遠足⑩
スズは正体不明の者たちにとらえられ、土の中の洞窟にいた。
当初、せわしくどこかへ向かっていたにも関わらず、途中で止まり、魔法を使う術者が三人集まりなにか集中しているようだった。
(いったい、このあとどうなってしまうのだろうか?)
急な正体不明の敵から襲われ、状況をうまく呑み込めず、状況分析にずっと努めてきたスズ。
馬車に乗って大きく揺れていると思っていたら、いきなり水魔法をかけられ、アリカとイリカによって助けてもらったら、新たなトラップによって土の中に引きづり込まれて、正体不明の敵に捕らえられて担がれてどこかに向かわされてしまった。
という、一部始終を全部見ていた。
スズの保有する魔力量は、大国の将軍クラス。いや、それ以上の魔力量がる。流石は、9大魔王ルキフグの娘だけある、といったほどに。
だから、魔法を使うことができないものの、無駄に多い豊富な魔力によって自然と体を守ることができたのだった。だが、そのことは、悲しいことなのか、スズ自身が意図的にやったものでもなく、ましてや豊富な魔力量によって無意識に守られたというのも理解していなかった。
よって、スズ自身は魔力をまったくもっていないものだと思い込んでおり、今回意識がなくならなかったのは、たまたま運が良かったものだと思っていた。
そんな、スズの事情あるものの、スズにとって現在の状況は生きるか死ぬか。
どうすれば、正体不明の敵から逃げられるか、状況を分析して、行動する必要がある。
と、そのとき、魔法を使っていた三人の術者に異変が起きる。
「お、おい、こいつはいったい何者なんだ?」
「わからんが、やることには変わらないだろう?」
「そうだ。捕まえてしまえ、この土魔法で作った洞窟内では俺たちの思うままだからな……」
「なあ、訓練のときには使いづらい、精神系の攻撃で、悪夢を見せ、気絶させてみないか?」
「お前は、そういうの好きだなぁ~、まあ、俺も嫌いじゃないけど……」
「わかったよ。俺も、それで賛成だ。けど、どんな悪夢見せるつもりなんだ?」
「そうだなぁ~、身なりからして、どうやら少年のようだから……、好きな女の一人や二人いるだろう。そいつに殺させるっていうのはどうだ?」
「まあ、そんなとこだろう。他の任務にあたっている残りの奴らがくるまで、時間があるからゆっくりと、こいつで遊ぼうぜ」
「ああ、そうだな」
にやり、と遊び道具を見つけたかのうような表情をする、三人の術者。
会話にでてきた少年に送り込むイメージを作り、魔法を発動させる準備を始める。
(けれども、少年っていったい誰なんだろう?)
疑問に思おうスズ。
馬車に乗っていたもので、少年といえば、ゼエルになるが、ゼエルは魔法を使うことができなかったはず。
だから、あの馬車が水魔法によって壊されたときに、自分の身とアリカとイリカが気になってゼエルのことを見ていなかったが、相当な怪我をおったはずだ。
(いや……、もしかしたら、)
スズはゼエルに最初にあったとき、ただ者ではない印象をを受けたことを思い出し、ゼエルであることを予感した。
一方、三人の術者は魔法に集中している全員の表情から、どこか苦悩し、苦しみだす表情に変わり――、急に倒れる……。
そして、スズを捕らえていた正体不明の敵、他の五人が、
「なぜ、術者が倒れたんだ?」
「まだ息はあるようだが、恐怖の表情で倒れ、当分意識を戻しそうもない……」
「――おっ、おい……、そんなことよりも、術者がいなくなったら、この洞窟は、どうなってしまうんだ?」
「確か……」
「なっ、なに、青ざめて震えだしてるんだ……?」
「い、いや、普通に考えて、術者が魔力供給と魔法を使わなくなったら、崩壊するんじゃ……」
「――って、待て、そしたら、早く逃げ出さなきゃ、生き埋めになってしまうぞ……」
「そ、そうだな……、けど、どうやって……」
「どうやってって、逃げ道に向かって行くに決まっているだろっ」
「だ、か、ら、その逃げ道がどこにあるんだよ? 道は、術者が思い通りに作っていくんだろ? 逃げ道はできてないから、ここで土に埋もれて、死を待つのみなんだよ……」
「お、俺はここで死ぬなんて絶対に嫌だ!」
スズを捕らえた正体不明の者たちは、各々不安げな声をあげだし、スズの拘束を解かずに、各々好き勝手に逃げ出したのだった。




