第54話
第54話
………午前11時前:神威の支部:ビルの一室………
神威 「此方からの要望は以上だ。後は任せたよ」
紫苑 「はい。失礼します」
宝樹 「では、お気を付けて」
紫苑は一礼すると、部下二人と共に部屋を出た。
………廊下を歩く3人………
部下A「紫苑様っ」(顔色が変わる)
紫苑 「鈴音が神威に用があるとは思えないが・・」
部下B「では、我々を?」
紫苑 「Sクラスが3人、油留木が指揮を執っているな」「神威と鈴音にハメられたかっ」
<別の時間:黒い車(走行中)運転席に御影、後部座席に妹と安茂里>
妹 「鈴音さんと油留木さんは、『もう一人』の神威の所へ行ったんですよね」
「・・鈴音さん、神威と戦うつもりなのかなぁ」
安茂里「案外、運命的な出会いかも知れません」
妹 「ええっ?、安茂里がそんな事 言うなんて・・」
<別の時間:姉の車(走行中)助手席に風雅>
女の人「以前から直接 風雅さんに聞いてみようと思ってたんですが、」
「風雅さんって、朱雪さんの事 嫌いなんですか?」
風雅 「そうでもないよ」
「朱雪は『周り』を自分のペースに引き込もうとするから、私が変えてるだけ」
「朱雪は、面白いよね」
女の人「ねえ風雅さん、私の特性って何だと思います?」
風雅 「・・・」
〈風雅は黙って姉の顔を見つめる:2秒〉
「貴女の妹と逆だ」(少し厳しい表情をする)
女の人「えっ、『3つの特性』に逆位置なんてあるんですか?」
風雅 「貴女方 姉妹は、『三特性』じゃない」
………神威の支部:ビルの空室(70平米)部屋の奥、窓際中央に紫苑と部下2人………
紫苑 「私に勝つ気でいるのか?」
千鳥 「アナタの弱点は知ってるわよっ。正義は勝つ!」
単 「善は悪に負けません」
〈一瞬遅れて五百箇が二人の横に並び〉
五百箇「鈴音様、逆らうと怖いです」
<回想:ビルの一室:油留木と3人>
油留木「作戦の説明をするわよっ」
「紫苑の『不興』は、『基本三属性』3つ同時に不能には出来ないの」
「必ず『一属性』を見逃さないといけないわ」
「これは私達能力者が『三属性』3つ同時に出せないのと同じよ」
「アナタ達が得意としている基本属性はSSクラスでも通用するから、」
「不能を免れた誰かが攻撃を続けること、分かった?」
千鳥 「紫苑の部下二人に妨害されたら、どうするんですか?」
油留木「それでいいの。紫苑がアナタ達の攻撃を見切れると思った瞬間が狙い目なのよっ」
五百箇「やっぱり、『海鮮丼』には なれませんでしたね」
単 「そうね」
<神威と宝樹:扉がノックされる>
神威 「どうぞ」
〈鈴音が扉を開け、中へ入ってくる〉
鈴音 「初めまして」
「今日は、就任の挨拶に伺いました」
<紫苑と3人:千鳥の右手・単の右手・五百箇の左手:3人の人差し指が光を放つ>
紫苑 「鈴音でさえ御影に頼るのに、どんな作戦を思い付いたというのか・・」
〈五百箇の指先にソフトボール位の光玉(沈黙)が3つ現れ、紫苑と部下へ〉
〈紫苑と部下Aは瞬時に壁を出現させ防御、部下Bは壁の強度不足で鳩尾にヒット〉
五百箇「決まりました」
〈続いて、千鳥の指先に光玉(誘導)が3つ現れ、紫苑と部下へ発射される〉
紫苑 「やはりな・・」
〈紫苑は壁で防御、部下Aは鳩尾にヒット、部下Bは壁が復活して防御〉
「我々が『勝てる』と思った瞬間に油留木が『幻覚』を見せるのだろう?」
「魅惑の大天使、降臨!」
油留木の掛け声と共に、3人の前へ天使姿の(光の翼が生えている)油留木が出現する。
次の瞬間、大きく広がった翼から放射状に光玉(ビー玉)が銃弾のように打ち出され、
紫苑と部下2人の全身に次々とヒット。
油留木「都筑さんっ、トドメを・・」
都筑 「はい」
〈4人の後ろから都筑が現れると、指先からソフトボール位の光玉を出現させる〉
「皆さん、『お休みの時間』ですよっ」
〈都筑が放った光玉が、だらし無く立っている3人の体へゆっくりと入っていく〉
単 「事前に『幻覚』だと分かっていても、」
