-第21-カジノのルール-
「よし……これにしよっと」
リーナは1つテーブルの前に座る
そこは誰でも簡単できるルーレット
赤と黒……それこそ、一番有名な物なのかもしれない
「……本当にこれでいいの?」
「ええ、まあ……見てなさい」
リーナがルーレット前の円椅子に座ったのを女性のディーラーが確認すると
手元に白い球を1個持ち、声をかける
「では、どこに賭けるか……置いてください」
「リーナ……どこに……」
リナリアの呼びかけよりも速くリーナは黒に賭ける
それを呆れた様子で一息付くと……無言で見る事にした
その後……回り始めた球は見事に黒の23に入る
その黒にリーナが賭けた枚数は2枚
『もし白だったら……』
リナリアの心配を余所に4枚になったコインを今度は白に置く
すると……見事に白に球が入り、リーナのコインは8枚に増える
そんな事を4回繰り返し……リーナの持ちコインは32枚
そこでリーナは席を立ち、その場を離れると
リナリアはリーナの近くに寄り、話かける
「もういいの? 調子よかったみたいだけど」
「……次は負けるわよ」
「え?」
「はぁ……リナリア、あんたは本当にカジノの『裏』を知らないのね」
「裏?」
リナリアはきょとんとした顔でリーナの顔を見ると
リーナは溜息を付き、ルーレットのディーラーを指さし言う
「あの子は私にわざと勝たせて、最後の最後で全部取る狙いだったのよ」
「……わざと? だったら始めから取ればよかったんじゃ……」
「もしも最初に私のコインを取ると、リナリアあんたは次にやりたいと思う?」
「……やらないわね」
「そ、たしかに運もあるけど、ルーレットの球はある程度勢いで変えれるのよ
それを利用すれば、白と黒……好きな方に落とせるって事」
「それはリーナがやめたのと何の関係が?」
「あるわよ……さっきも言ったけど、ある程度勝たせる事でコインを取る
それは間違いなくて、狙い目は調子に乗った時
簡単に言えば何度も当たって頬が緩んだ時、それが負け時なのよ」
「……そうなの?」
リーナの言葉にリナリアは首を横に傾げ『?』を頭に浮かべているような
仕草をリーナの目の前でやる、それに肩を落としながら喋る
「……あんたは本当に何も知らないのね」
「カジノなんかいかないもの」
「あーそうね……私は変装して人間界のカジノ行ったからその違いかもね
まぁ……暇が合ったらカジノの本でも読んどきなさい」
「気が向いたらね」
「あっそ……じゃあ、しばらくは私の後ろで見てなさ……」
リーナがそこまで言いかけた時、リナリアはあるテーブルの席に付く
それに呆れながらリーナはリナリアの後ろに付くと小さな声で話かける
「大丈夫なの?」
「……こういうのはロイ様が好きだったので」
そのゲームは『カードゲーム』
ミミリアが行った絵札を使った物と一緒なのだが
こちらは3種類のカードがある
『戦士』『魔法使い』『弓使い』
元はどれがどれに強いと言う
簡単な駆け引きを楽しむゲームのはずなのだがこれは少々違っていた
テーブルに配置したカードが人となり動き戦争を始める
そのカードの枚数は15枚
最後まで残ったカードのプレイヤーが勝利と言うゲーム
「やめときなさい、明らかに向こうが有利よ」
「大丈夫、ロイ様に教えて貰ったこの腕、よく見ておきなさい」
『……その自信はどこから来るのよ』
リーナの心のツッコミを余所にリナリアの元に21枚のカードが渡される
それは、先ほどの3枚の7セット分、ようはこの中から好きなように編成し
テーブルの場、戦場にカードを置けと言う意味なのだろう
『さて、相手はロイ様だと思ってやるか
それとも……ただの雑魚と思ってやるか……』
そう考えながらリナリアは場にカードを置いていく
その置き方はまるで陣を組んでいくように……
それを見た男性のディーラーの目つきが厳しくなる
『あらら……相手に力量を悟られちゃって
この子は度胸があるのか……それとも自信がありすぎるのか……』
「その配置でいいですか?」
ディーラーの言葉にリナリアは両手をテーブルの上に置き頷く
すると相手のディーラーもテーブルに両手を置く
すると……光と共に置かれたカードが全てオープンされると
そのカード達は小さな人形へと姿を変える
そしてテーブルは平地へと姿を変える
相手の場は『戦士』6枚 『魔法使い』6枚 『弓使い』3枚
リナリアの場は『戦士』4枚 『魔法使い』5枚 『弓使い』6枚
戦士は弓に強く、弓は魔法使いに、魔法使いは戦士に強い
これだけ見れば明らかにリナリアの分が悪い
だけど、このカードの本質はここから始まる
「全軍、行軍開始
戦士は前へ、中央は弓、後方は魔法使い」
リナリアの言葉にカードの位置が変わって行き
相手の陣へ動いていく
それに対する相手のディーラーは笑顔で動かないでいた
それも一言も喋らずに
「……弓隊、自分と相手の間に矢を発射」
リナリアの言葉に弓使いは矢を何もない場所に発射する
すると弓が突き刺さった地面に落とし穴ができる
「……卑怯ね」
「そんな事はないわ、相手の陣に攻め込むんだから
相手が防衛するのは常套手段よ」
「たかがカードゲームなのに……」
「たかがじゃないわ、これは戦争よ
舐めた気持ちで行けばあっと言う間に負ける」
「……カジノを知らないのによくこのゲームは知ってるわね」
「ロイ様が魔王時代、暇つぶしにこのゲームで私と遊んでくれた事があるの」
「その時の勝敗は?」
「176戦176敗」
「……それはあなたが手を抜いたって事?」
リーナの顔を見ず、戦場を見たまま微笑み言う
「……ロイ様が強すぎたのよ、あのお方は頭を使わせたら優秀すぎるもの」
「そんなんで、目の前の相手に勝てるの?」
「……さぁ? でも……ロイ様に教えて貰った事を全て出し切るわ
それで勝てたのなら……いつかロイ様に再戦を申し込みたい」
「勝ったら何かあったわけ?」
「……ロイ様が一緒に寝てくれる」
その言葉にリーナは呆れる
そんな事のためにロイは本気をだし、リナリアをコテンパンにしたのかと
一度でも負けてあげればそこでリナリアは満足したのではないかと……
だが、そこでリーナは気づいた
『なるほど……こういう時のためにリナリアを鍛えたのね
まぁ……この子も頭が良い方だし……見ておけってことね、ロイ君』
リーナはそれ以降口を開かず、リナリアとディーラーの戦いに集中した




