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この村、全員ラスボス経験者でした。 〜もう二度と世界を救いたくない元最強たちのスローライフ〜  作者: にる


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遠回り

朝。


目が覚めたとき、

天井の木目が少しだけ違って見えた。


違うと言い切れない。


見慣れている。

だから、

比べられない。


起きる。


窓を開ける。

風が入る。


風の向きが逆の気がした。

気がしただけ。


外へ出る。


道の曲がり角が、

近い。


近いはずがない。


歩幅は同じ。

速度も同じ。


それでも、

早く着く。


井戸。


人はいる。

並び方が、

昨日と違う。


昨日を思い出そうとして、

やめる。


思い出せるほど、

はっきりしていない。


水を汲む。


桶を持ち上げると、

重さが軽い。


水の量は同じ。


軽いのは、

自分かもしれない。


宿へ戻る。


入口までの距離が、

長い。


さっきは近かった。


近いと長いが、

同時にある。


アーシャが言う。


「今日は橋を使わないで」


「どうして」


聞いたあとで、

聞く必要がなかったと気づく。


「向こう、遠いから」


遠い。


昨日は近かった気がする。


畑へ向かう。


道が一つ、

無い。


無いと言い切れない。


あるはずの細い道が、

草に隠れている。


踏めば通れる。

でも、

踏まない。


ガイルは畑の中央ではなく、

端にいる。


「回って来い」


それだけ。


回ると、

距離が伸びる。


伸びても、

時間は余る。


余るのか、

減ったのか。


判断しない。


昼。


広場。


影の位置がずれている。


太陽は同じ高さ。


ずれているのは、

自分の立ち位置かもしれない。


会話は続く。


「今日は風が強い」


風は弱い。


誰も訂正しない。


川へ向かう。


飛び石は広い。


昨日より、

一つ減った気がする。


減ったかどうかは、

分からない。


跳べば届く。


でも、

跳ばない。


遠回りを選ぶ。


選んだつもりはない。


足が、

自然にそちらへ向く。


遠回りの道で、

同じ木を二度見る。


同じはずがない。


戻ったわけでもない。


確認しない。


鍛冶場。


入口の板が、

少し角度を変えている。


閉じていない。

でも、

まっすぐ入れない。


「回って」


ドラムが言う。


回る。


回ると、

距離が伸びる。


伸びても、

急がない。


夕方。


宿へ戻る。


布団が既に敷かれている。


早い。


早いが、

間に合っている。


アーシャが言う。


「今日は、歩いたね」


歩いた気がしない。


歩いた距離は長い。


でも、

疲れていない。


軽い。


軽いのが、

少しだけ変だ。


夜。


部屋。


窓の外。


暗い。


暗いのに、

道の形だけが浮かぶ。


近い道。

遠い道。

無い道。


全部、

あるようでない。


考えない。


考えると、

どこかに着いてしまいそうだ。


布団に入る。


遠回りの方が、

安全だと身体が知っている。


安全の理由は、

分からない。


分からないまま、

呼吸が整う。


位置はずれる。


でも、

生活はずれない。


息は、上がらなかった。

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