処女日記第三 グラシア
私の名前はグラシア・ホワイトハート。
今、私は自分の深層意識の世界の中で、ぼんやりと過ごしています。
なぜなら、今はもう一人の私がこの体を操っているからです。
もう何週間も、自分で体を動かしていません。もう一人の私――セルリアンの姫――は、何年もこの体を自分のものとして使っています。
私は一度も取り戻そうとはしませんでした。だって、彼女の方が私よりずっと頼りになって、能力が高いからです。
ここから彼女の行動や人との関わりを眺めているのは楽しいけれど、本当の体で動く感覚を恋しく思わないと言ったら嘘になります。
時には、直接もう一人の私と話せたらいいのに……と思うこともあります。
今日は、彼女が独り言を呟いているのを聞きました。
彼女は新しいホムンクルスの体を作る研究をしようとしています。
その一部が私のためであることを願っていますが、彼女がいつも冷たくて無感情なことを知っているので、期待しすぎてはいけませんよね。
スレイヤーズHQの中で、もう一人の私とリシテア先生は新しい研究プロジェクトに夢中になっていました。
私の姿をした魂の入っていないホムンクルスの体が、ベッドの上に横たわっています。
リシテア:「完璧なホムンクルスを作るには、魔力回路も完璧に調整しなければいけないわ。
体の隅々まで滑らかで均等な魔力循環が鍵よ。」
グラシア:「なるほど……だから私のミスティックドールは意識を保持できなかったんですか。」
リシテア:「その通りよ! さあ、集中して魔力をホムンクルスにしっかり流してみて!」
グラシア:「わかりました、リシ先生!」
彼女は鋭い集中力で、魂のない体に魔力を流し始めました。
その体が動き始めます。
グラシア(心の中で):これでいけるわ!私ならきっとできるはず!
しかし、しばらくするとあの体が動かなくなりました。
グラシア(驚いて):「そんな!? まさか! 計算を間違えたの!?もっと頑張らないと!」
リシテア:「は〜い!そこで止めて!」
グラシア:「えっ!?」
彼女は指示通り魔力を止めたけれど、顔には困惑が浮かんでいました。
リシテア:「魔力を流し込みすぎたわ。マナコアが機能不全を起こしている。」
グラシア:「ええっ!?」
リシテア:「少し落ち着きなさい、グラシア……急がなくてもいいのよ。」
グラシア(叫んで):「私は落ち着いています! とっても落ち着いていますよ!」
重い沈黙が落ちました。
グラシア(目が潤んで):「……それなのに失敗して……先生がくれた大切なホムンクルスの体を……私の不出来のせいで無駄にしてしまいました……」
リシテア:「大丈夫よ!そんなに気にしないで……ホムンクルスの体ならまだいくらでもあるから!ね――」*頭を撫でようとする
苛立ちのあまり、グラシアはリシテア先生の手を払いのけて部屋を飛び出しました。
リシテア:「待って!グラシア!!」
私は彼女がこんなに感情的になるのを見て驚きました。
魔法の研究で失敗したことが、彼女の天才魔導士としてのプライドを傷つけたのかもしれません。
彼女は好きな場所――学校の屋上へ走っていきました。
そこで彼女は遠くの地平線を見つめながら、何度も深呼吸をして自分を落ち着かせていました。
それから彼女はスマホを取り出して電話をかけました。
*プルルル……*プルルル……
グラシア:「出てよ、馬鹿!」
ようやく電話が繋がりました。
アストン:「え、グラシア?君からの電話なんて珍しいよ。何か用?」
グラシア:「うるさいわね!今すぐ学校の屋上に来なさい!」
アストン:「わ、わかった……」
彼女はすぐに電話を切って、彼が来るのを待ちました。
数分後、アストンが屋上に到着しました。
グラシア:「遅いわよ、馬鹿!」
アストン(申し訳に微笑む):「ごめん、グラシア!今日は教室の掃除当番だったんだ……」
彼の優しい笑顔を見ると、少し心が和らぎました。
でも彼女はすぐに顔を背けて、微かな笑みを彼に見られないようにしました。
落ち着いた後、彼女は彼の襟首を掴みました。
アストン(驚いて):「ちょつ!?グラシア!?」
グラシア(きっぱり):「私の研究を手伝いなさい!これがスレイヤーズの先輩からの命令よ!『嫌』は認めないわ!」
アストンは素早く頷きました。断ったら面倒なことになるとわかっていたからです。
私も中から見ていて、二人の棘のあるけれど愛らしいやり取りに思わず小さく笑ってしまいました。
グラシア:「放課後、リシテア先生のアパートで!場所はわかるよね!?」
アストン:「う、うん……ヴァリヨネスが引っ越すのを手伝ったときに行ったことがあるよ!」
グラシア:「よろしい!それじゃあ、さっさと行きなさい!」
彼女は彼を軽く押して、くるりと背を向けて歩き出しました。
アストン:「えっと……本当にそれだけ?」
