遠足⑨
ゼエルがスズを追い、土魔法の中に入ると、立派な洞窟が出来上がっていた。
(これが、魔界の土魔法か……。なかなかよくできている)
ゼエルの目の前には、分かれ道が九つ。
どのルートで向かったのかわからないように細工されているし、おそらくどのルートを選択しても、いくつも分かれ道が作られているのだろう。スズを探すために何人も投入したって、見つからないし、時間がかなりかかってしまうだろう。
それじゃあ、スズが見つかる前に、スズが危険なめにあってしまうかもしれない。
(スズを助けるよう俺は命令されていないが、9大魔王ルキフグの力を借りなければいけないことを考えれば、9大魔王ルキフグの娘であるスズを助けなければいけないのだろう……。
さっさとこんな面倒事を終わらせて、早く帰りたい……)
ゼエルはそう思いながら、どうやってスズを探すか考え、試しに軽く壁を叩いてみるが頑丈にできている。少しの土のかけらも落ちてこない。
土魔法を使ったものが、洞窟を作り続けるのに魔法を使い続けているらしい。
(スズを追いかけて来たものを罠にかけるつもりで、奥に入ってくるのを待っているのだろうか……)
敵はきっと水魔法を乗り越え、囲んでいた敵たちを撃破した者がいるとすれば、敵にとって厄介者だと思うはず。そうなると、できるだけ早く敵は殺しておきたいだろう。
(それに、この洞窟を維持するのに魔法を使い続けているならば、俺が洞窟に入っているのを気づいているだろう。
俺を試そうとしているとすれば、おもしろう。
逆にこっちが利用してやる)
ゼエルは魔界に来てからずっと試してみたいと思っているものがあった。
それは、ゼエル自身が持っている固有の力。敵の魔法を自分の魔法として使う能力。
今まで、何度か魔界に来てその能力を使ったことがあったが、この土魔法ほど強力で、大規模な魔法に対して試してみたことはない。
(それに、この土魔法には闇魔法も練りこまれているようだしな……。
スズを探すのに、いちいち探し回る時間もないからいい機会だろう。
俺をこんなにめんどうごとに巻き込んだのを、少しは後悔してもらわないと気が済まないしな……)
ゼエルはそう考え、自分自身の近くで魔力が一番流れている場所を探し、自分の魔力をそそぎ始めた。




