15.やらかした結果……
「クロエ君、君専用の魔道具として、『ガンブレード』の製作は行おう。だが、根本的に今のままでは、多数の『銃』に対して、こちらの損耗を減らす事は出来ると思うが、アレクサンドリア側の攻撃手段が相変わらずの剣・槍・弓・魔法の4種では、性能の上がった『銃』に対抗できないのではないかい?」
エリックさんの言葉に、僕も納得します。こちらが被害を受け難くなるとはいえ、攻撃手段は変わりません。それに、戦争となれば24時間何時敵が襲ってきてもおかしくありません。
相手に損害を与えられず、時間をおいて、相手から断続的に攻撃を続けられれば、魔力の回復量よりも消費量が勝り、魔法使いが倒れてしまいます。そうなれば一気に戦局は悪化するでしょうね。
「そこでだ。クロエ君のガンブレードを魔法使いだけでなく、剣士や槍士・弓士にも使える様にして、使い方を日頃から習熟してもらえば、彼らも戦力と出来るんじゃないか?」
エリックさんが言う事は判りますが、それでは金属の弾ではなく、魔法を使う銃がこの世界に普及してしまうだけのような気がします。治安の悪化などは避ける事はできないでしょう。僕が何を懸念しているのかを、アレクシアさんやリリーさん、イリスは判っているようです。
「エリック、それだと結局魔法の銃で相手を倒してしまう事になるでしょ? 戦争の時は仕方ないけど、普段から習熟する為にもっていれば、必ず使ってみたくなるわよ?」
そういうアレクシアさんも、必ず使うタイプですよね。
「『銃』は普段から使って練習しても、悪用は出来ないようにするとか、そんな事できるのかしら?」
リリーさんはそう言って天を仰ぎますし、イリスも同じ考えの様ですね。ん~、非殺傷で銃の練習にもなって、突然襲われたときに剣や槍等の武器のサブウエポンとして使える安全なものかぁ。あっ、そうだこれならどうかな。
「エリックさん、普段から携帯する『銃』には、魔石に溜めた魔力だけを撃つようにはできますよね?」
僕の言葉に、エリックさんは勿論だと肯きます。
「では、装填する魔石に、雷の力を溜めておく事はできますか? それなら、ショックを与えるだけで相手に危害は加わりにくいと思います。まあ、どの位の力で撃つかは調整が必要ですが……
そうすれば、銃と魔石の供給をコントロールすることで、悪用されることは抑えられるかもしれません」
「だめよクロエ。雷は水と風の複合魔法よ。使える魔法使いが少ないから、いくら弱いとはいえ、銃に使えるだけの魔石を生産できないわよ。一人6発だけじゃ心もとないもの。予備弾倉も必要でしょ」
アレクシアさんはそういいます。リリーさんは、ごく弱い雷なら人体への影響は少なく出来そうね~と肯いています。あくまでも医療的見地から言っているように見えますが、医療関係に関しては狂気の科学者なんじゃないかと、疑ってしまうよ?
まあ、それはともかく……
「この都市は豊富な水量の河がありますし、十分な落差もありますから、発電機さえあればいくらでも作れるんじゃないですか? 24時間フル生産できるんじゃないかと。」
僕はそういって、エリックさんにいうと、発電機ってなんだと聞き返されます。そこで、僕はエリックさんに発電機の仕組みを教えます。磁石とコイルを使った簡単なものだし、中学生で学ぶものだから、そんなに難しいものではないだろうと……
僕はこの時、気がつかなかった。『銃』も『電池』と思われるものも、かなり古くから存在するから気にしてなかったのだ。地球では古代エジプトでも『電池』らしきものがあったのは確からしいし(電池として利用されていた訳では無いらしいけど)。
だけど、まともに使える商用発電機の発明は、地球でも実は19世紀であり、魔法が使えるこの世界の現在の文明レベルは地球の16世紀あたり……
僕がエリックさんに教えてしまったのは、完全なオーバーテクノロジー、オーパーツである。しかも、教えた相手がエリックさんだ。彼が発電機と電動機、実は構造が殆ど同じである事に気付き、都市内の様々な動力に電動機を使用したり、帆船の索具の操作補助に電動機を使用して、より安定性のあるものへと切り替えていく事になる事も、予測していなかったのである。これによって、エリックさんはアレキサンドリアにおける魔法科学の祖と呼ばれ、魔法と電気を使用した科学の融合した新しい技術を開発していく。
その事に気付いた僕は、その技術をアレキサンドリアの中だけで他国に技術供与しないように、お願いしまくる事になったのである。
その代償として、100門以上の砲列艦と対抗する為に、風力に左右されない推進方法として、スクリューの構造と電動機を利用した推進装置も教える事になってしまった(ちなみにスクリューの開発時期は19世紀である)。
魔力を使うから、常時使用できる動力にはなりえないけど、帆船の時代に風を無視して航行できるメリットは、海戦では大きい。そして、この魔石を使用した動力と『魔道砲』を搭載した、小型高速艇の海戦への投入により、海上での格闘戦が考案され、多数の小型高速艇を搭載した、高速艇母艦なるものがアレキサンドリア海軍の主力艦となるのも後の話である。
兵器としては、魔法を使う『魔導銃』や『魔導砲』、それを搭載する『魔導車両』が開発されたが、アレクサンドリア外への流出はかろうじて避けられることとなる。こうして、アレキサンドリア共和国は、防衛戦力としてはとんでもない戦力を有することになるが、他国がそれを思い知るのはまだまだ先の事である。