グラシア(振り返らずに叫んで):「さっさと行きなさいって言ってるわよね!?」
アストン(慌てて):「あっ……はい!」
彼は慌ててドアに向かって去っていきました。
グラシア(にやり):「ふん……馬鹿……」
中から見守る私には、もう一人の自分の心に、ほんのり幸せが広がっているのがはっきりとわかりました。
放課後、リシテア先生のアパートで、もう一人の私は研究の準備をしていました。
インターホンが鳴りました。
それはアストンと思って彼女はすぐにドアを開けました。
グラシア(微笑んで):「やっと来たのね、馬鹿――」
しかし、彼の後ろにエリセナが一緒にいるのを見て、彼女の笑顔が少し曇りました。
エリセナ(元気に手を振って):「ヤホ〜!グラシア!研究に興味があるからついてきちゃった!ダメかな?」
グラシア:「もちろん大丈夫よ!むしろこの馬鹿よりあんたがいてくれた方が助かるわ!」
アストン:「そんな!?君が直接に僕を呼んだったのに!?」
グラシア(そっけなく):「あんたは黙りなさい!さあ、中に入って……」
エリセナ:「やったぁ〜!」*嬉しそうに中に入る
アストン(ため息をついて):「もう~なんでいつも僕はこう扱われるんだろう……?」
もう一人の私は、自分の研究――より良い魔力循環を持つ新しいミスティックドールを作り、魂の意識をしっかり保持できるようにする――について説明し始めました。
彼女はミスティックドールを見せました。小さな魔女の帽子とマントを着た人形です。
エリセナ(目を輝かせて):「わぁ〜!かわいい!」
アストン:「これがミスティックドールか。普通の人形にしか見えないけど……」
グラシア:「そうね……これから私は禁呪『ソウル・トランスファ』を使ってこの人形に移るつもりよ…… だからあなたたち二人には、私の肉体を見守っていてほしいの。」
アストン:「わかった!」
エリセナ(心配そうに):「でも本当に大丈夫? もし体に戻れなくなったらどうするの?」
グラシア:「ふむ……確かに魔力の維持に失敗すれば、そういうリスクはあるわね……」
エリセナ:「だったらやめましょうよ! もっと安全な方法があるかもしれないのに――」
グラシア:「ごめんね、エリ……でもこれが私にとって唯一の方法なの。少なくとも今は……」
エリセナ:「グラシア……」
雰囲気が重くなったのを感じて、アストンが明るくしました。
アストン(微笑んで):「大丈夫だよ! 天才の氷の魔導士グラシアなら、きっと余裕だろ!」
グラシア(からかうににやりと):「へぇ……魔法のこともよく知らないくせに、そんな簡単に決めちゃうの?」
アストン:「魔法の知識は確かに少ないけど、一つだけ根拠がある!それは『信頼』だよ!」
もう一人の私とエリセナは、彼のシンプルだけど説得力のある言葉に息を飲みました。
それから二人は笑い出しました。
中から見ている私も、思わずくすくす笑ってしまいました。
アストン(不満そうに):「ちょっと!二人ともなんで僕のことを笑ってるの?せっかくカッコいいセリフを言ったのに!?」
エリセナ:「ふふ……だって、またおじいさんくさいなセリフだよ、アストン!」
グラシア:「ほんと……信じられないわ……」
最終調整を終えた後、もう一人の私はついに儀式を始める準備ができました。
グラシア:「もし私が体に戻れなくなったら……この体をHQに運んで……リシテア先生に任せてちょうだい。」
アストン:「了解!でも前向きにいこう!グラシアなら絶対できるよ!」
エリセナ:「うん!頑張ってね!」
二人に淡い笑みを向けた後、もう一人の私は禁呪の詠唱を始めました。
グラシア(詠唱しながら):
「我が身と魂をもって、この肉体を離れ、魂を解き放つ!彷徨う魂は、新たな器に移り住む! 生命の女神よ、どうか我が魂を新たな器へと導きたまえ……」
もう一人の私の美しい詠唱を聞いて、私は感嘆しました。
アストンとエリセナも驚きの表情を浮かべていました。
ルーンと魔法陣が輝き、詠唱が終わりました。
グラシア:
「……解放せよ、ソウル・トランスファ!!」
胸から青い光が溢れ、ゆっくりとミスティックドールへと移動し、最後に入っていきました。
魂転移の儀式が成功した瞬間、彼女の肉体は意識を失いました。
同時に、私の深層意識の中の意識も薄れ始めました――転移が成功した証です。
本物のグラシア(優しく微笑んで):「そうか……これが……私の体とのお別れなのね……」
視界が暗くなり、私の意識は消えていきました。
数分後、私はゆっくりと目を開け、久しぶりに外の世界をはっきりと見ました。
ベッドの横で、エリセナが私の手を優しく握ったまま眠っていました。
周りを見回して、私は衝撃の事実に気づきました――
ミスティックドールに移った魂は、私のものではなく、もう一人の私のものでした!
