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この村、全員ラスボス経験者でした。 〜もう二度と世界を救いたくない元最強たちのスローライフ〜  作者: にる


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戻らない圧の定着

朝。


目が覚めた瞬間、

今日は昨日の続きだと分かった。


理由はない。

そういう感覚だけが残っている。


起きる。

服を着る。

床の音は、もう気にならない。


外に出る。


空は普通だ。

雲の位置も、普通。

風も、普通。


普通すぎて、

比べようがない。


井戸。


桶の数は確認しない。

順番も確認しない。


誰かが先に汲み、

誰かが後になる。


それで回る。


水は冷たい。

昨日より、少しだけ。


宿。


椅子の位置は変わらない。

使われていない椅子も、

そのままだ。


戻される気配はない。


アーシャが言う。

「今日は、少なめでいい」


何が、とは言わない。


「足りる?」


「足りる」


即答。


足りる理由は、

考えない。


畑。


畝は短いまま。

増えない。


ガイルは、

端の端で作業している。


「増やさないんですか」


「戻らない」


それだけ。


重心を落とす。

動きに無駄がない。


鍛冶場。


棚の空きは、

埋まらない。


ドラムは、

必要なものだけを触る。


「作らないんですね」


「作らない」


「減ってますけど」


「減る」


理由は言わない。


昼。


広場。


人はいる。

静かだ。


話題は減っている。

でも、

会話は途切れない。


沈黙が、

自然に挟まる。


誰も、

補おうとしない。


午後。


川。


飛び石の間隔は、

昨日と同じ。


広いまま。


ユウトは、

跳ばない。


戻る道を使う。

遠回りになる。


それでいい。


夕方。


影が伸びる。

影は教えてくれる。


ここに何があったかではなく、

ここに何が戻らないかを。


アーシャが布団を片付ける。

枚数は、

そのまま。


ガイルは、

通らない場所を作る。


ドラムは、

入口を一つ閉じたままにする。


誰も、

開け直そうとしない。


ルーンが言う。

「これでいい」


誰も頷かない。

誰も否定しない。


夜。


部屋。


窓の外を見る。


暗い。

空白がある。


空白は、

埋めるためのものじゃない。


避けるためのものだと、

身体が知っている。


考えない。


考えると、

戻そうとしてしまう。


布団に入る。


戻らない。

戻さない。

探さない。


それが、

この村の速度になる。


生活は続く。

減ったままで。


それが、

当たり前になる。


ユウトは、

目を閉じた。


圧はある。

でも、

選ばなくていい圧だ。


それだけだった。

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