後日談2 お母様はすごい人
娘視点です。
本編から20年弱経っています。
私が世界で一番尊敬しているのは、お母様です。
お母様は、一昨年、29歳の若さで公爵位を継ぎました。
お祖父様はご健在ですが、体力も衰えてきたということで、家督をお母様に譲られたのです。
それ以来、お母様は女公爵となってこの国の繁栄を支えるべく日々戦っておられます。
いえ、戦うと言うと誤解を招きますね。
お母様は、別段、伝統的なやり方を批判しているわけではありませんもの。
サルード公爵領は、この20年ほどで飛躍的に発展しました。
大規模な街道整備や領主設置の大型飼料倉庫の部分貸しといった政策が、お祖父様の許可の下実行されてきています。
当初は、多額の資金投入に眉を顰める貴族も多かったのですが、数年して効果が見られると、真似をする家も出るようになったそうです。
これらの政策はお母様の発案で、婚姻以来何度となくお父様と共に領地を訪れて改善点を見付けてきました。
お母様が仰るには、“経営の合理化”だそうで、これまで領民がそれぞれ用意していたものを大型化・共有化することで資産の有効活用を図るんだそうです。
領主の方で用意して使用料を取る形で資産を回収し、整備や補修を計画的に行うことで“費用対効果”というものを向上させるのだとか。
“費用対効果”というのは、かかった費用に対してどれだけ効果が出るかを追求することだそうです。
一朝一夕にできることではなく、何年も掛けてゆっくりと浸透させるのに、随分苦労なさったと伺っています。
その過程で、お父様が色々と活躍されたそうで、我が領の中では、お父様の評価がとても高いです。
残念ながら、王都では、お母様の腰巾着のような扱いですが。
お母様がどこに行くにもお父様をお連れになるのでそのように言われてしまうのですが、なにもそんなに悪し様に言わなくてもいいと思います。
たしかに、お父様は、国王陛下の王子でありながら王位継承権もなく、爵位もありません。
けれど、お母様はお父様を深く愛し、頼りにしてらっしゃるから常にご一緒なのです。
政策の立案は、確かにお母様ですが、実際に施策の時には、お父様が関係するところに話を通したりするのです。そういうのを“根回し”というのだそうです。
お父様もまたお母様を深く愛し、お母様の理想実現のために動かれています。
私も、いつかお母様のように心を結べる方に嫁ぎたい。
公爵家はお兄様がお継ぎになるからと、私にはいくつか縁談の申し込みがあるそうです。その中には、王太孫殿下との婚姻のお話もあると伺っていますが、それってどうなのでしょう?
我が家のあり方は、侮られることなく、存在感を持ちながら、それでいて必要以上に力を求めないことが肝要なのだとか。
私が王家に嫁ぐというのは、少し行きすぎなのではないかと思うのです。
お母様のご意見を伺ったところ、
「理屈ではなく、心で選べばいい」
と言われてしまいました。
私達に対する時のお母様の言葉は、飾らなすぎて逆に難しいです。
心で選ぶというのは、私がどうするか選んでいいということなのでしょうか。
婚姻は、家と家のもの。まして、相手は王家です。
私の心で選ぶなんてことが許されるのでしょうか。
もし、それでお兄様にご迷惑をお掛けするようなことになったらと思うと…。
悩む私に、お母様はもう一言くださいました。
「どちらにせよ、うちは揺らがない」
お母様は、やっぱりすごいです。
これにて完結です。
今回のお話は、後日談のリクエストでの、20~30年後、子供視点、NAISEI系、というネタを使っ
てみました。
「コミュ障」は、概ね読者からのリクエストによって構成されています(^^)




