第27話
第27話
………黒い車(帰り道)………
妹 「ねえ、お姉ちゃん。ちょっと・・」
〈妹が姉に耳打ちする〉
女の人「うん、分かった」
〈姉は姿勢を正して〉
「御影さん」
「御影さんは この世界の事や、」
「人が疑問に思う様々な事柄に付いて『答え』を出しているんですか?」
御影 「その質問には、肯定も否定もしません」
「人はどんな事でも分かる訳ではありませんし、」
「全てを知りたいと思うのは自身の驕りだと思います」
「しかし、驕りだと分かっていても、知ろうとするのが人ではないでしょうか」
女の人「私、1つ質問があるんですけど、『人は何故、二本足で歩くのでしょうか?』」
御影 「私は、二本足での歩行は変化が最大になるからだと思います」
「人は、脳だけでは生きていけません」
「脳を維持する為に二本足で歩けるように進化したのでしょう」
「我々にとって、歩く事は大変重要なのです」
妹 「私は、靴と靴下が半分で済むからだと思う」
朱雪 「私は、好きな人と手を繋いで歩きたいからだと思いますぅ」
女の人「私は、人は今も四本足で歩いてると思うんです」
「きっと、この世界で生き残る為に、」
「目に見えない地面を両手で蹴ってるんじゃないかな」
御影 「・・そうですか。面白いですね」
妹 「あっ、今、御影さんが『ね』って言った」
女の人「・・・」(姉は少し嬉しそうな顔をする)
妹 「ねえ、御影さん。今日もし失敗してたら、どうなってたんですか?」
御影 「トラップを発動させた場合、」
「恐らく半径1キロの範囲が『蹉跌の風』で覆われたでしょう」
妹 「神楽さんの話では、『鍵』が無いから連鎖反応は起こらないって・・」
御影 「全ての爆弾には、神代の『錠』が付けてあり、」
「神代本人が『鍵』を使えば半日で日本全土に広がると予想されます」
女の人「御影さんが今までに回収した爆弾はどんな感じだったんですか?」
御影 「図書館や区役所等の公共機関、」
「百貨店・スーパー等の商業施設から自販機・電柱に至るまで、」
「爆弾のレベルも場所も区々です」
「勿論、トラップだけの場合もありますが、」
「特に人口の多い都市部に集中しているようです」
女の人「そう言えば神楽さんが、東京と他の地域では、」
「爆弾を回収した後の神代の反応が違うって言ってましたよね」
妹 「やっぱり、御影さんが優秀だからだよ」
朱雪 「神代は最近、メンバーの大規模な移動を行っています」
「何か狙いがあると考えるべきでしょう」
妹 「それで最悪の場合を考えたとして、日本中に『蹉跌の風』が起こったとしても、」
「一人当りの『蹉跌』のレベルは低いんでしょ?」
御影 「貴女は能力の効果について誤解があるようです」
「我々能力者が攻撃を受けても無事でいられるのは、」
「無効化の力を体の中に持っているからです」
「一般人でも無効化できる力を持っていれば相殺されますし、」
「無ければ外部から取り込むか、体内で分解されるのを待つしかありません」
女の人「日本中って事は、我々も一般人も逃げ場が無いんですよね」
「僻地に移動したとしても、助けられる人が限られるだろうし」
御影 「はい」「所謂、『負の循環』が起こります」
「この世界では 有りと有らゆる物が循環しています」
「水・空気・エネルギー、そして お金や才能も」
妹 「ちょっと待って、じゃあ、私達の『楽しみ』なんかにも影響が出るって事?」
御影 「はい」
「テレビや音楽、絵画や小説、普段我々が何気なく目にする物でさえ、」
「物足りなさを感じたり、次第に悪意を含むようになります」
「当然、そういった物に触れれば、無効化は更に遅れるでしょう」
………家の前………
御影 「そうでした」
「言い忘れましたが、」
「あの時 貴女が思ったのは、『朱雪はスタイルが良い』でしたね」
