過去のささやき
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昼休み、いつものように校内を歩いていた。ヴァルヨネッセはあっという間に人気者になり、僕と過ごす時間はほとんどなくなった。エリセナもなんだかよそよそしく、声をかけても避けられる。まあ、何か理由があるんだろう。
廊下を歩いていると、本を抱えたエリセナとぶつかった。本がばらばらと落ちる。
エリセナ:「あ、アストン!?」
アストン:「エリセナ!? ごめん……手伝うよ!」
エリセナ:「だ、大丈夫……」
本を拾うのを手伝うと、一冊が魔法と魔術に関する本だった。そんなもの、本当に存在するのか?
気づかないうちに、手が触れてしまった。エリセナがピタリと固まる。僕は慌てて手を離す。
アストン:「あ、ごめん……」
エリセナ:*真っ赤になって首を振る
周りの生徒たちがくすくす笑い、「お似合いだね」などと言う。
エリセナは恥ずかしさのあまり本を急いで集め、僕は拾った本を渡しながらいつものように誘う。
アストン:「昼休みだから、一緒に食べる!」
エリセナ(顔を背けて):「ご、ごめんアストン! 今日は外で食べるから!」
彼女は慌てて走り去った。
アストン:「……僕、何かしたかな?」
中庭で、エリセナは一人で座っていた。本を横に積み、弁当を膝の上に置いたまま開けていない。突然弁当を握りしめ、顔を赤らめる。
エリセナ:「ただのバカアストンなのに……どうして私、彼の目を見られないの?!」
彼女はようやく弁当を開けるが、ほとんど手をつけない。
放課後、僕はエリセナの席に近づく。彼女はぼんやりしていて、心配になった。
アストン:「エリセナ、大丈夫?」
エリセナ:「あ、アストン!?」
アストン:「そんなに驚いたのか?まるで幽霊でも見たみたいだよ。」
エリセナ:「ごめん……」
アストン:「謝らなくていいよ。」
沈黙。
アストン:「一緒に帰ろう!」
エリセナ:「一緒に!?」 *真っ赤になる
エリセナは慌てて荷物をまとめ始める。
エリセナ:「ごめん! 今度は……そう! ピアノのレッスンがあるから一緒に帰れない!」
アストン:「そうか……気をつけて帰ってね。」
彼女は顔を真っ赤にして走り去った。
アストン:「……もう帰るか。」
そう言いながらも、エリセナが心配で、こっそり後をつけることにした。
帰り道、エリセナは街灯の下を歩く。近くのショーウィンドウに映る自分の姿を眺めていると、一瞬、反射が歪む。深紅の王族ドレスと緋色のティアラを着けた、大人の自分が映った。
エリセナ:「誰……?」
突然、彼女はめまいがしてよろける。頭の中に遠い記憶が流れ込む——威厳ある女性が軍を率いて戦争へ向かう姿。その声が響く。
女性の声:「彼を守りなさい。何があっても。」
エリセナ:「その声……どうしてこんなに胸が痛いの?」
記憶はさらに進み、黒い鎧を着けた騎士の姿が現れる。その顔は——アストンと同じだった。
エリセナ:「アストン……? 守らなきゃいけないのは彼なの?」
立ち上がろうとするが、力が抜けてよろける。僕が肩を支える。
アストン:「エリセナ! 大丈夫か!?」
エリセナ:「アストン……」
アストン:「しっかりして、エリ!」
エリセナ:「ふふ……ごめんね……私のスマホで執事のラインハルトを呼んでくれる?」
アストン:「わかった……」 *すぐに電話をかける
通話がつながる間に、エリセナは意識を失った。僕は近くのベンチに座らせ、頭を膝に乗せる。
ラインハルト:「お嬢様? 私に電話とは、何かご用件でしょうか。」
アストン:「はい! 彼女が突然意識を失ってしまって、一緒に帰っていたんです!」
ラインハルト:「……あなたは?」
アストン:「あ、すみません!クラスメイトのアストンです!」
ラインハルト:「わかりました。そのままお嬢様を見守ってください。娘が迎えに行きます。」
アストン:「わかりました、ありがとうございます!」
