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神楽  作者: 黒紫
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第37話

第37話


<赤いスポーツカー(走行中)鈴音と風雅:助手席の風雅が口を開く>

風雅 「一応、私の声を直接貴女に送る事も可能だが、確認をしておこう」

鈴音 「そうね、私には必要ないから、あなたが対象者をマーキングするだけで結構よ」

風雅 「了解した」


鈴音は車を駐車場に止め、二人で東京駅へ向かう。

暫くして、


風雅 「何人か見張りが居るな」

「しかしBクラス程度なら、『停止』を使えば記憶も残らないだろう」

鈴音 「あら、仕事が早いわね。私も、道中の監視役は処分しておいたわよ?」


………6分後:新幹線の改札付近………

お土産屋が並び、列車の時間待ちの集団や、柱で待ち合わせをしている人達が見える。


風雅 「始めよう」


二人は柱まで移動すると、

風雅が20センチ位の日本地図を広げ、右手に持った赤いペンで所々に点を打ち始めた。

鈴音は、近くの自販機で買ったカフェオレ(缶)を飲みながら、風雅の様子を見ている。

すると、改札を通る乗客の頭上に光玉ソフトボールが次々現れ、一瞬で消えていく。

光玉が現れるのは老若男女を問わず ほぼ3人に1人の割合で、

2分後にはホームで電車を待つ人々にも光玉が現れ始めた。


風雅 「予定より早く終わりそうだ」(風雅は作業をしながら話す)

