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普通の高校生が普通の異世界転生  作者: 闇岡ヨシハル
7/12

7.唐辛子

ゴブリンの始末を終えた俺たちは家に帰って来ていた。

あれおぞましの晩御飯である。


献立は、

米、イカ、玉ねぎ、ほうれん草、サフラン、のピラフ。炊き込みご飯?

豚のハム、落花生。

そして、赤いゴブリンスープ。なぜ真っ赤なんだ?

とのこと。


大らかで豊かで救われている食事だ。

約一品がアームロックにしてるけどな。


今日は、エルザルザ、ミリア、リリーザが食事当番だ。

エルザルザは竈へ薪をくべ、


「―――ファイア」


あれ? それって、まさか。

M・A・G・I・C。

魔術きたー。

懐かしの火魔法、ファイア。

俺にとっては母乳も同然なんだが?


そういえば両親はどうしているのだろう?

魔術学園を中退して連絡が行っているのか、いや入学自体親は知っているのか。

というか実家はどこだ?

ここが獣人の国で、俺の父親がエルフで、ありえるか? 別の国か?

大丈夫かな、俺。捜索届けが出されてたりして。

冒険者ギルドに聞いてみようか? 意味無いかなぁ。


バルバロイ・デュボワ 1245・8・8


で、


1260年8月

今ココ


だから、15年も経過したことになる。

最悪神隠しに会って死んだ扱いかもな。

最後の記述が、


1歳で言葉を喋り、親に隠れてスキルアップ

3歳で近所の森の 以下略


つまり1~3歳の間に、隠れるべき親が存在していた事が明らかだが、その後はどうも要領を得ない。再会してどうという事もない。家族の愛情だとか悲喜こもごもは実感を伴って、酔えて、初めてある能うものだ。来たり行ったり、龍ヶ崎になったりデュボワになったりしていては、皮膚で酔えもせず、頭は酔わせるほど情け深くない。勘違い無くては情も無い。まるで紙に書かれた模様の事を感動だ愛情だと言うようで、ならば路傍の石の方がいっそ清々しい程に親愛の情を感じさせる。人を定義するのが言葉ではなく石である為だ。損得の情、物心、の芳しい修飾を愛情や悲しみと言ってみても、利益も損失も生じない遠い場所にある二者の間になんら情の湧く事はない。石と在りながら白昼夢に耽る愚物。それは親子のみならず、奴隷も同様であろう。現実社会で物質的精神的充足が手に入らないと仮定して、自身で曲げた荒唐無稽なストーリー(奴隷が人権意識を持つ神の寛容なる世界より充足を与えられる)を持て囃し、無思慮・無遠慮な二足獣へと成り下がる。見た目は損得に頓着しないよう虚勢を張っていても所詮同根の量産型神経だ。


「主様、夕食の支度ができました」

「ん」


俺は奴隷へ寛大に返事をして、食堂へ向かった。

俺ってあんまり上下関係とか堅苦しいの苦手なんだよね。

だから普通ならマンガとかで奴隷は床で食事を摂ってるんだけど、うちでは一応みんな家族みたいなもんだから一緒のテーブルで食べてる。


みんな買って来た最初はそんなうちの日常風景に思わず目を丸くしたもんだ。

それでも先に俺だけで食べて、使用人は後で、みたいに抵抗する子もいたけど。


ご飯って一人で食べるより大勢で食べた方がうまいんだよね。ってラノベで言っていたから、俺もそうした。


「ん」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


俺が言っているのをみんなが真似しだして、今ではこうだ。

ちなみにこっちの世界では食事の挨拶は一般的ではないらしい、その辺の精神文化はやっぱ遅れているようだ。


手始めにピラフに手を伸ばす。米がイカの濃厚なスープを吸って少し固めに炊いてあって非常にうまい。

現実逃避はこのくらいにして。


さて、二足歩行で「キィキィ」と鳴き森に集団で生活している、深緑色の皮膚に赤い目を持ち、始終よだれを垂らして道行く行商人を襲う、臭い息を吐く最下級の魔物・ゴブリンの肉を煮たスープに取り掛かろう。

匂いは特に無い、スープの色は赤。


「ん、赤は何?」

「それは唐辛子です」

「ん、見れば分かるよ、そんなの。この量はどうなんだろ?」

「すみません、一応ゴブリン肉の代表的な料理方法なんですが。お口に合いませんでしたら・・・」

「ん、別にそんな事一言も言ってないからね?」


まぁここはみんなの顔に免じて我慢して食べるとするか。

スプーンで掬って口へ運ぶ、旨いも不味いもなく、辛かった。

本当にこれが一般人の食べるものか?

すごいな異世界。


ゆっくりと意識を手放すバルバロイなのであった。


「キャー御主人様ー」





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