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獣たちの奇妙な行動




白い獣《JOKE》に私たちは、街のどこかに連れて行かれた。


かなり痛んだ建物だが、大きい劇場らしい。

獣が街に溢れ返る前は、さぞ豪勢な建物だっただろう。

しかし今は、不気味に傾いたデカい廃屋に過ぎない。


「《JOKE》、このまま君は、居なくなってくれないか?」


また姿の見えない声が聞こえた。

《JOKE》は、少し怒ったように見える。


「ほほほほほ……。

 それは、流石に受け入れられませんね、《CATCH(キャッチ)》。」


姿を見せない声の主は、《CATCH》と呼ばれているらしい。

《JOKE》もそうだが、本名ではなさそうだ。

この言葉を話す獣たち、白い仲間(ホワイトゲーム)は、仲間を仮名で呼び合っているらしい。


「何でもいい。

 殺すなら、さっさと殺せ。」


そう私は、《JOKE》に脅すように言った。

アクセルが代わりに応える。


「狩人を殺しても生き返るだけで意味がないと言ってるだろ。

 俺たちの目的は、あんたらを殺すことじゃない。」


「うるせえなッ。

 臭い臭い糞野郎ピジェーツ共に囲まれて鼻が曲がりそうなんだよ。」


私が騒いでいる間に《JOKE》と《CATCH》の話は、先に終わったようだ。

結局は、《JOKE》が提案を受け入れてしまったらしい。


「分かりました、《CATCH》。

 しかし……愚禿わたくしは、飽くまでも反対です。

 このことは、《BOSS》に速やかに報告しますからね。」


「その必要はないよ。

 《BOSS》も俺のやろうとしていることに理解をしてくれたから。」


《CATCH》がそう言うと《JOKE》は、目玉をギョロっと動かした。

これだから獣の表情は、何が何だか分からない。


《JOKE》は、アクセルや他の獣を引き連れ、退却した。

建物の上、物陰、あらゆる場所から獣の気配が遠ざかっていく。

完全に獣の気配が無くなると《CATCH》は、私とティリーに話しかけて来た。


「もう邪魔する者はいない。

 狩人たちよ、劇場に入って来てくれるかな?」


「……嫌だと言ったら?」


私がそう言うとティリーは、ビクッと震えた。

余計なことをして相手を怒らせるなという顔だった。


《CATCH》は、穏やかな口調で答える。

もっとも獣の声は、耳障りでゾワゾワするだけだが。


「もちろん君たちの意見を尊重する。

 ここまで来て貰って、それで俺は、納得することにしよう。

 だが、ぜひ、中に入って欲しい。」


やおらティリーが私に話しかけてきた。


「ナーシャ、ともかくここは、相手を怒らせずに…。」


「中に入ったら獣がウジャウジャいて集団レイプされるとしても?

