性を執拗に狙うということだね。さらわれてしまえば、その後は推して知るべしと言う奴だ。

 リリーさん達が、あえて僕らに危険な経験を与えるとは思えないから、恐らくガセネタと踏んだのか? それは無いか。そう思ってたら、出発前に僕に一粒弾(スラッグ)用の魔石を渡すわけがない。

 今回僕の装備用の魔石は、フルスペック仕様だ。都市内で用いる護身用の衝撃弾クラスの魔石ではない。場合によっては、それでは足りないと踏んだのか。どちらにしても、環境破壊禁止だしね。用心に越した事は無いと思っておこう。

 それより心配なのは、僕としてはリアンとワイアットの動向だよね。今さらやらないとは思うけど、今回も僕の犠牲を考慮しないで作戦を立てられると、余計な身の心配を常にしないといけない。正式な養子になっちゃったから、今さら変な事はしてこないとは思うんだけどね。


 「あ、職員のお姉さん、この辺にドワーフ族の方が住んでるんですか?」


 宿屋のお姉さんが言っていた、ドワーフ族の人はどこから来るのだろう。僕は疑問に思って聞いてみた。エルフ族や獣人族の人は、東岸地域に住んでいるのは知っているけど、ドワーフ族の人は知らないし。


 「ん~、滅多に来ないけど、北の街道からよく来るって聞くわね。確か、アレキサンドリアにも船で鉱石や金属製品を納品していたはずだから、川の上流なのは確かだと思うわよ。」


 「ありがとうございます。あと、もう一つ聞いていいですか? この近くに……」


*****


 「ちょっと、最後のあれは何ですの?」


 イリスに追求されますが、そこは余計な心配はさせたくないので誤魔化します。


 「ん~、念の為聞いておいただけ。あっ、そうだイリスさん。僕、まだ応急セットと非常食買ってなかったから、買い物に付き合ってくれる?」


 明らかに話を逸らしたのは判ってるんでしょうけど、イリスは肩を(すく)めるだけで流してくれます。


 「仕方ないですわね。お風呂あがりの飲み物は貴女持ちですわよ?」


 僕達二人は薬屋さんと、食品屋さんに笑いながら向います。空は綺麗な夕焼け空に染まり始めていますが、まだ夕食には早い時間です。あまり遅くなると、お酒臭い大人達が増えますから、早めに部屋に帰るとしましょう。


 「コーヒー牛乳とか売ってませんかねぇ」


 「なにですのそれ? 飲み物なの?」


 「美味しいんですよ?」


 僕の声にイリスのテンションがあがりましたね。


 「では、今日は見つからなくても、後で絶対おごっていただきますわよ?」


 「おごりは今日だけじゃないんですか?」


 二人で歩く夕焼け空の下の知らない道も、悪くないかも。そういえばと、僕は東の山影から上り始めた満月をみて、思います。


 (アリアは今頃何をしているかな~)


** 閑話休題 **


 4人での食事が終わり、暫くして後に響き渡るイリスの声に、イアンとワイアットは扉を開けて廊下を覗いた。階段の手すりにつかまって、イリスが身体を引っ張るのに抵抗しているクロエの姿がみえる。


 「あいつら、何やってるんだ。(うるさ)いやつらだな」


 イアンが呟いた直後に、クロエの半泣きの声が聞こえる。


 「いや、僕は後から一人ではいるので、イリスは一人で入って下さい」


 「何言ってるんです。そうやって、お風呂上りの飲み物おごらずに逃げる気でしょう」


 「ちゃんと奢りますから、お願いしますって」


 「煩いですわね。早くと入らないと他のお客さんの迷惑になりますわよ」


 大騒ぎしている二人の背後に立つ、黒い影に、クロエとイリスがビクリとして沈黙する。


 受付のお姉さんが現われた!!


 「お嬢ちゃん方? 何を騒いでいるんです?」


 その表情をみて、クロエは息を呑む。


 「ヒイッ」


 そしてクロエは逃げ出した!! しかし、回り込まれてしまった!!


 がっしりと身体を掴まれたクロエをみて、イリスがお姉さんにお願いをする。


 「お姉さん、クロエがお風呂に入ろうとしないの。お風呂場まで連れて行ってくださりませんか?」


 顎下(あごした)に軽く握った両拳をつけ、小首をかしげるイリスの姿に、お姉さんは会心の一撃を受けたようだ。


 「まっかせなさい。いっそ、湯船の中まで連れて行ってあげちゃおうか」


 「はい。是非お願いします。」


 イリスの声に、お姉さんは張り切ってしまったようだ。


 「キャシー、ちょっと受付お願いできる~? 私はわがままお嬢さんのお相手しなければいけないから~」


 「は~い、キャシー受付にはいりまぁす」


 響き渡る声に、イリスはクロエを見てニヤリと笑みを浮かべる。


 「お姉さん、よろしくお願いしまぁす」


 「駄目、お願いだから許してください~、助けて~」


 歩き去る受付のお姉さんとイリスの後姿。響き渡るクロエの声がだんだん小さくなっていく。(ようや)く静まり返った廊下に、リアンは部屋の扉を閉じて呟いた。


 「やっぱり、俺はアイツなんか嫌いだ」


 「奇遇だね。僕も再確認できたよ」


 ワイアットの声が、リアンの声に続いたのであった……

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