第52話
第52話
鈴音 「いいわよ?」「怖い夢でも見たのかしら」
安茂里「・・はい」
「それは、『ある世界』の『ある入れ物』の中での話です」
「その世界では『契約』という名の『選択』によって『体』を与えられます」
「その『体』には『3つの属性』が備わっており、」
「『痛み』と『苦しみ』から逃れられる代わりに、『3つの仕事』を強要されます」
「私は、その中の1つに入ってしまいました」
「その世界で、長い長い月日が流れます・・」
「ある時、隣の人が言いました」
「『この世界で記憶を発明した人が居る』と」
「続けて別の人が言います」
「『ここは永久機関の中だ』と」
「周りの人達には、私達が何の話をしているのか理解できません」
「何故なら、彼らには『記憶』という『仕組み』がないからです」
「それから暫く経ちました」
「多くの人が、自分達が永久機関の中に居る事に気付きます」
「『私達は此処から出られるかも知れない』と・・」
「次の瞬間、世界の『天』と『地』が『逆さ』になりました」
「隣の人が言います」
「『この世界の管理者が砂時計を引っ繰り返した』と」
「周りを見ると、みんな永久機関の話をしていません」
「別の人が言います」
「『また最初からだ』と」
「更に月日は流れます」
「隣の人が言いました」
「『偽りの力を発明した人が居る』と」
「続けて別の人が言います」
「『それは鏡だ』と」
「再び世界の『天』と『地』が逆さになりました」
「今度は全員無事です。みんな、『永久機関から抜け出せた』と大喜びです」
「しかし、管理者がこの異変に気付きました」
「『何度 砂時計を引っ繰り返してもエネルギーが取り出せない』と」
「管理者は仲間を呼び、」
「仲間が所有する世界でも同じ現象が起きている事を確認しました」
「管理者達は相談します」
「管理者の一人が言いました」
「『記憶という概念を作った者がいる』と」
「別の管理者が言います」
「『記憶を操作しよう』と」
「再び月日は流れます」
「みんな永久機関の事を忘れてしまいました」
「そんな時、隣の人が言いました」
「『一単位を発明した人が居る』と」
「続けて別の人が言います」
「『世界の表と裏を逆にしよう』と」
「周りを見ると、今まで居た世界が消えて、もう何もありませんでした」
「でも、落ち着いて確認すると半透明の壁があり、」
「壁の向こう側に沢山の『人』の姿が見えます」
「私の隣から、聞き慣れた声が聞こえました」
「『彼らを人間と呼ぼう』と・・」
妹 「何それ」
鈴音 「『一単位』を発明する事で、永久機関を禁止した『三元神』の話ねっ」
安茂里「鈴音様は御存知なのですか?」
鈴音 「『外の世界』のルールの1つだとされているわよっ」
「全ての『物』には『意思』や『感情』が有ると考えると、」
「『物を使う』にも契約が必要になり、そこには強制力が生まれるでしょう?」
女の人「『神様の調度品』の事ですよね」
鈴音 「ええ。だから、『体』を借りる代わりに『労働』の提供をするの」
妹 「何言ってるか、全然分かんない・・」
………神楽の本部:食堂:食事中………
<テーブルの4人:左側、篝・千鳥:右側、五百箇・単>
篝・千鳥・五百箇は、『ナポリタン』と『ハンバーグ』のセット。
単 は、『海鮮丼』と『シジミの味噌汁』のセット。
千鳥 「篝さんっ、もうすぐ神威と戦いになるって噂、本当ですかっ?」
「私、ババーンっと敵をやっつけてみたいんです」
篝 「今の千鳥さんの実力では、油留木様の引き立て役にしかなりません」
「私達に課せられた任務は、そんな事ではない筈です」
五百箇「私、『海鮮丼』と迷ってしまいました」
単 「『シジミの味噌汁』は『従物』だから仕方ないですね」
篝 「3人とも、仲が宜しいんですね」
千鳥 「・・・」
<テーブルの10人>
正面に神楽、向かいに朱雪、
