カリンシロップ
☆ハッピークリスマス☆
233話 花梨 10月22日(Sの日)の話で出てきたカリンは、5年帰ってこられなかったので誰も加工できずに痛んでしまったため、マーレイとイリスが処分しました。
307話 本音 12月22日(Wの日) の、1回目の足湯遠足の時に買ったカリンの行方です。
「ユリ様、そのままでは食べられないっていうカリンは、どうするんですか?」
片付けている時にリラが質問してきた。前回は残念ながら無駄にしてしまったので、今回はしっかり使おうと思っている。
「シロップを作るわよ。簡単だけど手伝う?」
「はい!勿論です!」
リラは、当然といわんばかりに返事をしていた。弟子たちを故郷に返してしまったため、暇らしい。
「何するにゃ?」
「何か作んの?」
「カリンシロップを作る予定よ」
ユメとキボウとソウが、階段を上りかけていたのに、下りて戻ってきた。キボウは不思議そうにじっと見ている。
「手伝うにゃ!」
「俺も何か手伝うよ」
「ありがとう」
ユリが配合帳を探しに行っている間に、ユメが瓶を洗ってくれていた。ソウは倉庫から氷砂糖を持ってきたらしい。
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簡単カリンシロップ
カリン 適量
氷砂糖 同量
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赤いカリンシロップ
カリン 適量(1~2こ)
グラニュー糖 同量
水 3倍
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「はい、これ、見ても仕方ないかもしれないけど、一応配合よ」
ユリは、メモ書きのような配合をリラに渡した。
「本当だ! 口頭で理解できそう」
「共通なのは、カリンの下準備ね。買ってきたカリンが香るならすぐに使えるけど、まだ若いようなら窓辺に置いて追熟させます。表面がベトベトしてきて香るようになったら使えるわよ」
きちんと熟さないと、シロップに強く渋みが残るらしい。
ユリは、リュックサックからカリンを全て取り出した。ユメはリラから配合を受けとり、「本当に簡単にゃ」と笑っていた。
「これ全部使えそうですね」
リラは1つずつ持ち上げ、匂いを嗅いでいた。真似てユメとキボウも匂いを嗅いで「良い匂いにゃ」と言っている。
「2~3日干して、ちょうど良い感じになってから鞄に入れたからね。まずは簡単な方ね。実の回りを綺麗に洗ってから、しっかり水気を拭き取ります。縦4等分して種を取り除き、5mm幅くらいの薄切りにします。衛生的な瓶の中にカリンの実と種、氷砂糖を交互に漬け込んで出来上がりよ。夏じゃないけど、心配なら少しホワイトリカーを足しておくと良いわ」
「本当に簡単!」
取り合えず、ユメに洗って貰った1瓶分だけ、カリン2個(約800g)を使い作ってみた。梅のように小さくないので、カリンを洗うのはすぐ終わるし、ベトベトするのは扱いにくいが、固いカリンを切るくらいしか、手間がない。リラだけでは大変なので、切るのはソウが手伝ってくれた。ユリは手を出さずにニコニコと見ている。
「出来たにゃ!」
「出来たな」
「出来ましたね。1か月くらい経ったら飲めるのかなぁ?」
リラが瓶を見ながら呟いた。
「いっかげつ?」
それまではじっと見ていたキボウが、ユリに尋ねた。
「そうね、1か月くらい待つようね」
「いっかげつー!」
キボウが時送りをし、すっかり褐色に変わったカリンが液体にとっぷり浸かった。キボウは皆からお礼を言われてニコニコしている。
「せっかく時送りして貰ったから、飲んでみましょうか?」
「飲むにゃ!」
「俺も貰おうかな」
「喉が痛くなくても飲んで良いのですか?」
「薬ではないからね。嗜好品として飲んで大丈夫よ」
ユリとソウとリラの分はお湯で作り、ユメとキボウの分は冷たい水で作った。種や実が入らないように気を付けて、甘露レードルでシロップをすくった。カリンの種は絶対に食べてはいけない。
「キボウ君、もし飲めるなら飲んでみない?」
「キボー、のむ?」
「美味しいと思うわよ?」
「わかったー」
キボウも受けとり、みんなで味わってみた。
「ほんのり渋みが有るけど、良い香りで旨いな」
「なんだか昔、飲んだことがある気がするにゃ」
「不思議な味ですね。これが喉に良いのかぁ」
「煮込んでいないからシロップがさっぱりした感じよね」
「おいしー!」
キボウは、水とお茶以外も飲むらしい。まあ、パウンドケーキは食べるので、すすめれば飲むだろうとユリは考えていた。
