学食の日の夜⑫
スズとアリカ、イリカ、リスシタが話をしていた部屋と同じ建物の中にある一室。
あまり華美な家具や食器もなく、部屋の主があまり目立たないよう落ち着いた暮らしを送ろうとしているのが伺える。
いや、おそらく、落ち着いた印象を持つ家具や食器を使用しているのは部屋の主の性格によるものなのかもしれない……。
この部屋の主は、天界から魔界へ留学に来たユミリィだった。
ユミリィは自分自身で作った料理を食べながら、考え事をしていた。
ちなみに、ユミリィが自分で料理を作ったのは、魔界の料理が口にあわなかったから、というほかに、天界で魔界の料理をあまり口にしないようにと言われてきたからだ。
それは、魔界の料理を食べて、体に害がおよび、死に至らしめるといった理由からではない。
魔界の料理を食べ続けることによって徐々に魔界の力が蓄積されていき、魔界の住人、堕天してしまうかのうせいがあるからだ。
「でも、本当にゼエルとルシゼエルに似ているわ」
ユミリィは小さくつぶやく。
今日の学食で話をしているときにますます確信を深めていった。
話し方、そぶりなどなど、本当に似ている。他人の空似とは思えないほどに……。
だが、実際には、ルシゼエルは死んでいる。そもそも、ルシゼエルが生きていたとしてもゼエルとは見た目が全然違う。第一、ゼエルは天使ではなくて悪魔だし、堕天することなんて絶対にないだろう。
だから、ゼエルはルシゼエルとは別人と考えるのが普通なのだ。
(それにもかかわらず、どうしてこんな気持ちになるのだろう?)
ユミリィは確かにルシゼエルに抱いていた恋心をゼエルに感じ始めていた。