女の人「えっ?」
「ふふっ、私の『隠』は まだまだですね」
〈姉は車から降りると、先に降りた妹と並び〉
姉妹 「御影さん、朱雪さん、さようなら」
御影 「さようなら」
朱雪 「またお会いしましょうね」
〈姉妹は黒い車を見送ると、妹が先に玄関に入る〉
妹 「お姉ちゃんどうしよう。あんな話聞いたら、私、じっとして居られないよぉ」
「何か、私にも手伝える事って無いのかなあ」
女の人「まあまあ。今、私達に必要なのは、そんな事じゃないでしょ?」
………午後1時:昼食後:玄関で靴を履く妹………
妹 「お姉ちゃん、ごめんね。私、今日も出掛けるから」
女の人「その人に教えてもらうの?」
妹 「うん。神楽さんや御影さんの邪魔は出来ないし、ダメ元で頼んでみたの」
「きっと凄い能力者だと思う。私の勘だけどね」
女の人「そう。いってらっしゃい」
〈妹が玄関を出た後〉
「私も、もっと力を付けないとね・・」
………午後2時前………
とある喫茶店。奥の席で会話する鈴音と妹。
妹の前にはアイスコーヒー、鈴音の前にはカフェオレが置かれている。
妹 「鈴音さん。本当に私に教えてくれるんですか?」
鈴音 「ええ」「私には、私の考えがありますから」
「あなたは、どんな『力』をお望みですか?」
妹 「私、神代を倒せる力が欲しいんです。どうしても」
「私、その為だったら何だって出来ます」
鈴音 「あなた、天秤に載せる物を間違えていますね」
「そんな風に物事を考えていると、いずれ全てを失ってしまいますよっ」
妹 「でも、私・・」
鈴音 「あなたの考えている『正義』は、あなたの中にしか存在していません」
「まるで、小説の主人公気取りですねっ」
「さっき あなたは、自分は神楽のメンバーだと言いましたけど、」
「全然 神楽らしくないですよね」
妹 「・・実は私、霹靂神に誘われた事があるんです」
鈴音 「もしかして あなたは、この世界は『必然』しか存在しないと思ってません?」
妹 「えっ、どうして分かるんですか?」
鈴音 「ふふふ、そうでしょうね」「断っておきますが、私はテレパスじゃないですよ」
妹 「・・・」
鈴音 【・・この子、自分が心の中に大きな爆弾を抱えている事に気付いてないんだ・・】
「場所を変えましょうか」
「あなたが『力』を手に入れられるかどうかは保証しませんけど」
妹 「・・はい、鈴音さん。宜しくお願いします」
………9月23日(秋分の日)………
朝。洗面所から出る姉と、3メートル離れた所にいるパジャマ姿の妹。
妹 「お姉ちゃん、おはよう」
「『無極』を使うのはやめて、」
「今日からは『フィールド』を使っても良い事にしない?」
女の人「私は構わないけど、どうしたの?」
妹 「だって、」
「私が『移流』を使えるようになってから、お姉ちゃん何時も遊ぼうとするし、」
「昨日なんて、『無極』が50個にもなって、すっかりカオス状態じゃないっ」
「それに、私の『フィールド』がお姉ちゃんに通用するのか試してみたい」
女の人「『場』はSクラス以上の技だよね。その人、SSかも知れないよ」
妹 「うん。その人には感謝してる」
「教え方が神楽さんとも御影さんとも違ってて、」
「まるで私が何を必要としているのかが分かるみたいなんだぁ」
女の人「そう。じゃあ、早速見せてもらおうかな」
〈妹が人差し指を立てて構えると、廊下全体が少し光を帯びる〉
「さてと、なら私も・・」
姉も人差し指を立てて構える。
次の瞬間、姉の背後25センチの所に光玉(ピンポン玉)が3個現れ、姉に全弾ヒット。
妹 「決まった!?」
しかし、姉は何事も無かったかのように、
ゆっくりと妹の所まで歩いて人差し指を妹の額に当てた。(妹は瞬きしか出来ない)
女の人「まだまだ」
妹 「うー。こんなに差があるなんて・・」