「今度は煮込む方ね。カリンの処理は同じでも作れるけど、カリンは皮を剥きます。縦4等分してから種を取り除き、配合の1/2の水に皮と種だけを入れ、先に煮ます。とろみがついてきたら細かい裏ごし網を通してしっかり取り除き、残りの水と5mm幅くらいに切った実を入れて強火で沸くまで煮ます。沸いたら弱火にして30分ほど煮て、グラニュー糖を加え、赤く色づくまで煮詰めます。熱いうちに濾して出来上がりよ。取り除いた実に分量外のグラニュー糖を加えて潰しながら煮るとジャムになるわ」
カリンには、アミグダリンという青酸配糖体が含まれていて、生のままでは人に有毒だ。これを無毒化するには、アルコールに漬け込む、糖分に漬け込む、加熱するのいずれかの処置を行う必要がある。加工すると、咳止め、タン切りなどの喉に良い効果があるそうだ。
もし生のまま食べると、アミグダリンは体内で青酸(シアン化水素)になるそうで、大変危険だ。
まあ、固くて渋くて生で食べたいとは思えない果物ではある。
「あれ? 濾すのなら、赤くなるまで煮て、実を取り除いてからグラニュー糖を加えた方が、シロップを作りやすくないですか?」
「私もそう思って作ったことがあるんだけど、なぜか赤くならなくて、作り方を戻したわ」
「何が赤くなる要因なんですか?」
「種らしいんだけど、既に種は入っていないから、失敗の原因がわからないのよね」
「なら、たくさん有るし、両方作ってみて良いですか?」
「良いわよ。あ、これは絶対に守ってほしいんだけど、カリンを煮る時はしっかり換気して、煮ている蒸気を吸い込まないようにしてね」
「はーい」
実をジャムにしないなら、実も種も全部一緒に煮て、赤くなってから濾して、グラニュー糖を加えるという作り方もある。これが一番簡単で失敗しないが、不思議なことに赤くならないことがあり、ユリは実も種も入っている状態にグラニュー糖を加え、赤くなるまで更に煮込み、大変な思いをして濾した経験がある。とろみが強く、なかなか濾せないのだ。
実験的に、行程の違うカリンシロップを作ってみることになり、皮を剥いて実を刻んだもの、皮を剥かずにいちょう切りにしたものを用意し、それぞれ煮込んで作ってみた。
「ユリ様、色はつかないですが、なんかとろみで重くなってきました」
「そうなのよ、その状態でギブアップして、グラニュー糖を加えて、結局濾すのが大変だったのよね」
リラはなぜか同じものを2鍋作っている。
ユリが詳しく作り方を説明した皮を剥くタイプは、ユメとソウが担当して、失敗無く順調に出来上がっていっていた。切っているときに、種の回りを取り除くのが一番大変だったと言っていた。
「ユリ、取り除いた実はどうすれば良いの?」
「ジャムを食べてみたいならジャムにするわよ」
「ジャム食べたいにゃ!」
「折角だし、ジャム作ってよ」
ユメとソウがジャムを希望したので、ユリは作る前に量ったカリンの重量をもとにグラニュー糖を足し、潰しながらジャムを仕上げた。シャリシャリ食感の赤いジャムが出来上がった。
「ユリ様、鍋1つはこのまま濾して、グラニュー糖を加えてみます。もう1鍋は、そのままもう少し煮てみます」
「なら、濾す準備をするわ」
「ありがとうございます」
ユリは他の鍋とシノワを持ってきて、鍋の中身を、鍋にセットしたシノワに入れた。シノワは円錐型なので、実のある液体を濾すにも使いやすい。
液体にとろみがあるので、少し時間がかかる。
「煮ても煮ても色つきませんねぇ」
「それで私はギブアップしたのよ」
シノワで濾した液体にグラニュー糖を加え、再度加熱してみた。なんとすぐに色がついてきて、あっという間に赤いシロップになった。
「うわー、糖分を加えないと赤くならないのかなぁ?」
「そんなこと書いている人はいないんだけど、私はそうじゃないかって思っているわ」
「ユリ様、糖分の一部を加えて、色がついたら濾して、残りを加えるっていうのはどうでしょうか?」
「好きなように作ってみたら良いわ」
リラは、量ってあるグラニュー糖の2割ほどを量り直し、加えていた。
「あー、なんか赤っぽくなってきた!」
「濾す準備はしてあるわよ」
「ありがとうございます」
結局、長時間煮ていたカリンシロップが一番鮮やかな赤色で、皮と種を取り出したカリンシロップは、赤色が薄目の出来上がりだった。
「この赤いシロップはとろみがあるから、乾いたスプーンにすくってそのままなめたり、お湯で割って飲んだり、喉が痛いときにおすすめよ」
「ちゃんと出来上がって良かったぁ」
後日、赤いカリンシロップは、マーレイとイリスにも分けた。イリスが物凄く懐かしがって喜んでいた。
「書いていないけど、氷砂糖ではなくカリンと同量の蜂蜜に漬け込んでも作れます」
「それが一番簡単かも!?」
カリンが余っているため、結局蜂蜜漬けも作ることになるのだった。
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グミは、次回に。