鈴音 「そのようね」「貴女、思ったより使えるわね」

風雅 「当然だ」

〈5分後。鈴音がカフェオレを飲み終えると、風雅は地図を仕舞い〉

「次の場所へ移動しよう」

鈴音 「ええ」


<黒い車(走行中)御影と妹(助手席)>

妹 「取り敢えず、『連鎖玉』を一瞬で移動させるには、」

「『移流』を応用すれば良いって分かったけど自信ないです」

御影 「『案ずるより産むが易し』です」

「それに、風雅と鈴音さんが露払いを買って出た行為に報いなければいけません」

妹 「そうですよねっ」

「・・ところで、私のポーチに連鎖玉が500個も入るなんて意外でした」

「都筑さんの力って凄いんですね」

御影 「幹部クラスともなると、通常技は勿論、特別な能力を持っている場合が殆どです」

「もし、神代の幹部クラスと対峙しようものなら、非常に厄介な事になります」

妹 「人選って大事なんですね」

御影 「はい」


<姉の車(走行中)姉と朱雪(助手席)>

女の人「すると、」

「朱雪さんの力を使えば、一定期間 朱雪さんの声が私にも聞こえるんですね?」

朱雪 「はい。妹さんが御影様の声を聞けるようになったのも、私が勧めたんです」

女の人「仕様が無いですね・・」

朱雪 「すみません」


<御影と妹:東京駅>

御影 「神代の見張りが4人潜んでいますが、」

「『幻覚』を使えば少々長居をしても大丈夫です」

妹 「はい。なるべく早く終わらせます」

「御影さん、早速ターゲットを指示して下さい」


<姉と朱雪:デパートの入り口付近>

女の人「僅かだけど鈴音さんの気配が残ってますね」「何かの合図かも知れないけど」

朱雪 「風雅様の気配も残っています。これは・・」


「もう、世話が焼けるわねっ」


〈二人が振り返る〉

油留木「もっと早く気付きなさいよ!」「ここは私の担当なんですっ!」

女の人「えっ、鈴音さんと風雅さんは?」

油留木「鈴音様が『虚栄』を使ったに決まってるでしょ。私と此処で戦う気?」

女の人「ごめんなさい」

朱雪 「以後 気を付けますぅ」

油留木「貴女、鈴音様と同じで『道』を見る能力があるんですよね?」

「もしかして、私を試してます?」

女の人「いいえ、そんなつもりじゃ・・」

油留木「まあいいわ。見逃してあげるから、早く行って」


<鈴音と風雅:午前11時30分:スポーツカーを発進させる>

鈴音 「初日は まあこんな所かしら。でも、午後にはもう神代にバレてるわね」

風雅 「1時には霹靂神の本部から連絡が入る予定だ」

「昼食後、偏りの補正と対策会議だな」


<御影と妹:地下街>

御影 「本部に戻りましょう」

妹 「はい。御影さんのお蔭で私もマスターできました」


<姉の車(走行中)姉と朱雪>

女の人「朱雪さんは、どんな『操作』をしたんですか?」

朱雪 「対象者が家に帰って落ち着いた時や、目的地で一息ついた時に触れた物」

「自室のドアや、」

「旅先で自販機等に手が触れると『連鎖玉』が移動するようにしました」

「御影様や風雅様なら、もっと複雑な指定が出来ると思います」

女の人「なるほど、奥が深いですね」

朱雪 「はい」


………2日後(体育の日)………

午前9時。新幹線の車内。(走行中)

3人掛けの座席に鈴音と姉妹。(窓側から妹・姉・鈴音の順)


妹 「・・何となく来ちゃったけど、本当に私が行っても良かったの?」

女の人「最初は角星さんが行く予定だったみたいだね」

鈴音 「『連鎖玉』を神楽と霹靂神の支部に運ぶのは角星さんの仕事だけど、」

「今日は特別に霹靂神本人が直接会って下さるそうね」

妹 「それと、もう1つ。東京駅の見張りがAクラスになってたよね」

女の人「そうだね」

「神楽と霹靂神が動いたから当然だとは思うけど、何か引っ掛かるんだよね」

鈴音 「あら、それは何かしら?」

女の人「だって、東京駅で連鎖玉を配ると効率が良いんだから、」

「Sクラス以上の能力者を配置するのが普通ですよね」

(わざ)とそうしてるとしか思えない」

鈴音 「そう?」

「お互い読み合いになったら、」

「数で勝る神代が特定の場所だけ増やす必要なんて無いんじゃありません?」

「現に神楽と霹靂神の戦法は短時間で場所を小まめに変える事」

「それは神代のネットワークを回避する為でしょ」

「それでも、貴女は自分の考えが正しいと言えますか?」

女の人「えーと、何となくじゃダメですか?」

鈴音 「貴女、次期神楽としての自覚が足りないようね」

「そんな調子で下の者が付いてくるのかしら?」

女の人「・・・」


………10時30分:在来線に乗り換えた後、目的地の駅に到着………

〈駅の階段を下りながら〉

鈴音 「迎えの車が来てる筈だから、先に行って確認するわね」

妹 「私も行く」


二人が先に行った後、姉がゆっくりと階段を下りて改札に向かう。


………改札………

姉が改札(右から2番目)を通ろうとした時、

後ろから男性(27歳位で細身、革ジャンを羽織っている)が足早に近付き、

右端の改札に切符を入れた。

すると、チャイムが鳴り改札が閉じるが、

間一髪 左太腿が触れるだけで男性はすり抜けてしまう。

姉は改札を通り、すぐに男性を追うものの、既に人ごみの中だった。


【・・駅員は左端に居たから、きっと常習犯だね】

【これから、こんな人が増えるのかなぁ・・】

〈突然、背後から〉

妹 「お姉ちゃん、迎えの車が見付かったよ。早く行こう」

女の人「えっ?、あっ、そうだね」

〈駅を出ると、近くの道路に黒い車が止まっている〉

妹 「霹靂神の支部って、大きな神社なんだって」


………20分後:とある大きな神社………

閃緑 「お待ちしておりました」

「此方が次期神楽様で、此方が次期神代様ですね」

妹 「えっ、どういう事?」

鈴音 「あら、私はそのつもりよ。何時までもこのままという訳には いかないでしょ?」

妹 「・・・」

閃緑 「お嬢ちゃん、此の間はごめんね」

妹 「いえ、もういいんです・・」

「あっ、鈴音さん」

「分け前があるから、みんな同じテーブルに着くんですよね?」

「という事は・・」

鈴音 「ええ。これから大事な話があるの」「貴女も聞いておくといいわよ?」

「お姉さんの次は、貴女になるかも知れないから」



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