私は息を飲み、すぐにミスティックドールを探しました。
声:「ここよ……グラシア……」
声のする方へ振り向くと、そこにありました。
私が幼い頃から大切にしていた、あのたった一つの人形が生きていました!!
ミスティックドール:「そんなに驚いた顔して……私よ……もう一人のあんた、セルリアンの姫だわ。」
本物のグラシア(混乱して):「でもどうして!?あなたは私の魂を移すつもりだったんじゃないの!?」
グラシア:「何を言ってるの?あの体は元々あんたのものよ!私が奪うわけないでしょう! セルリアンの姫として、それくらいの気高さは持っているわ!」
彼女の無私の理由を聞いて、私はもう涙を堪えきれませんでした。
喜びと悲しみが同時に心を満たしました。
本物のグラシア(泣きながら):「でもあなたはどうするの? あなたこそこの体が必要でしょう!?私が……みんなの期待に応えられるわけない……私は天才じゃない……!」
突然、人形が私の頭を軽くパンチしました。
グラシア(苛立って):「だったら頑張りなさいよ、小娘!それに、必要ならまた体を乗っ取ることもできるんだから……心配しないで!」
本物のグレイシア:「えっ!?本当!?」
私たちの大きな声に、エリセナが目を覚ましました。
エリセナ:「うう……グラシア!?起きたの!?」
私は彼女に向かって微笑みました。
本物のグレイシア:「エリセナさん! 久しぶりですね!」
エリセナ(信じられない様子で):「えっ?さん付け? 久しぶり?まさか――!?」
本物のグラシア:「うん!本物のグラシア・ホワイトハートさんで〜す!」
エリセナ:「グラシアぁぁ!!」
彼女は私を強く抱きしめ、私も彼女を抱きしめ返しました。
エリセナ(嬉し涙を流して):「おかえり!グラシアぁ!本当に会いたかったよ!!」
本物のグラシア(にやりと):「私もだよ、エリセナさん!」
私たちが短くも大切な日々を振り返っていると、アストンが夕食の弁当を持って入ってきました。
アストン:「エリ……牛カツがなくて鶏カツにしたんだけど、大丈夫――」
彼は私が起きているのを見て息を飲みました。
私は彼に心からの笑顔を向けました。
アストン(目を見開いて):「君は……!あの優しくて大人しグラシアだよね!?」
本物のグラシア(頰を赤らめて):「あら!すごいね……一目で私にわかったの!?」
アストン:「もちろんよ!もう一人のグラシアは絶対にこんな天使みたいな笑顔を見せないから!!天使と悪魔の違いみたいに明確だ!!」
すると突然、ミスティックドールが彼の顔に向かってキックを放ちました。
グラシア(怒って):「誰が悪魔よ!!」
アストン(驚いて):「うわっ!!人形が動いた!?」
本物のグラシア:「あれがもう一人の私よ!」
エリセナ(驚いて):「えっ!?じゃあ、セルリアンの姫が自分の魂を人形に移したの!?」
グラシア(そっけなく):「その通りよ……」
夕食を一緒に食べ終わった後、アストンとエリセナはアパートを後にして家路につきました。
私たちは長く途切れていた会話を続けました。
本物のグラシア:「あの……ありがとうございます……もう一人の私。」
グラシア:「礼なんて必要ないわ。私が最初からやるべきことをやっただけよ。」
本物のグラシア:「でもあなたのおかげで……私は生きていて、素晴らしい人たちと出会って友達になって、みんなと美味しいものを食べることができたの!あなたへの感謝の気持ちは、どんな言葉でも足りないわ……セルリアンのお姫様!」
グラシア(頰を赤らめて):「そんなことはいいから!今さらそう言うことはもうナシ!それに、やったのは全部自分のためよ!あんたを助けようとしたわけじゃないんだから!だから覚えておきなさい……これから私たちは対等なパートナーよ!だって私にも、長年あんたの体を乗っ取っていたことに罪悪感があるんだからね!」
私は考える間もなく、ミスティックドール――私の守護天使を抱きしめました。
グラシア(慌てて):「ちょっと!!何を――!?」
本物のグラシア:「ふふ……やっぱりこの人形、レインさんが大好き!」
グラシア:「レインさん!?だれよそれ!?」
本物のグラシア(ニヤニヤ):「この人形のお名前です!」
夜は穏やかに過ぎ、二つの魂がずっと会いたかった相手と、心を通わせる時間となりました。
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処女日記第三 グラシア 終




