第38話
第38話
3人は閃緑の案内で社務所の和室(10畳)に通される。
部屋の障子は全て閉められており、中央に大きな机が一台と座敷椅子が3脚。
上座には既に、瞑想中の霹靂神が独り正座をしていた。
閃緑 「どうぞ、お掛けになって下さい」
霹靂神が目を開ける。
すぐに姉が左側、鈴音が中央、妹が右側に座り、(全員畳の上に正座)
霹靂神「ようこそ、おいで下さいました」
女の人「このような席を御膳立て頂いて恐縮です」
鈴音 「初めまして。お目に掛かれて光栄です」
妹 「初めまして」
3人が椅子に座ると閃緑が、侍女から受け取った日本茶と茶菓子を全員に配る。
<別の時間:神代の御前>
男A 「作戦の成功を確認」「全部隊、初期配置に戻ります」
女 「神楽と霹靂神が『連鎖玉』を順調に拡散させています」
「現在予定の70%に達している模様です」
男B 「鈴音が神楽に移籍したとの報告がありました」「宜しいのですか?」
神代 「良い。鈴音が移籍なぞするものか。また良からぬ事を企んでおるのだろう」
男女 「・・・」(男女3人は頭を下げ退出)
………午後3時過ぎ:新幹線の座席に座ろうとする3人………
妹 「お姉ちゃん、帰りも私と代わってっ」
女の人「いいよ」
〈窓側から妹・姉・鈴音の順に座る〉
妹 「霹靂神との会談って、何だかよく分からなかったけど、」
「早い話が霹靂神と共同で神代を倒すって事でいいの?」
鈴音 「ええ」「今、神代は大きく3つの派閥に別れていて、その1つを潰すのよ」
「油留木には根回しを頼んでいるから、それで私の派閥に吸収できると思うの」
女の人「派閥って、どんな能力者が中心になっているんですか?」
鈴音 「それは教えられないわ。でも、もうすぐ会えるんじゃないかしら」
………30分後………
妹 「ねぇお姉ちゃん。さっきからずっと黙ってるよね・・」
女の人「・・あっ、これって」
「鈴音さん、聞いてもいいですか?」(姉は真剣な顔をする)
鈴音 「なあに?」
女の人「朝 話してた事なんですが、」
「神代って、実は私達の行動を監視しているだけなんですよね?」
鈴音 「あら、一歩前進ね」
女の人「神代の本当の目的は、大きな『風』を起こす事」
「神代が『蹉跌の風』を起こせば、神楽と霹靂神が『補佑の風』を起こす」
「つまり『1』の力で、『1』以上の力が返ってくる」
「神代はこの機会をずっと待っていた」
鈴音 「ふふふ」
妹 「じゃあ鈴音さんは、態とお姉ちゃんの考えが間違ってるって言ったんですか?」
女の人「そうじゃないよ」
妹 「どういう事?」
女の人「うーん、こんな例えはどう?」
「数で『1・2・3』と続いてたら、その前後の数字は何だと思う?」
妹 「『1』の前が『0』で、『3』の次が『4』でしょ?」
女の人「残念、『1』と『5』が正解」
妹 「何それ」
鈴音 「答えはそれだけかしら?」
女の人「『何が入るか分からない』って答えも正解ですよね」
「私達は本来、世界を切り取った状態でしか見る事が出来ないのに、」
「それを補って理解しようとする」
「鈴音さんのも答えの1つだし、見方が変われば答えも変わる」
「人は一度に全てを見る事なんて出来ないんですよね」
鈴音 「ふふふ。順調ね」
妹 「それなら、計画を中止したほうが良いの?」
女の人「ううん。これは選択じゃないんだよ」
「よく小説やマンガなんかで主人公が不利な状況に陥った時、」
「二択を迫られたりするでしょ?」
「でも、現実ではどちらを選んでもハズレだったりするよね」
「神代が仕組んだのは、正にコレなんだよ」
………午後5時過ぎ(次は東京駅)………
妹 「やっと帰ってこられたね」
女の人「そうだね」
妹 「私思うんだけど、これから情報機器とかが発達したら、」
「交通機関なんて要らなくなるんじゃないかなって」
