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天命を巡る異術師の怪奇譚 〜威嶋香奈編〜  作者: 紅薔薇棘丸
序章「香奈の公安術師デビュー」
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0-2「少女の危機」

 どうも。読んで頂きありがとうございます。

 実は当作品は『天命を巡るシリーズ』と呼ばれる一作です。

 こちらの『天命を巡るシリーズ』に入る同人誌制作中の【空峰和平編】が電子書籍で読める予定を計画していました。そちらの評判を稼ごうと執筆した作品が【威嶋香奈編】です。

 今後は【威嶋香奈編】を各サイトを通して無料で読めます。もし良ければ【空峰和平編】を電子書籍で購入してもらえると助かります。

 どちらにせよ『天命を巡るシリーズ』をよろしくお願いします!

 しっかりと触手は絡んでおり、逃げる隙を与えてくれなかった。


 このまま殺されてしまうのか不安を抱く。誰か助けてくれるかも知れないとか願いながら抵抗を試みる。しかし、どうやっても触手から抜け出させるはずもなかった。


「どうして逃げたんだい? もっと利口な選択肢はあったはずだろ? そんなに怖かったのかな?」

「うっ……! は、離してぇ……! お願い……!」


 声を振り絞って命乞いする。まだ死にたくなかったんだ。やり残したことは山ほどある。それを実現しようと頑張って来た。


 それが最悪な形で終わろうとしている。けど、最後まで私は生き延びようと頑張った。


「さて、用事を済ませようか? これから君をアジトに連れて行く。そこで売人が待っているんだよ。約束の時間を過ぎる訳にはいかない」

「や、やだっ……! 助けてぇ……!」

「ふっ。哀れだよな? せっかく力を得たのに活用できなかった。一度だけ使えて良かったかもな?」


 縛る力が強まる。もはや、抵抗は叶うはずもなかった。これで人生は閉幕するかも知れない。呆気ない最後だった。


 そう思った瞬間、斑斗が変な独り言を漏らす。それは微かな希望となって訪れた。


「そこまでだぁ!」

「ちっ。来たのか? 相変わらず邪魔な奴だ」


 違う箇所から触手が出て来る。見える範囲では何が起きたのか分からなかった。しかし、すぐ状況を理解する展開が訪れる。


「遅くてごめん! すぐ解いてやるからな!」


 謎の一言と共に触手は千切れていく。触手から解放され、身動きが取れる状況に変わった。


 さらに、目の前を男が立ち塞いだ。けど、斑斗は微塵も動揺しなかった。


 突如、現れた知らない男。彼は不思議な服装に身を包んでいた。


 そいつは刀を構え、いつでも斬り込める状況を作って斑斗と向き合う。


「お前が近頃出回っている妖怪使いだな? 悪いが公安術師協会から任務で来た者だ。ここでお前を斬る!」

「つまらない話をしに来たんなら、大人しく死んでくれよ」


 斑斗が手を伸ばした。その指先が示す先にいる男を狙って触手が襲い掛かる。


 しかし、それらは容易く切り捨てられた。巧みな剣捌きで触手を薙ぎ払ってみせる。


「この程度かよ。全く口だけじゃねぇか!」


 男は踏み込んでから一気に駆け出した。斑斗と空いた間合いを縮め、斬れる範囲まで踏み入れていく。


 充分な間合いから即座に刀を振った。けど、斑斗は一歩下がって回避する。続けて素早く刀が振るわれていった。


「くっ! ちょこまかと動くんじゃねぇ!」

「お前は大人しく斬られてくれるバカしか相手したことないのか? それに遅いんだよ!」


 急に斑斗が瞳を光らせた。赤い光を灯した瞳で男を見つめる。


「ぐわっ⁉︎ そ、その瞳は……⁉︎」

「知っているだろ? 我が術式であの世に送り出してやるよ!」

「ぬわぁぁぁあああ⁉︎」


 どこからか電撃が男を襲った。その電撃は瞳から作用した力だと私は理解する。何故だかで電撃を作用する元手が分かってしまったのだ。


 このまま見ているだけでは埒が開かない。けれど、自分に出来ることなど一つも見当たらない状況に陥っていた。


 逃げたいけど、辺りは元々いた道場じゃないみたいだ。つまり、私は別空間に飛ばされていた。


 これでは逃げようがない。ただ、見守るしか選択肢が残されていないのは歴然としていた。


 斑斗が起こした電撃で男は動きを止める。その場に膝を突き、静かに項垂れた。


「や、やるな……!」

「手応えがない。その程度で挑みに来るとは情けないねぇ?」


 斑斗が思いっきり男を蹴り飛ばす。蹴り飛ばされた男は後ろに転がり、勢いよく倒れた。強烈な蹴りに続いて再び電撃を放つ。


「ぐわぁぁぁああ⁉︎」

「くっくっく! 良い悲鳴だなぁ! 今度こそは餌食になってもらうぞ!」


 痺れ切って動けない状態を狙い、斑斗は男を触手で縛り上げる。一度でも触手に縛られたら、もう打つ手は残っていない。


「そんなっ! ここで負けちゃうの! 私を助け出してよ!」

「……くっ。誠に不甲斐ない。けど、間に合ったみたいだ……」

「え?」


 最後に告げた一言が希望だった。何だか異様に胸が騒ぎ出す。何者かが近づいて来る予感がしていた。


 すると、再び辺りが揺れ始める。さらに、空間に亀裂が入り、粉々に飛び散った。


「何っ⁉︎ 怪奇領域が破られた⁉︎」

「えっ⁉︎ 元の場所に戻れたの⁉︎」


 周辺の景色が蹴り破ろうとした玄関に戻っていた。さらに、加えて屋根がぶち破られる。


 どかーん!


