10, 甘々の中の絶望
「ま、いいですわ。じゃあ母様、ラヴィーは貰っていきます」
「ああ、好きにしろ」
「わーい!」
そのまま手を引かれ、私はシアリー、正式には魔王様の一人娘であるリルティルフィシア・ディレイル・フィ・ワースピリットの部屋に連行された。
そして私は、そのままベッドに綺麗に押し倒される。
「……」
「もぅ…ずっと待ってたんですよ?私、貴女と交えられるのをずっと待っていたんです…」
彼女はそう言いながら、ナチュラルに胸を揉んだり下腹部を撫でたりしている。
私はシアリーの背中に腕を回し、
「わかってるよ…。もう魔族になったんだから、好きにしてよ」
「本当ですか?抵抗しませんか?」
「しないよ。レト…母様も言ってたでしょ?好きにしてって」
シアリーは目を細めると、満面の笑みを浮かべながら、私の服に手をかけた。
軽い音と共にボタンが外されていくのを、私は無表情で見る。
「ねぇ、ラヴィー。キスしましょ…?人間でなくなった貴女の唾液も、きっと、脳が痺れるほどに甘いのでしょうね…♡」
「…どうぞ、お好きに」
私が目を瞑ると、即座に唇が触れ合う。
そのまま、私の唇を舌で舐める。開けろと…そう言うように。
それに従ってみれば、人間よりも明らかに長い舌が私の口を、歯を舐め、弄ぶ。
「ッふ…んん"…ッ♡」
淫らな水の音が暫く部屋を支配する。
彼女の唾液を飲めば、ビリビリと脳に電流が走る。ぼうっとしてきて、何も考えられなくなっていく。
「シァ…リー…♡」
「はぁい♡ なんですか?♡」
「っ…もっと…おねがぃ…♡」
「勿論♡ 私しか見れなくなるくらい、幾らでもしてあげますよ〜♡」
また、口の中に舌が入ってくる。
けれど、それと同時に胸も軽く触れられ、自分でもわかるくらいにピクッと跳ねる。
「ん…ッ♡」
「ほ〜ら…もっと善がっても良いんですよ〜?♡」
「ふぁい…おねぇさま…♡」
☆
「…で、お前らの処遇だが…」
ラヴィー側が甘々な時間を過ごしていても、魔界に来た勇者や聖女(偽)と対面している魔王レトのいるこの玉座の間には、そんな空気など無い。
ヴィオラという絶対的戦力が魔王側に取られただけでなく、そもそもヴィオラが聖女であった事や、人間に魔法を与えた魔神や聖神までもが人間を見限っていると、そう伝えられた勇者側は、もう何もできずただ座り込むのみだった。
「はぁ…まっ、人間側まで侵略する気はないしなぁ…」
レトがそう言うと、勇者側は少しだけの笑顔が見える。
ヴィオラが寝返ったとはいえ、人間界には魔族を殺せる道具なんて山程ある。
そう。一度帰れてしまえば、その道具を持ってまた来れる。そう思っていたのだろうが、世界はそう単純じゃない。
レトはそんな思いを持ち、笑顔を見せる勇者達に近づいた。
「お前らな…ラヴィーが何の対策もせずにノコノコついて来たと思うか?」
「へぇ……?」
「これを見ろ」
指を鳴らすと、レトの後ろに大量の武器や防具が現れる。
それらは全て、街を歩いていた際に、ベルフェゴールを通じてラヴィーが渡した、人間界随一の魔族殺害用魔道具だった。
「なッ…なんでそれがッ…!」
キースの問いに、レトは大きくため息をつく。
「わかりきってることだろ。ラヴィーは5歳の時、ここに迷い込んだその時から、魔界側につくことを決めていた。勇者召喚の際や一時的な呼び出し…そんな感じで城に呼び出される度にラヴィーは魔道具を盗んでいたんだ」
レトはそう言うと、今度は一人で檻に閉じ込められているニルドアの方を向く。
「ラヴィーからの伝言だ。ニルドア、お前だけは生かして、人間界に帰してやる」
「はっへ…なんで…?」
「ラヴィーの最後の慈悲だ。5歳の歳に魔界から人間界に帰る際、ラヴィーはお前の魔力核を借りて魔力を倍増させて無理やり扉を開いて帰ったんだ。そのせめてもの恩返し、だとさ」
「ぁ…」
ニルドアは、もう何も答えなかった。
ただ、自分が正そうと思っていた友人は、5歳の時から既に友人ではなく、魔力核という心臓にも等しい概念を相手に使わせていた…。
ニルドアは初めて、自分の魔法の美しさをヴィオラという存在に教え、また美しさに溢れる魔法を使う事ができないと…もう、ヴィオラという存在はいないのだと理解した。
「…魔王様の慈悲、そしてラヴィー様の慈悲に、多大な感謝を申し上げます」
「やっとわかったか…。お前はまだ根っこから腐っていないからな。魔法を威力の方も強くできたら、ラヴィーが睨むくらいはしてくれるかもしれないぞ。じゃあな」
レトはそう言って指を鳴らす。
瞬時に、檻は消え、そして膝をついていたニルドアも消えていった。
「さて…でお前の処遇なんだが…」
「レト、ソイツらは俺らがやろう」
サタンがそう声をかけると、レトはニヤッと笑い、
「そうか。なら私は私で楽しませてもらおう。……そうだ、ベルゼブブ」
「なに〜?」
「ちゃんと死体処理はしろよ。後血の匂いも残すな。それを守るならどれだけコイツらで遊んでも良いぞ」
「っマジで?! やったぁぁあー!久々の玩具〜♪」
楽しげな跳ねる声に絶望する勇者側を睨んでから、レトは消えていった。
彼女もまた、ラヴィーを愛する役目を全うしなくてはいけないから。




