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神楽  作者: 黒紫
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第50話

第50話


女の人「相手の『思い込み』を利用して、立場を逆転させたんですよね」

鈴音 「ええ。自分の能力が受け継がれて、お母様は本望でしょうね」

妹 「御影さん、ありがとうございました」

御影 「はい」

妹 「ねえ御影さん、前から聞こうと思ってたんだけど、」

「霹靂神の『ルール』は何か、良かったら教えて貰えませんか?」

鈴音 「その話は、明日のほうが宜しいんじゃありません?」

妹 「えっ?」

御影 「では明日、お話しましょう」

〈3分後〉

鈴音 「さてと、今日 最後の試合ね」

風雅 「そうだな」


(四隅の6人:妹・安茂里・油留木:姉・御影・朱雪)


………鈴音 VS 風雅………

風雅 「一度、手合わせを願いたいと思っていたところだ」

鈴音 「私はそうでもないけど、一応 手加減はするわよ?」

〈風雅は右手の拳を胸の高さまで上げる:ピンポン玉位の光玉が40個発生〉

朱雪 「風雅様の『停止』には『圧縮(あっしゅく)』も施されています」

「SSSでも簡単に回避は出来ないでしょう」

〈風雅の前方で浮遊している光玉が一斉に鈴音へ打ち出される:時速60キロ〉

鈴音 「あら・・」

〈光玉は、鈴音が前方に作り出した壁で殆ど防がれるが、一部は壁をすり抜ける〉

「違うのも混じってるわねっ」

〈鈴音の上半身に光玉が8発ヒット:持ち点を2ポイント失う〉

風雅 「手加減し過ぎではないのか?」

鈴音 「そうね」

〈鈴音は右手を胸に当てると、体の中から何かを引っ張り出すような仕草をする〉

油留木「勝負あったわね」

〈鈴音の体から分身(風雅の輪郭)が引き出され、風雅へ向かう〉

風雅 【間に合うか!?】


風雅の前方に光の壁が出現するが、分身は壁をすり抜け、風雅と一体化してしまう。

風雅は体が硬直して動けない。(持ち点を5ポイント失う)

しかし鈴音は、風雅の様子をじっと見ているだけで、何もしようとはしない。


鈴音 「どう?」「抜け出せるかしら?」

風雅 「少し時間が必要だ」

鈴音 「あら、口も利けるのね」

油留木「やるわねっ、霹靂神の幹部だけの事はあるわ」


………試合開始から3分後………

油留木「3分経ったわ。鈴音様の勝ちよっ」

〈風雅の硬直が解ける:全員が中央へ集まってくる〉

風雅 「予想はしていたが、これ程の差があるとは思わなかった」

鈴音 「でも、貴女の反応がもう少し早ければ、私にあと2回は当てられたわね」

妹 「鈴音さんが攻撃を続けなかったのって・・」

女の人「カウンターで自動攻撃が仕掛けられていたからだよ」

「攻撃したら、風雅さんの硬直が解けちゃうからね」

鈴音 「私、面倒な事は嫌いですから」


………午後1時過ぎ:姉妹の家:リビングで会話する姉妹………

妹 「・・朱雪さんの技、私にも使えないかなあ」

「朱雪さんって、ほぼ無敵じゃない?」

女の人「そう?」

「油留木さんの技のほうが色々応用できそうだし、使い勝手も良さそうだよ?」

母親 「あなた達、そろそろ お客様がお見えになるから、玄関にいらっしゃい」

姉妹 「はーい」


………玄関:戸が開き、神威が顔を見せる………

母親 「ようこそいらっしゃいました」

神威 「神威様、御無沙汰しております」

母親 「はい。元気そうですね」

姉妹 「・・・」(姉妹は顔を見合わせる)