ラインハルト:「こちらこそ、少年。」
通話終了。
5分ほど待つと、スポーツカーが猛スピードで到着、180度ドリフト。車から降りてきたのは、背が高く筋肉質な女性。深紅の短髪、褐色の肌——威圧感がすごい。
女性:「お嬢様!」 *駆け寄る
アストン:「えと、ラインハルトさんの娘さんですか?」
女性:「そうだよ坊主! フィオーレ・クリムゾンだ! よろしくな!」 *力強く握手
アストン:「あ、フィオーレさん……僕はアストンです。」 *手が痛い
フィオーレ:「へ〜 あなた、お嬢の彼氏か?」
アストン:「いいえ!違います! ただのクラスメイトです!」
フィオーレ:「ふーん……じゃあお嬢様を運ぶよ。」 *エリセナを抱き上げる
フィオーレはエリセナの髪を優しく撫で、丁寧に車に乗せる。
フィオーレ:「助かったぜ少年! お嬢様は頑固だから、滅多に執事を呼ばないんだ。」
アストン:「どういたしまして、フィオーレさん!」
フィオーレ:「またな、アストン!」
スポーツカーは今度はゆっくりと走り去った。
アストン:「エリセナ……大丈夫かな。」
シルベストン邸で、エリセナはベッドで目を覚ます。突然の遠い記憶——大人の自分を思い出す。
エリセナ:「あれは……私なの?」
両親が入室。母アリシアが心配そうに抱きしめ、父ゲオルギアスが頭を撫でる。
アリシア:「エリ! 無事でよかった!」 *泣く
エリセナ:「お母様、私もう大丈夫よ。」
ゲオルギアス:「いい友達がいてくれてよかったな、エリ。」
エリセナ:「アストン……うん、彼がまた、私を助けてくれた。」 *頰を赤らめる
ゲオルギアスは娘の口から男の名前を聞き、反応する。
ゲオルギアス:「アステン、だっと? まさか男の子なのか?! あの友達が?!」
エリセナ:「そうですけど、なにか問題でも、お父様?」
ゲオルギアス:「ぐぬぬぬぬ!」 *怒りを抑える
アリシア:「あらあら〜」 *目が輝く
家族で温かく話した後、両親が去ると、エリセナは考える。
エリセナ:「あの声……アストンを護りなさいって。でも、何から?」
その夜、学校裏の暗い路地。風が吹き、霧の中からマントの男が現れる。
マントの男:「やはり、彼女はこの世界に渡っていたか。面倒なガキだ。」
地面にルーンを押す。
マントの男:「人間どもと戯れて……情けないな。」
アストンの家の屋上、ヴァルヨネッセは膝を抱えて座っている。遠くから悪魔の気配を感じる。
ヴァルヨネッセ:「またあの寒気……ついに追手が来たの?」
リビングのソファで眠るアストン。突然壁にルーンが浮かび、背中に魔術の刻印がつく。
マントの男は次元の門をくぐり、黒い霧を残して消える。門の向こうは悪魔と魔物が棲むダーク・レルム——ヴァルヨネッセの故郷。
男は玉座の間に跪く。
???:「ネクロム。良い知らせを期待しているぞ。」
マントの男がフードを外す——悪魔の使者ネクロム。
ネクロム:「もちろんです、陛下! ヴァイオレットの姫の居場所をもう突き止めました。そして……」
アストンの死の時計能力を報告。魔鏡にヴァルヨネッセとアストンの姿が映る。
???:「ホー……面白い。あの少年は俺様の野望に役にたたつんだろう。」
ネクロム:「はい! 彼の呪力すべてを抜き取るし、陛下がダーク・レルムを支配なさるようにいたします。」
???:「よし。そしてヴァイオレットの姫は……生け捕りにしろ。彼女は俺様の花嫁にする。」
ネクロム:「かしこまりました!」 *マントの下で魔術刻印が輝く
???:「最高の結果を期待するぞ、ネクロム。」
ネクロムが消える。主は玉座から立ち上がり、拳を握る。
???:「ついにこの時が来た! この俺様が、トロイジール・デーモンシュタインがこの世界を支配する! やがて人間界も私のものだ!! 全てを統べる至高の王となる!! ハハ……ハハハハハハ!!」
――
第5章 過去のささやき 終
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