 私たちに繁殖用の家畜になれっていう提案でも言いなりになる?」


私がそう話すとティリーは、目を丸くした。

その上、《CATCH》は、私の言ったことを否定しようとしなかった。


「…すべて君たちの意見を尊重する。

 ここから立ち去りたければ受け入れる。

 俺は、追いかけたりしない。」


私は、劇場の中に入っていく。

ティリーも私に続いて中に入ろうとした。


「待って、あんたは、外にいな。」


私は、素早くティリーを止める。

進んで二人とも罠に落ちる必要はない。


「もし戦うことになったら、デカい狙撃銃が使えないかも知れない。

 あんたは、外にいな。」


私がそう言うと《CATCH》は、話しかけて来た。


「いや、心配いらない。

 狙撃銃なら使えるよ。

 劇場の中は、()()()()()広いからね。」


私は、少し考えようとする。

だがティリーは、逡巡しない。


「じゃあ、ナーシャ、私も着いていきます。

 いいですね?」


ティリーは、そう言って私の傍に駆け寄って来た。

私は、溜息を吐いて奥に進んでいく。




劇場の中は、荒れ放題だった。

だが障害物バリケードなどもなく舞台まで客席が広がっている。


臭い。

相当の獣が劇場に集まっている。


「……ティリー、油断するなよ。」


「もちろんです。」


やがて天井の一部が、バキバキと音を立てて壊れ始めた。

いや、壊れている訳じゃない。

天井の一部分が開閉するように改造されているらしい。


天井に大きな扉が作られているようだ。

獣たちが劇場を改造したらしい。

その入り口から大きな獣が劇場の中に入って来た。


真っ白な魚によく似た巨大な獣で、空を飛んでいる。

頭には、やはり鹿の角が生えていた。


こいつが《CATCH》だ。

ずっと私たちの頭の上を飛んでいたんだ。

《CATCH》の声は、空から届いていた。


「このデカい奴が《CATCH》か。」


私は、20連星で《CATCH》を攻撃する。

白銀の光を放つ星が次々に白い獣に命中する。


だが《CATCH》は、避けようともしない。

ただゆっくりと宙に浮いているだけだ。


「!」


何やら音が鳴り始めて私は、舞台の方を見る。

そこには、獣が何十匹も集まっていた。


「■■■■■■■■ッ!」

「■■■■■■■■―――ッ!!」

「■■■■■■ッ!」


獣共は、何やら不吉な声をあげている。


「撃てッ!

 あいつらを左から順番に撃ち殺せ!!」


私は、ティリーにそう言った。

私は、右端から獣に攻撃する。


ティリーも獣共の頭か心臓に水銀弾を撃ち込んでいく。

だがティリーが攻撃しても獣共は、避けようとも反撃しようともしない。

ずっと不気味な声で吠え続けているだけだ。


(こいつら、頭おかしいのか?)


「×××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××!」


《CATCH》も何か甲高い鳴き声を出している。

ずっとそのままだ。


「…気味が悪い…!」


そのまま獣共は、無抵抗のまま死んでいった。

親玉らしい《CATCH》も私とティリーの攻撃を全身に食らって息絶えた。


「…いったい、何がしたかったんだ…?」


折り重なる死体を前に私とティリーは、眉間に皺を作る。

ティリーも首を傾げた。


「………さあ?」


私とティリーは、虚しい感情に包まれた。

抵抗しない獣を一方的に殺すのは、初めての経験だ。


「おかげで来たこともない場所に連れて来られた。

 教会地区に急ごう。」


そう私は、ティリーに声をかけ、劇場から出て行った。






「ァ××ィィィイ×《CATCH》……×××…。」


誰もいなくなった後、赤い狩人の獣が倒れた《CATCH》に近づく。

血塗れの《CATCH》は、赤い狩人の獣に答えた。

もう命の火は、消えかけている。


「……やあ、《ALTER》。

 やっぱり、ダメだったよ…。」


自分の馬鹿げた行為を自嘲するように《CATCH》は、弱々しく笑った。


「俺は、音楽で……誰もが分かり合えると思ったんだ。」


「×××が×××しえw××asss××××。」


「……皆を悲しませてしまうだけだったか。

 でも、俺は、今、とても…ま、満足してるんだ。

 死んでいった仲間たちも、同じだと思う。」


《CATCH》は、無抵抗のまま虐殺された舞台の上の獣たちを見つめて言った。


「け、獣に変わり果てて…俺も皆も、何もかも恨んだ。

 でも、観客を前に、音楽をやれて………舞台に立ったんだよ。

 二度と舞台に立てないと思ったけど…良かった。」


それだけ言って《CATCH》の心拍が停止する。

大きく上下していた胸の動きが静かに止まった。


赤い狩人の獣は、恭しくお辞儀をした。

七つの目玉は、不気味に宙を睨んでいる。

こいつは、いま何を思っているのだろう。


やがて静かに彼は、劇場から立ち去って行った。




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