「防げない程に威力が増大していたら、その自信が却って逆効果ですね」
五百箇「分かった気になる事ほど、怖いものはありません」
油留木「最後、キメるわよっ」
千鳥 「はい。油留木様っ」
〈油留木と千鳥は横に並び、ポーズを決める〉
二人 「任務、完了っ!」
<妹:とある建物:教室になっている部屋へ、戸を開けて入る>
60平米程の部屋に比較的若い年齢の男女が30人余り、
妹が中央のホワイトボードまで歩いて行く様子を、じっと見ている。
妹 「初めまして」
「今日の説明会は、私、『次期神代』が担当します」
(天井から、光を帯びた『白い雪』が降り始める)
「退室を ご希望の方は、お早めに」
男女の半数近くが席を立とうとする。
しかし、体の自由が利かず『白い雪』が積もり始めた。(入り口付近に指を立てた安茂里)
そんな中、部屋の後方に居た男性2人(20歳位)が立ち上がり、
素早く後ろの戸を開けて部屋から出て行った。
………部屋の外………
御影 「何方へ行かれるのですか?」
〈男性2人の前に御影が現れる〉
男性達「・・・」
御影 「あなた方ほどの実力があれば、」
「外の様子も お分かりになるのではありませんか?」
(建物の周囲に神代の能力者が点在)
「部屋へお戻り下さい」「説明会は まだ終わっていません」
<神楽:ホワイトボードの前:静まり返った会場>
「皆さんっ、物分りが良いですねっ」
<角星:ホワイトボードの前:部屋の外に朱雪>
「私からの話は以上だ」
<姉:ホワイトボードの前:部屋の外に風雅>
「皆さん良く聞いて下さい」
「神代・神楽・霹靂神は共同で説明会の会場、4ヶ所全てを押さえました」
「現在、神威と神代の代表である鈴音さんが今後の対応を協議しています」
「今日、皆さんには『降雪』の効果で『抑制』が掛けられました」
「皆さんの回復度合いから『属性』及び『特性』を見極め、」
「能力に応じて各方面へ斡旋する形を取ります」
「移籍先の希望・要望等がありましたら、事前に申し出て下さい」
「私からの話は以上です」
………黒い車(走行中)………
妹 「御影さん、今回の作戦って・・」
御影 「はい」「『抑制』を使って時間稼ぎをしました」
「この世界では一瞬で物事は変化出来ません」
「これは我々の行動・思考・記憶でも同じです」
妹 「御影さん、私達の住む街や世界も誰かの『記憶』なんですか?」
御影 「貴女は、鈴音さんから『三元論』に付いて聞いていますか?」
妹 「あれっ、神楽さんと同じ事 聞くんですね」
御影 「同一の概念でも『人』が変われば別の概念に変わってしまう事があります」
「これから先は、聞く相手の順番にも気を付けて下さい」
「それは、貴女が辿り着く先にも影響します」
………次の日(月曜日)午前9時過ぎ:赤いスポーツカー(走行中)………
妹 「ねえ鈴音さん、神楽さんと御影さんが・・」
鈴音 「記憶と必然と偶然の関係、理解できたの?」
妹 「えーと、私達が見る町並みが変化する様子と、」
「人の中の『記憶』が変化する仕組みは ほぼ同じって事で良いんですか?」
鈴音 「ええ。私達が持ってる強い記憶も、」
「時として『忘れる』現象もそれで説明が付くでしょう?」
「人や物を動かすのに労力や時間が必要なのと同じで、」
「人の記憶もすぐには作れないのよ」
女の人「私達を中心に考えると、『下の単位』では臓器や細胞、」
「『上の単位』では都市や銀河なんかも『記憶』を持っているんですよね」
妹 「それで、安茂里が言ってた言葉『記憶と永久機関は対』って話なんだけど、」
「もしかして、才能が減るのも、1+1が2より小さくなるのも、」
「みんな『永久機関』の名残なんですか?」
鈴音 「そうよ。『熱』の次の単位があるって話、覚えてる?」
妹 「えっ、そんなあ、じゃあ私達って・・」
安茂里「姉様、『永久機関』から抜け出す方法は御存知ですよね?」
「我々の戦いは まだ終わっていません」




