8.恐竜
一度明け方の4時頃に目が覚めたがそのまま二度寝して、次に目を覚ましたのは体感で朝6時くらいだったか。
2時間しか寝てねえ、まじTUREEEEEー。
俺を起こした誰かに聞くと、スープを飲んで気絶して、てんやわんやで今に至るとのこと。
「ん、先週って迷宮のどの辺で稼いでたっけ?」
「えーと、いつも先に35階層、後半が40階層あたりです」
へー、やばそうな香りがプンプンしてら。
「ん、今日からは初心に帰って、浅い階層にしようか」
「・・・しゅじん様、先日から・・・もしかして体の具合が悪いんですか?」
「ん、そんな事ないよお」
「では、記憶喪失とか?」
「ぎくぅ」
シルザが俺の核心を突いた。やはり昨日のゴブ狩りが不信の種か。
「記憶喪失? ふふ、僕が君のこと忘れる訳ないだろ? 永遠だよ?」
「しゅじん様ぁ」
「ずるーい、あたしもー」
私も、わたくしも、わらわも、うちも、あたいも・・・。
わーわー言うて朝食を食べて、前半組みの準備も済んで、俺も一応昨日買ったナイフを胸に秘めて。
迷宮入り口に到着したのは丁度10時頃になっていたろうか。
穴からはすえた酸っぱいような、俺はけっこう旨そうに思える匂いが漂って来る。
「ん、いくよ」
誰に言うでもなく呟いた。
一階は何の変哲もないフロアだった、儲けもない規則もない。
二階層に降りた瞬間、馴染みの緑面が二匹あらわれた、が、瞬殺。
予習しといて良かったよ。
ゴブリンはメイド達に仕分けさせる。手際がよい、二分くらいで終わる。
「ん、ゴブリンの残りカスって、どうすんの?」
「ほっておけば、ダンジョンスライムが食べます」
スライム有能やね。
で、順調に5階層で下り階段を見つけて休憩に入る。
そこで次の6階層からは魔物の種類が変わるとの助言を引き出した。
迷宮では五階ごとに魔物の縄張りが存在するそうだ。
「敵を知り己を知れば百戦あやぶかろず、ってこの世界にはまだ早いかもな」
「この世界?」
「ん、気にしないでくれ」
「分かりました、ご主人様」
「だけど、兵法も無いなんてなぁ」
「へ、へいほう、ですか?」
「ん、気にするな」
「はあ・・・」
かーしくったー。やっぱ早かったかー、兵法は。あんま知られないほうが良いかも。話ではトップランクの騎士団ですら戦術がなってないからなー。みんなが分かんないのも無理ないかー。
で、次からのメインはオーク。気を付けるのは毒オークとラプターだ。オークと毒オークは遠い種で厳密には別物だが、大昔の人が名づけたからそうなっている。
オークはパワータイプ、棍棒と噛み付き。
毒オークは、引っ掻きと噛み付き、そして毒液である。噛み付く時に毒を出すこともあるが、普通は口を開けて汁を飛ばして来る。
ラプターは小型の恐竜で、曲がり角や部屋の隅など死角になり易い場所から急に飛び掛かって噛み付く。通常4~5匹で狩りをする。
休憩を終えて6階へ降りた。
五分も進むと小部屋があった。中の気配を窺う。罠も無さそうだ。
俺は小部屋へ踏み入る。
みんなに合図を出そうとした時「ギーーシー」鳴き声と共に疾風の大口がひいふう、四匹!!
気を抜いていた阿呆面の俺目掛けて前後左右から襲いかかってきた!!
「ご主人様っ!!」
「ちぃ」
俺はナイフで迎撃を試みる、前方俺のノドを欲しがったトカゲ野郎の横っツラに刃を突き立てる。ぐにっと厚いゴムのような感触、ダメージは無い。つんだ。
ノド、左足ふくらはぎ、右わき腹、右肩、同時。上手い!!
初撃の反動でナイフを取り落としたマヌケな俺へ遠慮会釈もなしに食べ放題のバイキング。いてー。
ガブガブ俺のノドに噛み付こうとしている一匹を無意識に殴り付けていた。
ぼうん、と今まで聞いた事もない様な分厚い音とともにラプターは頭から天井に突き刺さる。ノドが痛い。
わき腹へひじ打ち、右肩へアッパーカット。べだん、ぶんご、良い音。
最後のラプターへ左の手刀を打ち下ろそうとした途端、噛んでいた足を放して後方へ距離を取った。
俺が振り向くと同時、助走をつけ弾丸の如く一直線、俺のノドに噛み付いた、が。
「ほいなっ」
残像は雨散霧消し顎の下から平手打ち上げ、力の向きが変わり、そのまま地面へ叩き付けられる。ラプターは頭を砕かれドロドロになった。
残像にすら追いつけないレベルなのか?
そんなレベルで喧嘩を売ると怪我すら出来ないんだが?
「ご主人様っ!!」
以下略。心配したとのこと。
怪我は表面の薄皮が裂けているだけ、置いときゃ治る。
ナイフはダメだったが、咄嗟の体術がなんとか通じた。
次からは予測が出来るので不意打ちは食わないだろう。
所詮いっぱつ屋だったのだ。
解体は3分で終わった。