鈴音 「それだと、交通機関を凌ぐ『媒体』が必要になるんじゃありません?」
女の人「携帯端末やパソコンなんかが便利だと思えるのは、」
「電気を『エネルギー』ではなく『媒体』として使っているからだね」
「例えば、私達が旅行に行ったり、美術館で絵を鑑賞したいって思うのは、」
「その良さを伝えられるモノがまだ発明されていないからだって思わない?」
「だから、自分の体を『媒体』に変えて、その場所まで行く必要があるんだよ」
鈴音 「そうね。組織を運営する側にとっては、能力者は器」
「『能力の媒体』だと考えられているわね」
………東京駅………
鈴音 「私は此処で失礼するわ」
女の人「今日は色々とありがとうございました」「鈴音さん、さようなら」
妹 「鈴音さん、またね」
………姉の車(帰り道)………
妹 「・・朱雪さんと角星さん上手くやってるかなぁ」
女の人「昼間は遊園地や水族館に行って、夜は野球の決定戦があるんだったね」
「御影さんと風雅さんは美術館を廻るって言ってたから、ちょっと羨ましいよね」
妹 「もしかして朱雪さん、」
「『ですぅ』とか言いながら角星さんに甘えたりしてたりして」
女の人「そう?角星さんの性格からして普通に違うと思うけど・・」
<別の時間:神楽の本部:応接室:鈴音と神楽>
鈴音 「戻りました」
神楽 「ご苦労様です」
鈴音 「例の件、霹靂神と合意しました」
「神楽様自身は、この件に関与しない おつもりですか?」
神楽 「気になりますか?」「でも、秘密です」
<回想:一週間前の月曜日:連鎖玉の製作:地下3階:150平米の部屋に鈴音が独り>
「『隠』を解いたら、みんな怖がっちゃうわね・・」
鈴音の周りに僅かな風が起きると、鈴音は人差し指をゆっくりと立てた。
すると、
部屋全体が光を帯び始め、彼方此方から光玉が次々に出現する。
5分後。
部屋には1000個の光玉が漂い、鈴音は少し笑みを浮かべながら、
「まあ、こんな所かしら」
「もうお済みですか?」
〈鈴音は声がする方を向き〉
鈴音 「ええ」
神楽 「では、それも渡して下さいね」
神楽が鈴音の左手に目を向けると、
鈴音は左手の掌から光玉(野球ボール)を出して見せる。
神楽 「これは私が処理しておきましょう」(神楽が右手を出すと光玉は一瞬で掌に移動)
鈴音 「助かります」「私、反動を抑えながらだと『3分の1』も力が出せないんです」
〈次の瞬間、神楽は掌の光玉を一瞬で消滅させた〉
「あら、Sクラス程度なら3ヶ月は不能になる程でしたのに、流石ですね」
神楽 「はい。大将ですから」
<別の時間:神代の支部>
とあるビルの一室。男性(27歳位)がパソコンから資料をプリントアウトしている。
資料には、
『相馬 御影 (そうま みかげ) :女:20歳:SS :両利』
その他、顔写真と能力の詳細。
男性は用紙をめくり、一人一人確認をする。
『真壁 朱雪 (まかべ しゅゆき):女:20歳:AAA:右利』
『保科 風雅 (ほしな ふうが) :女:20歳:SS :右利』
『吉川 角星 (きっかわ すぼし) :男:25歳:SS :左利』
『祁答院 都筑(けどういん つづき):女:22歳:SS :右利』
『******(*********):女:20歳:SS :右利』
『******(*********):女:16歳:S :右利』
『姶良 油留木(あいら ゆるぎ) :女:17歳:SS :右利』
『立花 鈴音 (たちばな すずね) :女:22歳:SSS:右利』
〈そこへ女性(御前の女)が入ってくる〉
男性 「『榊』か。鈴音が何か企んでいるようだな」
榊 「『紫苑』様は鈴音様に賛同する おつもりではないのですか?」
紫苑 「漁夫の利を狙う女に協力しろと?」
榊 「すみません。言葉が過ぎました」