………客間:上座に神威が座り、母親・姉・妹が向かい側の椅子に座る………

〈妹がトレーに載せてあるお茶を全員に配りながら:神威はロイヤルミルクティー〉

神威 「噂は伺っております」

「御令嬢が近く神楽、そして神代になられると」

妹 「えっ、何それ」

女の人「神代の中では、次期神代って呼ばれてるみたいだよ。知らなかったの?」

母親 「これから順番に話すから、良く聞いてね」

「最初は母さんが神威になった頃の話。今から25年前、16歳の時よ・・」


………(会話の途中から)………

妹 「そんな事って・・」

母親 「決めるのは あなた達だから、良く考えてね」

女の人「鈴音さんは就任したばかりだし、まだまだ時間はあるよ」

妹 「お姉ちゃんは神楽になるつもりなの?」

女の人「そうだよ」

「神楽さんの強さは出鱈目過ぎて全然敵わないけど、私の目標なんだぁ」


………玄関:神威を見送る3人………

神威 「神威様、失礼します」

母親 「はい。また会える日を楽しみにしています」

〈神威が戸を開け、外に出る〉

妹 「ねえ、『正義』とか『善』や『悪』って何で そう呼ばれてるの?」

母親 「神代と霹靂神の『ルール』は何か、知ってるでしょう?」

妹 「明日(あした)、御影さんから霹靂神のルールを教えて貰える事になってるの」

女の人「本当は今日教えて貰えるかも知れなかったんだけど、」

「鈴音さんが明日のほうが良いって・・」

母親 「そうですか。鈴音さんが・・」

「あなた達は素晴らしい先生方に巡り合えましたね」


………次の日(日曜日)午前10時過ぎ:応接室の8人:お茶が全員に配られている………

鈴音 「試合の前に話を済ませたほうが良いわね」

御影 「はい」

〈全員が御影の顔を見る〉

「霹靂神の『決まり』は、『一単位を守る事』」

「ただ、それだけです」

妹 「えっ、本当にそれだけなんですか?」

御影 「はい」

鈴音 「貴女は、『1+1』の答えは何か、知ってる?」

妹 「態々(わざわざ)そんな事を聞くって事は、『2』じゃないって事?」

御影 「はい。『1+1』が『2』になるのは、『偽りの力』を用いたからです」

女の人「『1+1』の答えは、『1と2の(あいだ)』になるんですよね」

油留木「『大きな1プラスα(アルファ)』、『2マイナスα』とも呼ばれているわ」

妹 「みんな、何言ってるの?」

朱雪 「我々が『体』を有する理由。そろそろ お分かりだと思います」

妹 「もしかして、能力が勝手に減るのと同じで、私達自身も減ってるのっ?」

安茂里「宇宙で光を発する物、『1』に近い存在」

「宇宙で観測出来ないのに何故か存在する物、『2』に近い存在」

「だから皆、体を作って自分を守ってる」

風雅 「『1+1』が『2』にならない我々は、絶えず痛みと苦しみを受けている」

「この問題を解決する為、我々は体を作り、『単位未満の感覚』を生み出した」

妹 「それって・・」

御影 「『偽りの力』を用いた『矛盾』」

「『魂』とは『偽りの力』、そして『繋ぐ力』なのです」

油留木「アナタ、この世の中で『偶然』が一番も怖いんでしょ?」

「だから、『偽りの力』で自分を守ってる」

「伝説級の能力者は、みんな この力を操ってるわ」

妹 「ええっ、そんな一遍に言われても・・」

〈全員がお茶を飲む〉

御影 「『偽りの力』は誰もが持っています」

「この力が無いと『外の世界』や『ゼロの世界』に飛ばされると考えられています」

女の人「私達が歳を取るのも、物質が壊れるのも、ちゃんと理由があったんですね」

御影 「はい」

妹 「じゃあ、『一単位を守る事』って、人や物が壊れないようにする事なんですか?」

風雅 「『単位未満の感覚』に収まれば、痛みや苦しみを感じない」

「これは人でも、動物でも みんな同じだ」

「我々霹靂神は、『一単位』を守る者を『善』、守れない者を『悪』と呼ぶ」

妹 「そしたら、神代の『正義』って・・」

鈴音 「『知らずに過ごせる権利』を守る事よ」

「『知識』は人間を破壊してしまうのよ。何故なら それは『記憶』だから」

「ちなみに『知る権利』は、ルールを提供する側がルールを守る事であって、」

「無償で『情報』を得られる権利ではないわね」

女の人「すると、神楽の『信じる』は『偽りの力』に対しての『決まり』だったんですね」

御影 「はい」「三者の考えはどれも『正しく』、どれも『間違い』です」

「この世界では、3つ同時には成立しないのです」

妹 「あぁ、また頭痛くなってきた・・」



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