「助けに来たぞぉ!」


 破壊された天井から覗く巨人。それと巨人の肩に乗った女性が救出しに来てくれたみたいだ。


 触手から縛られてしまった男は思わず笑い出してしまう。


「増援が来たみたいだな? お前を相手するのは俺じゃあ不足だったんでな!」


 次の瞬間、穴の空いた天井を通って男が舞い降りた。彼は黒い翼を広げ、鋭い瞳で相手を睨みつける。


「お終いだ。お前ほどの相手は久々だったかもな?」

「くっ! ここでくたばれるかぁ……!」


 再び斑斗は電撃を放とうとするが、先に降り立った男に制されてしまう。斑斗よりも早く瞳から一筋の光が放たれた。


 まるで槍の如し。斑斗は光で瞳を貫かれていた。光が両目を貫き、加えて鋭い刃が斑斗の肉体を切り刻む。


「ぐはっ⁉︎」


 一瞬でズタズタに切り裂かれた斑斗から血が噴き出した。そのまま斑斗は後ろに倒れる。


「終わったみたいだな? 二人ともよくやった」

「さすが翔介さん! やりましたね!」

「やっぱすげぇや。これが【一級】の力だな」


 どうやら助かったようだ。しかし、目の前で憧れだった人が血を流しながら倒れている。しかも、両目が潰されて酷い有様だった。


 こんな結末で良かったのか疑問である。私は救われただけでも幸運だったと言い聞かせようと思った。


 その後、何やら作業着を纏った人たちが駆けつける。中には警察官もいたので、安心して保護されることが出来た。


「無事で安心したよ。君 よく頑張ったね?」

「あのぉ……斑斗はどうなっちゃったんですか? これは悪夢ですよね?」

「悪い。正直に言わせてもらうけど、白茂斑斗くんは亡くなったよ。あの時点で彼はとっくに亡くなっていたみたいなんだ」

「……え?」


 事情を説明してもらった。これらは全て斑斗の意思で行われたことではなかったらしい。


 自然と涙が溢れて来た。あんなに優しかった人が得体の知れない化け物に憑依されていた事実。それだけは絶対に許せなかった。


「それと一つだけ君にお願いがあるんだけど良いかな? これは凄く重要な話なんだよ」

「後にしてください。今は聞けません」

「そうか。それなら後ほど伺いに行くね? もしかしたら君は妖怪討伐に向いた人材かも知れないんだ。だから、神を試したい」

「……っ」


 つい黙り込んでしまう。警察官が言ったことは耳をすり抜けて聞いてなかった。


 どうでも良いとばかりに思っている。それは斑斗が亡くなったのが原因だった。


 事件が起きた道場は後で解体作業を行う予定みたいだ。


 私では思い出の場所を守れない。何故なら力が足りないから当然だった。


「本当は守りたかったんだよ? 斑斗と剣術稽古に励んだ場所だけは、絶対に……」


 しばらく悲しみに暮れていた。最後に少しだけ話したかったと胸に後悔が生じる。


 ––––いっそ死んでしまおうか?


 そんなことを考えていた時だった。


「ここにいたんですね? 探しましたよ?」


どこからか呼びかけて来る声。それは私に向けられているのは分かっていた。


 しかし、返事したくなかったんだ。もう少し静かにして欲しかった。それでも呼びかけた声は止まない。


「もしもーし? 聞こえてませんかー?」

「うるさい! お前は黙れ!」

「ふえ〜。恐ろしいなぁ。これじゃあ話が聞けないじゃん」


 ロクな奴がいない。私は幼い頃に捨てられて孤児として育てられた。その隣には斑斗が付き添ってくれたことを覚えている。


 真っ先に声かけてくれた優しい人。彼は私にとって掛け替えのない存在だった。


「今回は引き下がります。次またどっかで伺いますね––––うわっ⁉︎」

「お前は退け。俺から話す」

「で、でも彼女は話せない状況みたいです!」

「黙っていれば良い。すぐ終わる」


 歩み寄って来る人物が後ろで立ち止まった。そこで優して呼びかける。


「悔しかったよな? でも、いつまでも泣いていたってしょうがない。それに人生は長いんだから思い出に浸り続けるのは良くないだろう。それと聞いて欲しいことが一つある」


 男が慰めるような一言をかけてくれる。ただ、その後で告げられる用件は私を驚愕させた。

 読んで頂きありがとうございます。

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