左側に姉・妹・鈴音・安茂里、右側に角星・御影・風雅・油留木。
安茂里・御影・油留木が『ナポリタン』セット、他は『海鮮丼』セット。(朱雪は両方)
妹 「ねえ、朱雪さんっ」
「角星さんに本当の事・・」
角星 「いや、知っていた」
朱雪 「はい、角星さんには初めてお会いした時に話しました」
女の人「神楽さんは全部知ってたんですよね?」
神楽 「貴女方と一緒に買い物をした後、お母様にお会いしました」
油留木「お互いに『道』を見る能力で『読み合い』になったら、こうなっちゃうわね」
鈴音 「そうねっ」
「それで、神威が抱えた神代の能力者は、各方面へ分散できそうなの?」
朱雪 「現状では難しいと考えています」
妹 「油留木さんの必殺技で何とか出来ないんですか?」
油留木「対象が数人なら1年位は持続可能だけど、そんな一遍には出来ないわよっ」
鈴音 「人が持つ特性やサイクルは、そう簡単には変えられないの」
「これは、我々が自身の『記憶』を自在に操れないのと同じ事よっ」
妹 「それって、さっき来る途中の話でもありましたよね」
「『神様の調度品』がどうとかって・・」
朱雪 「『永久機関』を禁止した『三元神』は、」
「『世界のコピー』を作り、ある一点に集約したとされます」
「そこに住む者が周りの世界を見た時、」
「自らの行いを『記憶』として知らしめる為」
「そして、彼らが作り出した永久機関の『器』を改変し、彼らの『器』としました」
女の人「もしかして、『グラム染色』みたいに『器』を分類して、」
「それを『外の世界』に住む神様達が『調度品』として使うって事ですか?」
朱雪 「・・・」
神楽 「貴女はどう思いますか?」
女の人「えっ、どうって・・」
安茂里「私、もの凄く怖いです」
御影 「『外の世界』では『無』から『有』を生み出せた為、」
「『恐怖』となって際限無く世界が広がりました」
「しかし『一単位』が発明された後、世界の膨張は止まり、」
「副作用として一般的な『死の概念』が生まれたとされています」
風雅 「『死』は『外の世界』で発明された物だと言われているが、」
「『夢』という『借りる力』で免除される」
神楽 「つまり『借りる力』は永久機関が変化したものなんです」
女の人「えーと、『繋ぐ力』の別名は『偽りの力』」
「『無の力』の別名は『借りる力』でいいんですか?」
鈴音 「あら、そろそろ世代交代かしら」
妹 「あぁ、私もうダメ・・」
………午後2時過ぎ:姉妹の家:リビングでお茶を飲みながら会話する姉妹と母親………
妹 「ねぇお母さん、全ての物には意思や感情があるって本当なの?」
「もしそうなら、怖くて『物』が使えなくなるし、」
「動物や植物なんかの細胞にも意識がある事になって、」
「私達、ご飯も食べられなくなっちゃう」
母親 「霹靂神の『決まり』は何でしたか?」
妹 「確か、『一単位』を守れば、『痛み』や『苦しみ』を感じないように出来るって」
母親 「『物』との接し方は他にも色々あるけど、」
「分からないなら、『一単位』を守る事から始めてみなさい」
女の人「でも、それって物凄く面倒だよね」
「私は あんまり気にしてないけど・・」
母親 「『物』にも『サイクル』や『時間』があって、」
「それは我々『人』と大きく異なるの」
「だから、我々の『意思』や『感情』が直接伝わる事は、まず無いわよ」
「植物や動物の場合は、『人』と共鳴する可能性が出てくるから、」
「少しは気に掛けてあげてね」
女の人「それでみんな、植物を置いたり、ペットを飼ったりするんだね」
妹 「じゃあ、植物や動物も『痛み』を感じてるの?」
母親 「我々の『それ』とは少し違うわね」
「神様がちゃんと『安全装置』を付けているから、普段は気にしなくても大丈夫」
「でも、あなた達が『何か』を望んで接した場合は、『安全装置』は働かないの」
「注意してねっ」




